予約は1年以上満席。一生に一度は食べてみたいコースの内容をご紹介

コースは20,000円〜。スタートは焼き鳥の醍醐味を味わえる「腿肉」からだ。炭火なら皮目をカリッと焼くことは容易だが、薪火では、肉がパサつくことなく皮目をパリッとさせるのは至難の業。しかし、疋田さんが焼き上げる「腿肉」は、きつね色に焼けた皮はパリッ、カリッと驚くほど香ばしく、肉はジュワッと肉汁があふれる。そこに薪火を的確に操る技術がうかがえるのだ。

「腿肉」の後は、鶏焼売、お椀など一品料理がしばらく続き、それからまた串に戻るという流れで、デザートまでの15品が提供される。こうした緩急のある構成が食べ手を飽きさせないのだ。

高原比内地鶏の「腿肉」

ジューシーな鶏手羽は、ねぎを抱いた「ねぎま」で登場する。焼いている間に落ちてしまう鶏手羽の旨みをねぎに吸わせて留めようという計算だ。最初は骨付きで焼き、出す前に食べやすいように骨をスッと抜く。上には塩漬けの生こしょうをのせるので、鶏手羽のこってりとした脂をこしょうの辛みがひきしめてくれる。

高原比内地鶏の「鶏手羽」

串だけでなく、一品料理にもさまざまな鶏の部位が登場する。中でも串を打つと硬くなってしまうという下腿の部分は、塊でしっとりと焼き上げてから切り分ける。脂や旨みが濃厚な腿肉は、たっぷりの大根おろしと一緒に食べると、優しい酸味の土佐酢と少しふった七味のスパイシーな香り、鶏肉の脂の旨みが折り重なって至福の味を作り上げる。

高原比内地鶏の「腿肉、土佐酢大根おろし添え」

コースを通して旨みの深い山形の海塩を使った塩焼きが多いが、レバーはあっさりとしたたれで焼く。焼き上がりの最後にサッと塩をふるが、こうすることでレバーのクセがマスキングされるという。

プリンとした食感の高原比内地鶏の「レバー」

〆は目の前で仕上げられる、香り高い「そぼろご飯」

コースのクライマックスは、〆の「そぼろご飯」に使うそぼろを炒る光景だ。薪火に直接、鶏ひき肉をあてて焼き上げるという調理法は斬新であり、迫力満点。店内には香ばしい香りがたちこめ、そぼろから滴る脂に赤い炎が上がる。そのダイナミックな調理法にゲストは圧倒されるのだ。

真剣な表情で目の前の炎を操る疋田さん
薪の香りをとりそぼろに存分にまとわせていく

この店の名物ともいえる「そぼろご飯」は、疋田さんが修業した「ヨシモリ」から受け継ぎ、進化させたものだ。土鍋でふっくらと炊いたご飯に、薪で焙った鶏そぼろ、生の玉ねぎのみじん切りを完全に一体化するまでよく混ぜて、最後にもう一度、薪の香りをつけるため直に薪を入れて仕上げる。

土鍋に直に薪を入れることで香りがたっぷりとうつる
油で湯がいたにらをのせてアクセントに

日本固有の焼き鳥文化をさらに進化させた薪焼き鳥。他にないこの料理の魅力を最大限に味わえるコースを一度は体験してみたい。もはや予約困難とささやかれているが、キャンセルが出ると告知されるので、こまめに公式サイトをチェックして貴重なシートを獲得したい。

※価格はすべて税込

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文:岡本ジュン、食べログマガジン編集部 撮影:八木竜馬