【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

今回は、六本木に同時オープンした「うかい」の鉄板料理店と割烹の2店。ここぞという日に行きたい極上牛のレストランをご紹介しよう。

Vol.22 特別な日を彩る記念日レストラン!肉と“ハレ”編

エントランス/写真:うかいより

 

レストランには“ハレ”と“ケ”という言葉が使われることがしばしばある。ハレは非日常という意味で、記念日や「ここぞ」というシーンにふさわしい特別感のある店のこと。絢爛豪華な空間や贅沢な料理、行き届いたホスピタリティに心まで満たされるようなレストランを表すときに使われることが多い。

 

逆に“ケ”とは、普段着感覚で食事を楽しむことができる日常になじむ店のこと。TPOに合わせての店選びは、世界のさまざまな料理に見ることができる。たとえば、イタリアンの“ハレ”はリストランテ、“ケ”はトラットリア、フレンチならばレストランとビストロといった具合だ。

 

かつてのように外食が特別なことではなくなったいまだからこそ、特別な日はいつもよりもドレスアップをして“ハレ”の店へ足を運びたいもの。外食は楽しい!と改めて胸をときめかせてくれるハレの日レストランは東京にも数あるが、その中の代表格のひとつが鉄板料理店「うかい亭」だ。

良質な飼料を食べて育つうかい極上牛/写真:うかいより

 

昨年の米国大統領来日時に会食の舞台に選ばれたことでも話題を集めたうかい亭が、この春、六本木に新たな店をオープン。場所は、開業15周年を迎え、ますますの活況ぶりを見せる六本木ヒルズのけやき坂。ここでも創業以来うかいが大切にしてきた“美味方丈”の世界観を貫く。“美味方丈”とは、うかいの造語で、一丈四方の空間で食材を育んだ風土や気候、生産者の愛情に思いをめぐらせられるような幸福な時間を提供することを意味し、六本木店でもその究極の美食空間を展開している。

 けやき坂に面した六本木うかい亭の鉄板シェフズテーブル個室/写真:うかいより

箱根ガラスの森美術館所蔵の香水瓶/写真:うかいより

 

隣接する「六本木うかい亭」と「六本木 kappou ukai」は、それぞれのエントランスを抜け、店内に入ると空間がひとつながりになっている造り。日本画家、畠中光亨氏の作品をはじめ、箱根ガラスの森美術館所蔵の香水瓶が飾られ、壮麗で華やかな雰囲気を生み出している。

鉄板料理のスペシャリストである料理人の技を目の前で楽しめる/写真:うかいより

六本木店のためだけに育てられた極上牛を使用/写真:うかいより

うかい亭定番のガーリックライス/写真:食べログマガジン編集部

 

六本木 kappou ukaiが日本全国から選りすぐった旬の食材を腕利きの料理人たちがゲストの目の前で料理に仕立てる“劇場型食空間”なのに対し、六本木うかい亭は鉄板料理のスペシャリストである料理人の華麗な手さばきを間近で見られるとびきりのエンターテイメント空間。指定牧場で良質な飼料を食べて育つうかい極上牛(田村牛)のステーキや定番のガーリックライスなど、食材の質を徹底して重視した料理が登場し、気分を高揚させてくれる。

六本木 kappou ukaiのカウンター席/写真:うかいより

六本木 kappou ukaiのメニュー一例/写真:食べログマガジン編集部

 

食材が焼き上がる過程、音や香りを楽しむことができるのも、うかい亭の鉄板料理の醍醐味。これぞ一流、まさに極上と頬も自然とゆるむ。“ハレの日レストラン”という言葉が、これほどしっくりと来る店はそうそうない。五感を満たし、至福をもたらしてくれる場所は、やはり特別な存在なのだ。