おしゃれフードトレンドを追え! Vol.16

“ガツ飯”が働く男たちに活力を与えてくれる!

「旨い弁当を用意できて、初めて一人前」。これは、とある男性ファッション誌編集部のお決まりフレーズなんだとか。ファッション業界、そこは実は昔ながらの年功序列&体育会系の規律正しい世界。新人たちの日々の仕事は数えきれないが、なかでも特に大切なのが「メシの手配」だ。撮影現場ではスタッフたちの舌と胃袋を満足させる極上の弁当を、締め切り前の慌ただしい深夜の編集部ではスタミナのつくガッツリ弁当を、ランチタイムにはサクッと食べられる近所の旨い定食屋を押さえておくのが大切なのだ。「おっ、お前わかってるな」と先輩たちに認められればもう一人前!

 

ここで男性編集者たちから評価の高い店の7大条件を挙げておこう。「早い」「旨い」「安い」「老舗」「変に小洒落ていない」「ボリュームがある」「味は濃いめ」の7つだ。おしゃれだったり女子が喜ぶ店である必要は一切ない。頑な男飯を貫く名店たちが東京にはわんさかひしめいているが、おしゃれ業界の若手男子がこよなく愛するのは、彼らの活動エリアからアクセスがいい店だ。

男性ファッション誌編集者に人気の“ガッツリ飯”はここで!

めし処 こづち(恵比寿)

出典:岩ログさん

日替り定食。の唐揚げ(ライス・みそ汁付き 500円)にポテトサラダ(200円)をプラス。

 

まず知っておきたいのは、恵比寿の老舗食堂「めし処 こづち」。創業60年、カウンターのみのレトロ食堂はおしゃれタウン恵比寿では異色の存在で、そこだけ昭和で時が止まったような雰囲気だ。暖簾をくぐると大きな厨房が真ん中にあり、キビキビ動く料理人(5~6人ほど)とテキパキ客をさばくキップのいいおばちゃんは見ているだけで清々しい。名物は肉豆腐(200円)、牛バラ定食(850円)、日本一との呼び名も高いしっとり系具沢山チャーハン(700円・大)などボリュームたっぷりの定番メニューがずらりと並んでいるが、昔ながらの筆書きのメニュー板も雰囲気があり実にフォトジェニックだ。店内は常連客で常にいっぱいで「いつものに肉豆腐も付けて」「今日は焼きそばかな、カラシもちょうだい」と通なオーダーが聞こえる。カウンターに置かれた漬物を白米にのっけてひたすらかっ食らうお客たち……無言の空間に響くフライパンの音、包丁の音がなんとも耳に心地よい。集中して黙々と食べる喜びに浸れる、何を食べても美味しいお店だ。とにかく安いのが若手にはうれしい。

兆楽(渋谷)

ルースチャーハン(780円)

 

ガッツリ&コッテリ系といったら外せないのが中華。渋谷には深夜まで開いている大衆中華屋「兆楽」がある! センター街をまっすぐ進むと一際目立つ黄色の看板が。某サウナ店のお隣という立地も乙なものだ。カウンターメインのこの店は、中国系の元気なお姉さんたちのスピーディーな接客がいい。無言で中華鍋を振りまくる調理人が作り出すこの店一番の名物は、ルースチャーハン(780円)。皿の半分以上を占拠するのは豚肉の細切り炒め(あんかけ風)。豚肉とタケノコが鶏ガラ醤油風?のトロミのついた餡で絡められている。これを卵だけの塩控えめシンプルチャーハンと一緒に口に運ぶと、バランスがいい。男子なら大盛りでもペロリと平らげるそうだ。私が行ったのは宇田川町店だが、渋谷には朝7:00オープンの道玄坂店もある。深夜の入稿、校了、コーディネートチェック後に朝食として食べるにも最適のようだ。

どんく(恵比寿)

チキンカツ定食 930円

 長崎ちゃんぽん 930円

 

カツもメンズにとって忘れてはならないガッツリメニューだ。恵比寿「どんく」のチキンカツ定食(930円)は、若者だけが平らげられる特大ボリューム。まるで草鞋のようにビッグだが、衣はさっくり中の胸肉はしっとり柔らかのチキンカツ5枚を完食できたら立派な胃袋の持ち主だ。5枚もあるのでソースかタルタルで味変するのがマスト!  もう一つの人気メニューの皿うどん(930円)をオーダーするのもお忘れなく。

蒲田鳥久(蒲田)、金魚鉢(原宿)

「鳥久」の特製弁当 730円

 

撮影現場や編集部で作業の日には、みんなのために弁当を手配する必要がある。それならやっぱり肉&米のバランスが良い店でなければならない。蒲田の名店「鳥久」の特製弁当(730円)か、原宿「金魚鉢」の「冷し豚ポンズがけ弁当」ほかを用意すれば、先輩からも一目置かれるはずだ。

 

男性ファッション誌を作るために必要なのは、肉と米、そして麺! 流行のファッションに身を包んでいても、胃袋はおしゃれじゃないガッツリ飯を求めている。深夜のガッツリ飯カウンターでおしゃれメンズを見かけたら「今夜も入稿、忙しそうだね」と温かい目で見てあげてほしい。