Best New Entry受賞店をご紹介

2025年1月29日に発表された「The Tabelog Award 2025」。初めてノミネートされた店舗の中でも特に「食べログユーザーから注目されている店」に贈られる「Best New Entry」を受賞したお店を紹介していく本連載。今回は2023年に移転し、さらにパワーアップした「薪鳥新神戸」をご紹介。

2023年に麻布十番から赤坂見附へ移転! 

炭火の焼き鳥とは一線を画す“薪焼き”で人気を誇った「薪鳥新神戸」は2023年11月に赤坂へ移転した。店があるのは賑やかな赤坂の街にあって、静かな路地に面した場所。ビルの裏手にエントランスがあるという奥ゆかしさも、以前の隠れ家的な雰囲気を思い出させる。店を見つける目印はポツンと光を灯す看板のみ。防災扉を開けると、地下へ下りる階段が待っている。

目の前が駐車場なので車で乗り付ける人にも便利だ

スタイリッシュな内装は以前と変わらないが、店舗はゆとりある空間に生まれ変わった。席数は7席から12席へキャパシティが増え、カウンターの後ろは以前よりもずっと広々としている。焼き場には炉窯が2台並び、薪火もパワーアップ。一直線だったカウンターはコの字形にチェンジし、劇場のように焼き場を取り囲んでいる。これならどの席からも臨場感たっぷりに眺められる。

席の間隔や後ろのスペースが広く、ゆったりと食事が楽しめる

「来年こそGoldに返り咲く」。研究と進化をし続ける「薪焼鳥」のさらなる可能性とは

「薪焼新神戸」の責任者は末富信さん。ほかにも「鈴田式」「時限堂」「atami」など、名だたる名店を手掛けてきた。

責任者の末富信さん 写真:お店より

料理長は疋田豊樹さん。葉山「日影茶屋」、横浜にあった日本料理「あいちや」、広尾「分とく山」など、名だたる日本料理店で腕を磨いた実力の持ち主だ。しかし一転、焼き鳥の魅力に目覚め、今はなき焼き鳥で名をはせた「たて森」の流れをくむ「ヨシモリ」の門をたたいた。以来、焼き鳥の道を究めてきた。その腕を見込まれ、炭ではなく薪で焼き鳥を焼くという、他に類を見ないこの店を任されたのである。

「新しい店の炉窯のペースやクセをつかんで、以前と同じレベルで焼けるようになるまで少し苦労しました。移転してもっと良くしたいと頑張ってきたので、今回のノミネートは素直にうれしかったですね。『席数が増えて味が落ちた』といわれないように、もっと技術を磨いて、来年はGoldを取り戻します」と熱い思いを語る。

「薪の火は炭とは全く違います。そこが面白い」という疋田さん

「薪鳥新神戸」は、炭ではなく薪で焼き上げる唯一無二の焼き鳥。その特徴は薪の香りともいわれるが、疋田さんはこう語る。「薪がいいのは水分を含んでいることです。薪が燃えると水分が蒸発し、それが鶏肉に当たってしっとりと焼き上げることができます」

薪の水分は多すぎても少なすぎても上手くいかないため、疋田さんは水分計で薪の水分量を量りながら慎重に薪をくべる。移転前の休養期間では海外まで赴き、さまざまな鶏肉を試食したという疋田さん。だが、食べ比べてみると逆に「焼き鳥には日本の地鶏が一番合う」と確信できたという。そこで店では以前と同じ高原比内地鶏を使うことになった。

薪火は、直火にあてたり、火をよけて余熱で温めたりをこまめに繰り返す