魚の老舗仲卸のおにぎりが渋谷に。麻布十番には立ち飲みもできる惣菜店が

ボリュームたっぷり! おむすび専門店

6月13日、渋谷スクランブルスクエア地下2階に「五代目 堺周」が出店しました。明治22年創業、日本橋魚河岸時代から続く老舗仲卸・堺周商店が手掛けるおむすび専門店で、百余年の目利きで選んだ本物の魚のおいしさを身近に届けるというコンセプトです。一番人気の天然紅鮭塩焼きと、珍しい無添加明太子のおむすびをオーダー。豊洲で働く人向けかと思うほどボリュームたっぷりで具もぎっしり、1個で十分お腹が満たされます。「本鮪 脳天ステーキ わさび醤油漬け」、無着色の「炙りたらこ 発酵バター」など、いかにも仲卸らしい工夫を施したメニューも並び、うれしい限り。おにぎりブームの中、渋谷のど真ん中に、また個性的なおにぎり店が生まれました。

天然紅鮭塩焼き(左)、素の明太子(右)

定食スタイルのおにぎり店

おにぎりと言えば、5月19日に麻布十番にオープンした「味蔵や 麻布十番総本店」も見逃せません。長年「美倉屋靴店」として親しまれてきたこの場所の歴史ある名前を引き継ぎ、読み方はそのままに飲食店として生まれ変わりました。昼は11種のおにぎりから好みの1つを選び、メイン(アジフライや鮭など)と冷菜(ポテサラやきんぴらなど)も各1品、さらに豚汁とおしんこまで付く定食スタイルです。もちろんテイクアウトも可。17時からはカウンターと立ちテーブルでお惣菜をつまみに一杯も楽しめるという、懐の深い一軒です。いかにも麻布十番の昔ながらの商店街らしく、早くも近隣の人たちから親しまれています。

組み合わせランチ(大葉昆布のおにぎり、鮭、オクラの味噌和え)

渋谷の塩味ホットドッグと、麻布十番のやわらか角煮そば

初体験! 塩味のホットドッグ

5月7日、渋谷の旧「こどもの城」の裏手に出現したのが「SAHARAN SALT CLUB(サハラン ソルト クラブ)」。渋谷・代々木エリアで人気の「CAMELBACK」の新業態で、ホットドッグとベーグルを提供します。テナントビル敷地内でコンテナを活用したトレーラー式の施設で、テイクアウトはもちろん、店前の小さな広場のベンチでもいただけるスタイル。気持ちよく食べ終わってごみをお店に持っていったら「素敵な一日を!」と声をかけられ、思わず笑顔になりました。看板の「サハランソルトドッグ」は、那須塩原の「SHŌPAIN ARTISAN BAKEHOUSE」特製のパンに、噛み心地抜群の太いソーセージ、自家製オニオンコンフィ、自家製粒マスタード、バジルの組み合わせ。塩味で食べるホットドッグは初めてでしたが、これが旨い。コーヒーはもちろん、ビールやクラフトジンもあって、ふらっと立ち寄りたくなる一軒です。

ゆっきょし
サハランソルトドッグ   出典:ゆっきょしさん

角煮のサイズとやわらかさにびっくり

6月5日、麻布十番にオープンした「肉そば じゅ〜しぃ。」のロゴは、食べログマガジンでもおなじみ、数々の人気店を手掛けるデザイナー・秋山具義さんによるデザインです。店内は大きな8人掛けテーブルとカウンターが2席。おすすめはその名も「じゅ〜しぃ。そば」でしょう。皿の上に大きな角煮がドンと横たわっていて、そのサイズとやわらかさにまず驚かされます。つゆは甘め仕立てで、味変用にラー油&辛くないラー油、天かす、えごま油が揃い、温泉卵も付くので最後まで飽きることなく楽しめます。150gの小盛をオーダーしてしまいましたが、200gの並盛にすればよかった。

