この夏は“ビリヤニ・ビッグウェーブ”に乗れ!
今じわじわと注目を集めているインド料理といえば、お米を使ったごちそう料理の「ビリヤニ」。「ビリヤニはインド料理マニアにはよく知られた食べ物でしたが、マニア層ではない人たちにもその魅力が浸透しつつあり、メニューに組み込むお店が急増中! その人気がさらに高まりつつあります」と語るのは、これまで様々なカレー、インド料理を食べてきたカレー研究家のスパイシー丸山さん。今回はビリヤニの魅力を知って、そのおいしさをとことん楽しみましょう。
そもそもビリヤニってなに?
ビリヤニは高級米のバスマティライス(お米)をカレーと一緒に炊き上げたり、スパイスでマリネした肉と一緒に炊き上げて作る、スパイス炊き込みご飯のこと。“インド式パエリア”という表現が分かりやすいかもしれません。カレーとお米を炒めてチャーハンのように仕上げる簡易的なビリヤニもありますが、今東京で人気なのは、手間のかかる炊き込みタイプ。ビリヤニのルーツはイスラム料理ですが、そのおいしさからインド各地に広がり、今では宗教を問わずごちそう料理としてインド全域で食べられています。もちろんイスラム圏であるパキスタンやバングラデシュでも人気の料理です。
なぜ今人気なのか?
ビリヤニが食べられるお店は以前からありましたが、日本米を使った簡易ビリヤニを提供するお店も多かったので流行るところまでいかなかったのではないでしょうか。炊き込み式の本場のビリヤニを提供するお店が増えたことで、そのおいしさがようやく伝わりはじめたのではないかと思います。炊き込み式のビリヤニはお米の色ムラをあえて付けるのが特徴の一つなのですが、グラデーションによるビジュアルの美しさもSNS時代とマッチしたのかもしれませんね。
また、多くの南インド料理店がビリヤニをメニューに加えていることも要因の一つではないかと思います。南インドがルーツの料理ではありませんが、南インドでもごちそう料理として人気のビリヤニ。インド人シェフが作る本気のビリヤニが食べられるお店が増えたことにより、その評判が口コミで広がったのではないかと。実際、多くの南インド料理店にビリヤニがあることから、ビリヤニを南インドルーツの料理だと勘違いしている人も多いんです。
スパイシー丸山流ビリヤニの楽しみ方
ビリヤニはそのまま食べてもおいしいのですが、付け合わせで提供されるライタと呼ばれるヨーグルトサラダをかけていただくのもインド流。そのまま食べたり、ライタをかけてさっぱりいただいたり、交互に食べてみたり、その日の気分に合わせて楽しんでみましょう。
ところでビリヤニにカレーを合わせてもよいのか?との疑問も出てきますが、答えはOK。地域によってはつけ合わせでカレーが付いてくるエリアもあります。個人的にはチキンビリヤニならチキンカレー、マトンビリヤニだとマトンカレーなど、同系統のカレーをかけて楽しむのが好きです。ライタで食べてもおいしいのですが、カレーをかけるとよりリッチなおいしさが楽しめるのでクセになりますよ。
スパイシー丸山さん推薦!まず食べるべきビリヤニ5選
バンゲラズ キッチン(銀座)の「カジキマグロのビリヤニ」
カジキマグロのビリヤニ 1,820円(税別)
南西インド・カルナータカ州の海岸エリア“マンガロール”の料理専門店というマニアックな南インド料理店、バンゲラズ キッチン。ここで食べられるのが、これまたレアな竹筒で提供される「フィッシュビリヤニ」。ビリヤニが食べられるお店は東京には比較的多くありますが、魚のビリヤニをレギュラーメニューにしているのは、おそらくここ以外ないのではと思います。魚ベースのビリヤニなのでライトな味わいかと思いきや、待ち構えているのは肉ビリヤニに負けない、いやそれ以上にエッジの立ったおいしさ! 心地よい香りに包まれたバスマティライスをフワフワなカジキマグロと一緒にいただくと、魚ビリヤニの魅力にノックアウトされますよ!
ヌンゲルミーンバッジ 350円(税別)
ビリヤニにはライタも付いてきますが、小魚入りのココナッツペースト“ヌンゲルミーンバッジ”を合わせるのもオススメ。ココナッツにより南国料理テイストがアップして、さらにオンリーワンな味わいが広がります。竹筒のビジュアルにより目で楽しめ、バスマティライスとスパイスのアロマにより鼻で楽しめ、極上のおいしさにより口で楽しめます。東京でワンランク上のビリヤニ体験をされたい人はバンゲラズ キッチンのフィッシュビリヤニは必食と言えるでしょう!
