焼鳥と日本酒の革新的なお店が恵比寿と神泉に

薪と炭を自在に操る焼鳥店

6月1日、恵比寿に焼鳥「ひき田」が扉を開けました。日本料理、そば、焼鳥店で研鑽を積んだ疋田豊樹さんの独立店で、オープン前から業界内がざわついていた注目店です。最大の特徴は、薪と炭という異なる熱源を自在に操ること。カウンター越しに見る疋田さんの動きは緻密に計算され、極上の一人芝居を見ているようです。コースは20,000円(サービス料別)で約20種。疋田さんが大好きという比内地鶏のもも肉、薪火との相性が際立つレバー、薪と炭を併用して、焼き上げた後に骨を抜く手羽など充実。出汁醤油で味付けした茨城産しいたけ、かんずりとコリアンダーを纏ったパプリカといった、薪焼きの野菜も客席から歓声が上がるほど。〆は羽釜炊きのあきたこまちを、ササミのたたきの手巻きと薪火で炙るニラのそぼろご飯に。そして自ら石臼で製粉・手打ちした鶏そばまで全力投球です。焼鳥屋と言うより、炎と煙の世界を堪能する、東京ならではの料理店と言えましょう。

長州どりレバー

日本酒の可能性を広げてくれるレストラン

6月4日、神泉には「無境 Sake & Beyond」が誕生です。「NARISAWA」元ヘッドソムリエの木村好伸さんが店主兼ソムリエを務めます。「鮨m」での革新的なマリアージュが大きな話題を呼んだ木村さんだけに、訪れる前から期待値の高かった一軒です。同じく「NARISAWA」でマネージャーを務めていた渡邉さんもサービスに。シェフは松澤俊介さん。「HAJIME」「ピエール・ガニェール東京」などを経て「ティエリー マルクスサロン」でシェフを務めた実力派で、確かな技術の上に豊かな発想がのった料理は飽きさせません。テーマは「日本酒の表現を広げる場所」。さまざまな掛け合わせで日本酒の新たな可能性を見せてくれます。おすすめはコースでのペアリング。敢えてマイナス9度で管理した新政No.6や、驚くような組み合わせのカクテルなど、その仕掛けは一筋縄ではいかない上に美味。ぜひ体験して楽しんでみてください。

渚 鰺と焼き茄子

浅草に注目のイタリアン、芝公園にも普段使いしたくなるイタリアンが

日常使いしたくなるイタリアン

5月13日、浅草のかっぱ橋本通りに「イル・ノーチェ」がオープンしました。父親がフレンチの料理人という荒木康朗さんが料理を、実家が日本料理店というくるみさんがサービスを担当する夫婦の独立店です。隣の「太助寿し」の仕込み場を改装した、カウンター6席とテーブル2卓の空間。ホテルから街場まできちんと修業してきた2人が作っただけあって、内装から料理、お酒まで、おいしい時間を楽しむ雰囲気で溢れています。アラカルト主体で、まず頼むべきはその場で削ってくれるチーズ「ベラロディ・ラスパドゥーラ」。続くスープやパスタにかけたり、自家製フォカッチャにのせたりと重宝します。くるみさんの修業先「インカント」直伝のレモンを練り込んだショートパスタ「リッチョリ・アル・リモーネ」は、魚醤とカラスミのパンチが利いたワイン泥棒の一皿。イタリア家庭料理のスープ「ポルペッティインブロード」は、しみじみとした滋味でお腹も心もほっこり。食べるのが、飲むのが好きな人が日常使いしたくなるイタリアンとして、うれしくなる一軒が誕生です。

リッチョリ・アル・リモーネ

カジュアル価格の隠れ家イタリアン

5月15日、芝公園の雑居ビル5階には「森の中の小さなイタリアン」を掲げる「Ape(アーペ)」が誕生しました。赤羽橋「バース ダイニング バイ プラン」でシェフを務めた竹内誉弥さんが同店を閉め、独立した一軒です。芝公園駅至近ながら、急階段を2階まで上らないとエレベーターに乗れない雑居ビルの5階という立地が、独特の隠れ家感を醸し出しています。元カフェの細長い空間に、キッチンカウンター6席、カウンター5席、ボックステーブル2卓とこぢんまりした造りです。伊豆出身のシェフは魚料理が得意なようで、メジマグロのステーキ、タコとイカのスパゲティ カラスミがけなどをおいしくいただきました。前菜類が豊富でフリット系も充実しており、気になって頼んだウニトマト味のポテトフライが想像以上にはまる味。お酒が進みました。全体にカジュアルな価格帯なので、こちらも普段使いに重宝しそうなお店です。

タコとイカのスパゲティ カラスミがけ

素材の可能性を追う日本料理と、隠れ家の寿司・天ぷら

さらに進化しそうな一軒

5月20日、人形町に日本料理「汽素火(キスイ)」がオープンしました。それぞれ人気の日本料理店で研鑽を積んできた部谷直希さんと柴田丈さんの独立店で、カウンター7席の静謐(せいひつ)な空間です。「汽水域」から名付けた店名には、本来交わらない海水と淡水が重なり合う場所のように、食材や時間、人が重なり合う場所でありたいという思いが込められています。その姿勢は料理に明確に表れていて、稚鮎の天ぷらではあえて苦みを引き出し、アオリイカの刺身にはイカの身と塩を合わせた「イカ塩」やイカ出汁と醤油の「イカ醤油」を添えて提供するなど、素材のポテンシャルを極限まで追求する姿勢が気持ちいい。単純にわかりやすいおいしさを目指すのではなく、素材の新しい一面を発見させてくれるところに、このお店の個性があります。特別な衣の天ぷら、軍鶏だしの汁で食べる十割そばなど特色も十分で、まだまだ進化しそうな一軒です。

稚鮎の天ぷら

会食や接待でも使いたい日本料理店

4月20日、麻布十番の高級マンション1階に出現したのは「元麻布 ささ野」です。駅からも離れた佇まいは隠れ家そのものですが、ランチはコースでも9,000円台、丼なら3,000円台、夜のコースも20,000円以下と、この立地と空間を考えると良心的な価格設定です。寿司カウンターと天ぷらカウンターがあり、どちらかを選択するシステム。寿司割烹を担当するのは和食出身で銀座「鮨 むらやま」で5年修業した渡邉ひかるさん。今回は寿司コースをいただきましたが、和食の素養が随所に光り、生のごまから手作りするごま豆腐にそら豆のペーストなど、印象的な料理が多くありました。個室(4名・6名・大型)も備え、ビジネス利用にも向く構成です。寿司と天ぷらを一緒に楽しめる形も模索中とのことで、そうなると会食や接待での活用がさらに広がりそうです。

白味噌仕立てのトマトの味噌汁