【噂の新店】「塩焼肉 あぐら」
今、焼肉のトレンドといえば、昭和な町焼肉。肉質にばかり頼るのではなく「店の味はタレで決まる」と考える店も増え、タレで焼く昔ながらのスタイルが再び脚光を浴びている。そんな時流に逆らうかの如く、今年8月、五反田にオープンしたのが、塩焼肉「あぐら」だ。
鰻の寝床のような空間に、L字形の長いカウンターが続く店内は、おひとり様でも楽しめるカウンター焼肉。コンクリート打ちっぱなしに白木のカウンターとガラス張りの店内は、すっきりと明るい雰囲気だ。
「コンセプトは、米と酒に合う焼肉」だそうで、店長の森巧大さんの言葉通り、塩ダレをきっちり利かせた焼肉の数々は、まさにご飯を呼ぶ味。聞けば、その塩への探究ぶりも半端ではない。なんと10数種の塩を常備。フランスのゲランドをはじめ、イギリスのマルドン、モンゴル、ボリビアにクリスマス島の塩etc. 肉の部位によって使い分けているというのだ。しかも、焼肉はもとより、ユッケももつ煮込みもすべて塩味。例えば、ユッケには粗塩、ロースには6種の塩をブレンドして使用。そのブレンドの配合も、その時々の牛の脂の乗り具合で微妙に調節しているというから恐れ入る。
森店長によれば「ユッケを粗塩にしたのは、にんにくと合わせた時、肉とのバランスが一番良かったから」だそう。そのユッケだが、ここではなんと3種類も用意。卵がのったおなじみのビジュアルの「ウフユッケ」1,900円に、しば漬け入りの「限定・塩ユッケ」1,800円、そして「だしユッケ」1,900円というラインアップとなっている。
味付けはいずれも塩だが、それぞれ少しずつ味わいを変えているのも心憎い。「ウフユッケ」には玉ねぎとらっきょうが入り、まわりには卵をニンニクと牛乳のペーストで伸ばしたソースを敷いてある。
一方「だしユッケ」は、甘みをつけた昆布と鰹だしベースのタレを敷き、上に卵黄をトッピング。混ぜて食べれば、ご飯の良きお供。この中では、一番スタンダードなユッケの味わいだろう。
ちなみに、ユッケにはサッパリした中にもうまみの強いカメノコのような内もも肉を主に使っているそうで、細い短冊状にカットしたそれは肉感も上々。肉を食べているという実感を味わえるはずだ。
ユッケをはじめ赤身やロースなど、肉は太田牧場の太田牛をメインに使用。ストレスフリーな環境の中健康的に育った太田牛は、赤身と脂質のバランスがよく、味わいの深さが特徴だ。中でも、おすすめは「エンピツ焼き」1,408円。
“エンピツ“とは、リブロースの芯に近い部分で、その細長い形が鉛筆の先に似ているところからその名があるとか。きめ細かな肉質で、口当たりは柔らか。赤身と脂肪のバランスもよく、肉のうまみがありつつも、脂の香りが甘みを感じさせる希少部位。一頭から僅かしかとれないため、売り切れ御免の限定メニューだ。
味付けは、ロースと同じ6種の塩をブレンドした塩ダレ。肉に揉み込んだパンチを利かせた塩だれは、やや濃いめながら、肉のうまみや脂と絡むおいしさは最高!
つい欲しくなるご飯は「大」385円、「中」330円、「小」275円とあり、小でも、少食の人ならまぁまぁのボリューム。ご飯をいっぱい食べてほしいという店主の思いが伝わってくるようだ。
また、やや薄めにスライスした「ロース」2,728円は、好みもあろうが、焼きしゃぶの要領でさっと軽めに焼いてもおいしくいただける。
その他、上タンやハラミ、上レバーにガツ、マルチョウとホルモン類も充実。また「モツ煮」780円や、湯引きして魚介系のタレで和えた「うるて」880円、「とろとろ卵スープ」680円など焼肉以外の一品料理も一律塩味。
「飯ではなく酒だよね」という“飲みたい派”にはアルコール類も全方位的に用意。中でもビールが充実していて「【限定】ギッチギチに冷えた−5℃の瓶ビール」825円をはじめ、4種類のクラフト生ビールがラインアップされている。そして、飲んだ後には「【限定】牛すじカレー」1,078円をぜひ。牛すじを2時間余り煮込んで作る隠れた人気メニューだ。
※価格はすべて税込