寿司マニアの話題をさらった「鮨 陸」が待望のオープン
広尾駅から徒歩5分という距離なのに、喧騒をまったく感じさせることのない場所にある真新しいビルの1階に「鮨 陸」は誕生しました。緑の垣根に沿いながら路地を入ったビルの裏手のエントランスを入り、12月にオープン予定の日本料理店を抜けた奥に入り口があります。
扉を開けると真っ先に目に飛び込んでくるのは美しい一枚板のカウンター。少しだけ斜めにしたのは3〜4人で来店しても話しやすいという配慮から。椅子は肘掛けが短く、背もたれは寄りかかると稼働するタイプで座り心地にこだわっています。
店主は戸田 陸さん。和食店を経験後は「鮨 水谷」「日本橋蛎殻町 すぎた」で修業し、海外へ。5年間バンコクの「鮨いちづ」を任されると、OAD(Opinionated About Dining)により4年連続アジア100店に選出。さらに日本国以外の寿司店でアジア1位を獲得し凱旋帰国。POP UPで腕を振るうと寿司マニアが絶賛、9月12日のオープンを待たずして予約殺到、今年の注目店となりました。提供するつまみ6〜7品から始まり、握り12貫ほどの「おまかせコース」32,000円から抜粋してご紹介しましょう。
食材を生かす技術とセンスで「うまい!」と言わせるつまみ
こちらは「蛸のやわらか煮」。定番料理の一つであるがゆえ、親方によって食感も味わいもさまざま。戸田さんの煮蛸は噛んだ瞬間はとてもやわらかいのですが、最後にほんの少し歯応えを感じる、驚きの食感です。
「鰯の海苔巻き」も寿司屋では馴染みがありますが、こちらも千差万別。ガリや葱の量、鰯の締め具合、海苔の溶け方でまったくと言って良いほど違いが出ます。
取材当日は北海道の鰯。あれほどパリッとして見えた海苔はしっとりしながらも歯切れ良く、口中ですべての食材を均一に感じられたはずなのに主役の鰯が最後にこっそり顔を出す。なんという一体感! 酢締めの塩梅も言うことなし! 「親方(『日本橋蛎殻町すぎた』の杉田孝明さん)の鰯に入れた塩を抜く技術が素晴らしいんです。これは丸パクリです」と笑って話しますが、この仕上がりは戸田さんがかけた時間と努力の賜物です。
これは珍しい! 揚げたフカヒレの登場です。葱と生姜と加え、薄口醤油で味を調えた鰹と昆布の出汁で炊いたフカヒレは中国料理のようですが口中で確かに和の味が出現し、カリッと揚げた衣と一本一本くっきりと感じられるフカヒレの繊維とのコントラストに頬が緩みっぱなし。「鮨いちづ」で人気のつまみだったそうですが、これはこちらでもスペシャリテになる予感!