ヤジニ(大山)の「マトンビリヤニ」
マトンビリヤニセット 1,500円(税込)
今年オープンの南インド料理店の中でも、ノンベジ料理(肉や魚料理)のおいしさで注目を集めているのが、大山にあるヤジニ。そんなヤジニで食べていただきたいのが、ノンベジビリヤニの代表格とも言えるマトンビリヤニ。一人で来店したらライタだけでなくカレーとカチュンバルサラダも付いてくるマトンビリヤニセットがオススメです。名シェフ、マハリンガム氏が手がけるマトンビリヤニは上品さとワイルドさが共存する、お店を代表する逸品。シナモンを軸とした香りにマトンの風味が融合し、強めに利かせた唐辛子がこれらをギュッと引き締める! この力強いおいしさこそヤジニの魅力なんです。
マトンスープ 550円(税込)
さらに、ヤジニならではのビリヤニ体験をされたい方は、ここでしか食べられないマトンスープと一緒に味わってみましょう。辛口でほどよい酸味もあるラッサム的なヤジニのマトンスープ。そのままでもエッジの立ったビリヤニですが、キレッキレのスープと合わせると攻めのおいしさがさらに加わり、他店にはない刺激的なビリヤニ体験ができます! スパイスを愛する多くの人に味わっていただきたいコンビネーションです。
ハビビ ハラル レストラン(西大島)の「チキンビリヤニ」
チキンビリヤニ 1,000円(税込)
ビリヤニといえば外せないのがパキスタン料理店です。もともとイスラム教徒が食べていた料理だったビリヤニ。イスラム教徒の国パキスタンで食べられている本気のパキスタン式ビリヤニは、これまた格別のおいしさ! 都内のパキスタン料理店の中でも抜きん出たおいしさで人気のハビビはビリヤニも絶品。ディナータイムのチキンビリヤニは1,000円ポッキリなのですが、値段に反比例した大盛りスタイルに思わずニンマリ。そんな迫力満点のビリヤニをひとたび口に運ぶと、軽やかなおいしさでスプーンが止まらなくなります。
パラパラのバスマティライスは心地よいマサラの香りが広がり、お米をかき分けると現れる存在感抜群の骨付き肉がこれまた旨いのです! ライタをかけるとさらに軽やかになり、気づくと大盛りのビリヤニが全て胃袋に収まって、さらにもう1品オーダーしたくなるほど。ディナータイムはハリームやニハリなど、パキスタンならではのメニューがあるこちら。極上のイスラム料理と一緒にパキスタン式ビリヤニを存分に味わってみてください。
サベラ ティッカ ビリヤニ(天王洲アイル)の「野菜ビリヤニ」
ランチの季節の野菜ビリヤニセット 1,090円(税込)
東京でおいしいビリヤニを食べたいなら、六本木サイーファ ケバブ アンド ビリヤニ、新橋カーン・ケバブ・ビリヤニ、上野ハリマ・ケバブ・ビリヤニなどの○○ケバブビリヤニグループに行くとまず間違いないでしょう。そのグループの天王洲アイルのお店がこちらの「サベラ ティッカ ビリヤニ」。チキンビリヤニもマトンビリヤニも秀逸ですが、オススメしたいのが色鮮やかな野菜ビリヤニ。ビリヤニはノンベジのイメージが強いですが、ベジ料理大国のインドで親しまれているだけあって、野菜のビリヤニも抜群においしいんです。こちらではシナモンやブラックカルダモンが印象的な香り高いビリヤニがいただけるのですが、オレンジを搾りフルーティーな香りをさらにプラスさせるのが◎。ミントリーフが爽やかなアクセントになります。
ランチでもディナーと同クオリティーの料理が出てくることで有名なこちらのグループ。天王洲アイルのサベラ ティッカ ビリヤニは他の系列店よりも価格が安くサービス料理もたくさん運ばれてくるので、リーズナブルで豪華なランチが楽しめます。この日の昼の野菜ビリヤニセットはサラダ、ライタ、ドリンクにサービスの野菜カレーが付いて1,090円! お台場からも近いので、寄り道して天王洲アイルで絶品ビリヤニを楽しむというのもオススメです。
エリックサウス マサラダイナー(渋谷)の「バラエティプレート」
バラエティプレート 1,480円(税別)
エリックサウスの新機軸の店舗として今年5月にオープンし人気上昇中のエリックサウスマサラダイナー。ビリヤニメニューがかなり充実しているのですが、ビリヤニをメインに色んなインド料理が一度に楽しめる、お一人様専用メニューがオススメです。ハーフサイズのチキンビリヤニとライタに選べるカレーが2種、チャパティにチキンティッカ、サラダ、トマトチャトニも付いてくるとても贅沢なプレートなのですが、ディナーなのに1,480円というプライス! 毎日通ってしまいそうです。
メインディッシュのチキンビリヤニはハーフサイズながらも手羽元がゴロンと入り、香り高いスパイスのアロマが広がる流石のおいしさ! セットメニューとはいえエリックサウスのビリヤニの魅力が凝縮された見事なビリヤニです。ライタだけでなく、選べるカレーでリッチにビリヤニが楽しめるのもこのプレートならでは。ジューシーなチキンティッカをつまみながらビリヤニを口に運び、チャパティでカレーを食べながら再びビリヤニを口に運ぶ。こんな贅沢な食事が1,480円で楽しめる高いコスパがさすがです。夜渋谷で一人メシの時は迷わずエリックサウス マサラダイナーへ!
趣の違うビリヤニメニューを5つ紹介してもらいましたが、どれも満足度の高いオススメのビリヤニです。気になるビリヤニを食べて、ビリヤニの波に乗りましょう!
教えてくれたのは
スパイシー丸山さん
インド料理からお家カレーまで精通する次世代のカレー研究家。日本野菜ソムリエ協会のカレーマイスター養成講座講師。手作りインド料理を振る舞う『スパイシー丸山のカレー夜会』不定期開催。著書「初めての東京スパイスカレーガイド(さくら舎)」。カレーレシピ、カレーの歴史、スパイスの効能などカレーにまつわる様々なトピックを日々発信している。ブログ「カレーなる365日」