おしゃれフードトレンドを追え! Vol.21

ローフードが再び注目された理由を探る

そもそもローフードって何だ?

低温調理法が話題だ。お肉を真空パックに入れて低音でじっくりじわじわと仕上げていくと、素材が持つ栄養素や酵素を壊さず丸ごと摂取できて美味しさも引き出せるとのことで、低温調理器が飛ぶように売れているのだとか。低温調理を推奨するシェフの本もベストセラーになっている。

 

んな低温調理を究めると「ローフード(RAW =生)」にたどり着くわけだが、このローフードが一部のおしゃれ人の間で今再び盛り上がっているようだ。生か48℃以下の低温調理された料理をローフードと呼ぶが、ただ単に生野菜を食べれば良いというものではなく、無農薬・有機野菜を使うなど食材選びもポイントだ。ローフードは肉・魚なしのベジタリアン食。そしてなぜかそこにグルテンフリー、オイルフリー、乳製品フリー、発酵食といった“意識高い系”の理念がてんこ盛りで付いてくる。食品を最適な状態でとることで代謝や解毒、消化活動が改善され、健康維持や痩身などの効果が期待できると言われている。見た目も美しくなり体にもいいとなれば、ファッション系女子たちが飛びつかないわけがない。

 

“第一次ローフードブーム”が起きたのは約20年前。私が初めてローフードの存在を知ったのはアメリカの大人気TVドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」でサマンサが年下の彼氏スミスと初めて出会ったローフードレストランのシーンだった「ここには冷たいお料理しかないのよ〜」とやり手PRのサマンサがキャリーとミランダ、シャーロットを案内しながらサラダやスムージーを楽しんでいた。ナッツや野菜をふんだんに使った冷たい料理はおしゃれ系女子なら誰もが一度は試したものだが、当時の日本人には馴染みがなくなかなか定着しなかった。

 

それから約20年が経った今。ローフードはメニューも豊富になり、味付けもレベルアップしている! スイーツを中心に盛り上がっていて、特にローカカオ(チョコではない)とココナッツクリームで作ったアイスクリーム、酒粕クリームや豆腐クリームをとろりとかけた焼かないバナナケーキなど、味わいにも複雑さと奥深さがあって普通のスイーツと比べても遜色ないものに成長した。

 

食事もスパイスの使い方を工夫して、健康フードにありがちな味気なさや味の薄さを克服。豆やアボカド、大豆ミートなどを使ってお肉に代わる“肉っ気”が巧みに表現されている。お米を使わず海苔で千切り野菜を巻いた「ローフード海苔巻き」、完全非加熱で玉ねぎなどを乾燥させて作ったパン、大豆ミートを使ったタコス(タコス生地はレタスですよ)など、前菜〜メイン〜デザートまでなんでもこい!

 

3~4年前に大盛り上がりして一時期陰りを見せていたコールドプレスジュースも、今年の夏はブーム再燃の様子だ。ジュースだけで1週間過ごすと軽い断食状態が体をキレイにしてくれるらしいが、猛暑で食欲がない日はそれも良さそうだ。

“ローフードトーク”基本編

さて、スイーツを中心に流行り始めているローフード。最近はこのような会話があちこちで繰り広げられているので、ローフードに対するおしゃれなリアクションを練習してみよう!

ケース1:ファッション撮影の現場で

「撮影時のランチ、ローサンドイッチにしました!」(女性誌編集者)

「わーい! もちろんヴィーガンですよね?」(女子モデル達)

※ローフードで用意したという編集者に、さらに意識の高い女子モデルからチェックが入る。

ケース2:ファッション展示会にて

「これ、ロークッキーなんです。乳製品もグルテンも一切使ってないんですよ!」(プレス担当者)

「ええ〜すごい! ギルトフリー(罪悪感なし)だからうれしい! 小腹が空いたら編集部で食べます」(ファッション誌編集者)

※最近の展示会のお土産に増えているのがローフードやナチュラル素材のお菓子。手渡す時のプレス担当者の自信を感じる。これに対して「ギルトフリー」という言葉で“わかってる感”を出し、応戦しているという高度な会話。

ケース3:お誕生会で

「ローケーキ、オーダーで作ってもらったの。もちろん乳製品もお砂糖も使ってないんですよ」(パーティーのホスト)

「わあ〜カワイイ! ローケーキなら子供にも安心だね」(ゲスト)

※子供には安全安心なものを食べさせたいという親はここ最近増えているが、それに加えてお洒落なイメージがあるローフードはパーティでちょっと威張れる。

今注目のローフードを実際に食べてみた

レインボー・ローフード(恵比寿)

出典:mitton1990さん

 

ローフードの料理教室やレシピ本は沢山あるが、都内で本物のローフードが食べられるレストランは限られている。恵比寿の「レインボー・ローフード」は本格的なローフードランチ&ディナーが堪能できる数少ないお店だ。日本人の口に合うような身近な食材を使い、誰でも親しみやすい、ローフード界の「家庭の味・お手頃価格」を目指しており、どの料理も食べてみるとほっとする味で親しみやすい。明るい南国のカフェバーのような内装の店内では野菜の海苔巻き、アボカドの炙り丼など和風&ハワイアンのミックス風メニューがずらり。大豆ミートなどの使い方も上手で、野菜だけなのに食べ応えのある料理もある。よく冷えたヘンプビールで乾杯! ローフード第一歩はこの店からスタートしたい。

トゥルーベリー(中目黒)

中目黒のトゥルーベリーのフードとドリンクは、原料が全て国産の無農薬無化学肥料の野菜・果物・ハーブ類。ジュースとスムージーを求めて朝から近所の意識高いランナーたちが訪れている。スイーツなのにデトックスできて美味しくて太らない、 魅力がいっぱいの“焼かないスイーツ”が店内でもネットでもオーダーできて人気。小麦粉、卵、乳製品、白砂糖不使用、グルテンフリーと安心ずくめだ。ランチにローサンドをいただいたが、パンを含めて全てが野菜でできていることに感心した。野菜パルプやひまわりの種などを細かく砕いてのして乾燥させたパン風のシートで、人参や豆ペーストなどを挟んだサンドイッチを食べると「手間隙かけて作っているな」と驚く。

スカイハイ 青山店(表参道)

出典:ami.0923さん

 

コールドプレスジュースの有名店スカイハイはジュースがメインだが、青山店ではサンドイッチなどの軽食も始めた。グルテンフリーでヴィーガンに対応したスコーンやマフィンは、あっさり味で胃もたれしない。ハウスサラダやアサイーボールはボリュームタップリで空腹感はない。美しくカットされたフルーツや野菜が木製ボールに盛られたビジュアルは、完璧に映える。

 

 

味もいいしメニューも豊富。実際に食べてみてローフードは20年前よりはるかに進化していることを実感。だが……。ドラマSATCでキャリーとミランダは、ローフードレストランで食事の後に文句をいいながらピザを食べに行っていたが、実は私もランチにローフードサンドイッチを食べた後、唐揚げを買って帰ってしまった。おしゃれフードで一食にするオシャレライフを送るには、まだまだ修行が足りないと反省した。