【噂の新店】ORIGNe

昨年「食べログ フレンチ WEST 百名店」に輝いた「ORIGIN」が東京竹橋へ移転しました。“あくまでも素材ありき”と、旬の食材に触れながらフランス料理の伝統技術で仕上げるシェフの哲学と美学が織りなす高感度な皿は、なりふり構わず「うまい!」と言わせるものばかり。ビジネス街の空気感を一掃する“シェフの家”で、心躍る食体験が待っています。

念願の東京進出が実現! 店名は「ORIGIN」から「ORIGINe」に!

真っ白い壁は“はじまり”を意味します

竹橋駅から徒歩3分、神保町駅から徒歩5分の地にオープンした「ORIGINe」。コンクリートジャングルの中でひときわ目を引く真っ白い壁が凛とした空気を作り出しています。

ゆったりとした店内

中へ入ると「我が家へようこそ!」と言われたような温かな空気感に包まれます。目に飛び込んでくる広々とした厨房はピカピカに磨かれ気持ちがいい! 長さ6m、奥行き80cmの大きなアサメラ材の一枚板カウンターをはじめ、椅子も床も木材を使ったダイニングはアースカラーで統一。直接目に入らないように配置された照明の色も穏やかで気分が和みます。

吉田 徹オーナーシェフ

19歳で料理人になると決めたオーナーシェフの吉田 徹さんは国内数軒で働いたのち2011年に渡仏。希望する店で働くために数々のコンクールで賞を獲得、ニース「Les Deux Canailles」、パリ「Jean-François Piège」「George V」でスーシェフとして勤めました。この頃から40歳までに独立すると心に決め、2017年に帰国し、大阪天満橋に「ORIGIN」をオープン。有名グルメ本で一つ星を獲得、ポルトガルのフードフェスティバル「Chefs On Fire」に日本人初参加するなど国内外で活躍。今年2月に東京で店を開くという夢を叶えました。

食材をとことんリスペクト! 旬のど真ん中の料理に感嘆の連続!

「帆立」

コンクールで巨匠ジョエル・ロブション氏に「これは作り続けなさい」と絶賛された「阿寒湖のザリガニのスフレ」がスペシャリテ。こちらではランチ、ディナー共に10,000円と20,000円の2種類のおまかせコースを用意しています。今回はアミューズからデザートまで10〜12品で構成された20,000円のコースからいくつかご紹介します。

こちらは前菜の一つ、帆立を使った2種類の料理です。

「帆立のソテー」

一方は帆立の貝柱をソテーし、スープ仕立てにしたクレソンのソースに浮かべ、ライムのピューレと果肉、フレッシュのクレソンを添えた皿です。香り高いクレソンが心地よい苦みを、ライムが酸味を帆立にまとわせています。

「生春巻き」

もう一方の皿はフランス料理では使われることがほとんどない帆立のひもと肝をクレソンと一緒に生春巻きに。下に敷いたヨーグルトソースをつけながら一口でパクリ! 噛み始めると食材が次から次へと顔を出し、口中を喜ばせます。2つの皿で帆立1つを丸ごと楽しむ、こういう粋な計らいにシェフのセンスを覗かせます。

「明石浦産黒鯛」

明石浦の名産である海苔。やわらかく最もおいしいと言われる一番海苔を食べて育った格別の味わいの黒鯛をポシェしてしっとりとやわらかく仕上げています。下に敷いたのはクロロフィルのソースとニース産オリーブオイル。明石浦の海苔で和えたうどを添え、泡状にしたココナツソースをかけました。

ココナツソースは泡状にして軽やかな甘みに!

海苔の香りが鼻を抜けたかと思うと口中にうまみが広がり、全身を駆け巡ります。黒鯛の身はプリップリで皮と身の間のコラーゲンには海苔のうまみがいっぱい! こんな黒鯛に出会えるとは! 春の時期にしか味わえない、旬の味覚の一皿です。

食欲をそそる香り!

厨房から甲殻類を焼いているいい香りがしてきました。「オマールですね」の声にメインはオマール海老だと思っていると……。

「ホロホロ鳥」

まさかの肉とオマールの競演! 「フランス人は白い肉と甲殻類を組み合わせるのが好きなんです」と吉田さん。ホロホロ鳥の胸肉は身と皮の間にきのこと黒オリーブを詰めてローストしました。付け合わせにはオマール海老、ルッコラ、タルティーボ、金柑、セミドライトマトとなんとも贅沢。

いい焼き色!

「パサパサしていると思われがちな胸肉は形が決まるまで低温でゆっくり火入れしてからフライパンで転がして焼いていくと、しっとりとして柔らかく仕上がります」と吉田さん。

焼いた殻の香ばしいこと!

その高い技術はオマールでもうかがえます。殻ごと焼いたオマールの身の中心はうっすらと透明さが残る究極のレアな焼きあがり。甘みが際立ち、食感は表面がプリッとして内側はトゥルルン。

しっとりとしてやわらかい!

ホロホロ鳥のローストに肉のジュを煮詰めたソースを絡める、まさに王道のフランス料理ですが、きのことオリーブを入れることで新たな感性をまとわせ、クラシックとモダンが共存する一皿に。

「カカオ 菊芋 トリュフ」

なんと煌びやかなデザートなのでしょうか。カカオと菊芋を練り込んだボネ、トリュフのアイスクリーム、菊芋のチップス、削りたてのトリュフで構成した360度、どこから見ても美しい立体的なフォルムにうっとり。一見、甘そうですが菊芋の土の香りと力強さが際立ち、甘みと塩味のバランスが絶妙です。

「ハーブティー」

食後に供される本日のハーブティーは2種類のミントを使ったもの(写真左)と、スイートマジョラムにレモンティーツリーをブレンドしたもの(写真右)を用意。こういう心尽くしにも癒やされます。

「すごい」より「うまい」と言われる料理を作りたい!

食の話が止まらない吉田さん

「“食”が大好きなので自分が食べたいと思うものは他の人も食べたいはず!と思ってメニューを考えています。冬はジビエやソースも重めのものが食べたいし、夏は軽めのソースで葉野菜がたくさんのっているものが食べたくなるので自然とそういう料理になりますね。お客様に提供する皿も仕上げた時においしそうだな、食べたいなと思いながら出しています」と話すように、提供する皿には季節感があふれています。

eをつけてフランス語にしたのは進化の証

起源、発生、由来、出発点、原点といった、“はじまり”の意味を持つ店名。吉田さんの皿のはじまりは食材と対峙すること。それからおいしくする方法を模索し、完成させていくのだと話します。正統派フランス料理の技術とエスプリを吉田さんの感性で再構築した、真骨頂とも言える料理の数々。日常を過ごす中で「あ、食べたい!」と思いたつ“旬の料理”がここにあります。

※価格は税込、サービス料別。

文・高橋綾子 写真・溝口智彦