じゅ〜しぃ。そば 小盛

大分の老舗居酒屋が東京進出。人気居酒屋系列の焼鳥店も誕生

大分の味が東京進出

6月1日、新橋に1955年創業、大分・別府の老舗居酒屋「チョロ松」の東京進出店「別府 チョロ松 銀座店」がオープンしました。なんといっても必食は、このお店オリジナルの「かも吸い」。骨付きの鴨肉、内臓、ごぼう、ニラがいい塩梅に旨みを出した塩味のスープがおいしく、ちゃんぽん麺のそば入りは特におすすめ。酒の締めにこれ以上ない一杯です。この日は関サバ・関アジこそなかったものの、おすすめされた豊後アジ・豊後サバの刺身は鮮度がよく、脂がのって十分に堪能できました。骨付き若鶏のから揚げも美味。老舗だけに名物が揃っているのがうれしいところです。カウンター、テーブル、個室で34席。訪れた日は大分出身者が懐かしそうに集っていましたが、これから銀座・新橋界隈のサラリーマンでにぎわう一軒になりそうです。

かも吸い(そば入り)
かも吸い(そば入り)   写真:お店から

人気カジュアル焼鳥の系列店が誕生

5月19日、青山一丁目に「焼鳥たぬき」が加わりました。「香川 一福」「Fry家」「青山一丁目たぬき」などを運営する株式会社Styleの新店です。外苑東通り沿いの路面店で「たぬき」とそっくりな外観がふらりと入りやすい雰囲気を作っています。焼鳥には愛知県の銘柄鶏「錦爽(きんそう)どりを使用。脂が少なくジューシーな味わいが特徴で、こちらを朝絞めして一本一本手作業で串打ちしているそうです。名物のだきみ(むね肉を鶏皮で巻いたもの)、ねぎま、自家製つくねをはじめ、焼鳥をカジュアルに楽しめます。生本まぐろの刺身など「青山一丁目たぬき」の人気メニューも。訪れた日は予約で満席ながら「空いてますか?」とふらりと現れる若い男女が多数でした。居酒屋が多くないエリアですので活用されそうです。

だきみとねぎま

ガストロノミーツーリズムの新定番へ。余市に注目のオーベルジュ

そして実は先日、北海道・余市に行ってきました。私がかつて大変感動した「余市Sagra」の場所に6月24日、オープンしたオーベルジュ「Lift Up 余市」が気になったからです(*「Sagra」は北広島に移転)。シェフは「レフェルヴェソンス」出身で、34歳の白鳥翔大さん。「ワインがあって、海があって、自然があって、畑がある」余市の地を選び、自然と会話しながら料理を作りたいという思いで根を下ろした一軒です。ご存じの通り、この街には世界的に有名なドメーヌ タカヒコの「ナナツモリ」を筆頭に、“出汁の味”とも形容される余市ワインがあります。その旨みある味わいのワインに寄り添うように料理が組み立てられ、まさにテロワール&マリアージュを体感できました。余市の平飼い農家の卵と親鶏の出汁で作る茶碗蒸しに摘みたての海藻を合わせ、ワインと口中で響き合わせる一皿、白鳥さんが「日本一」と絶賛するコロポックル村のホワイトアスパラガスをパスタ仕立てにした料理など、こちらならではの味ばかり。これからの季節、ガズトロノミーツーリズムにぴったりです。

スライスした白アスパラ

※価格はすべて税込

教えてくれた人

大木淳夫
『東京最高のレストラン』編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本『東京最高のレストラン』編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に『キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由』(堀江貴文)、『新時代の江戸前鮨がわかる本』(早川光)、『にっぽん氷の図鑑』(原田泉)、『東京とんかつ会議』(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、『一食入魂』(小山薫堂)、『いまどき真っ当な料理店』(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事、「料理レシピ本大賞」特別審査員も務める。『東京最高のレストラン2026』が2025年12月に発売。同年10月に初の著書『50歳からの美食入門』(中央公論新社・中公新書ラクレ)を出版。ポッドキャスト「今行くべき店、死ぬまでに行くべき店」も放送中。

文、写真:大木淳夫