コスパに驚愕! おまかせコースの内容を全見せ!
新店でも料理の根幹にある哲学は本店と変わらない。久保さんが実際に産地を訪れ、信頼のおける生産者から仕入れた食材を使用する。コースは料理5品で15,000円を基本とし、後は自由に単品を追加できる気軽なスタイル。単品は、あらかじめ決まったメニューは少なく、その日その場の食材に応じて、リクエストにも柔軟に対応する。

季節、季節で全国の農家から久保さんが吟味した食材が送られるが、特筆したいのは鮮度の良さ。収穫後すぐ送ってもらうため、食感、香り、風味が鮮やかで際立っている。旬のホワイトアスパラガスは北海道の農家から直送されたもの。歯を入れると、とれたての筍のように身が柔らかく、えぐみが全くないが、みずみずしくて味はしっかりしている。たっぷりのハマグリからとった出汁のジュレが全体をまとめてくれる。

真鯵は江の島沖で朝とれたものが昼には届くという抜群の鮮度だ。臭みなども一切なく、甘みや香りが良い鯵を刺身で和え物にしている。「この食感や味わいは当日水揚げされた鯵にしか出せないものです」と久保さん。美しいガラスの器は大正時代から続く江戸切子で、梶の葉を敷いた設えも爽やかだ。

奥の厨房には炭火焼きの台が据えられ、本店同様に焼き物には炭火を使用する。魚も野菜も素材本来のおいしさをしっかりと引き出せるのも、火が柔らかく入る炭火ならではだ。

この日の鰻は、名産地として知られる愛知県西尾市一色産。地焼きならではの香ばしさが際立ち、皮はまるで揚げたかのようにパリッとしている。身はふっくらと柔らかで、上質な脂が広がる絶妙な食感と風味のコントラストがたまらない。万願寺唐辛子は、京都の農家から朝届いたばかり。みずみずしく、爽やかな甘みがあり、鮮度の良さを一口で実感できる。

お椀代わりに供されたのは、京都・上賀茂の農家が育てた賀茂なすと、希少な白甘鯛を組み合わせた一品。賀茂なすは身がしっかり詰まり、やわらかくもみずみずしい。白甘鯛は、久保さんが信頼を寄せる愛媛の漁師・藤本純一さんよる神経締めで、繊細な旨みが際立っている。

本店でも使う最高級の牛肉「但馬玄」は、こちらでも味わえるのが贅沢だ。風味豊かな赤身が特徴の「但馬玄」は、融点が低いため、脂が口に残らずすっと消えるような軽やかさ。すき焼きにしても重たく感じず、食後感が心地よい。今後は本店では使いづらい部位などをこちらの料理で生かしていきたいという。

本店で定番のそばも、追加可能!
久保さんが打つ十割そばは、本店の名物として知られている。そこで「笄町 豪龍久保」でも同じ十割そばを〆に提供する。こちらではコースには含めず、数種類の中から追加で注文できるのだ。

〆には数種のそばが用意され、一口サイズから大盛りまで、お腹の具合に合わせて提供してくれる。初夏は、酢橘をあしらった爽やかな酢橘そばが登場する。カツオの風味が漂う冷たいつゆに、酢橘の酸味と香りが溶け合い、夏の訪れを感じさせてくれる。しなやかな十割の細打ちそばとの相性も抜群だ。

ハードルが高い高級店でしか味わえなかった食材とその料理のエッセンスを、より気軽に楽しめる「笄町 豪龍久保」。噂を聞きつけた常連客を中心に、早くも注目を集めているという。現在はおよそ1カ月先までの予約が可能だが、今後はプラチナシートになるのも必至。訪れてみたいなら、早めの予約をおすすめしたい。


