コース中盤は、イタリア郷土の味に忠実に

「アニョロッティ ダル プリン」はディナー11,000円(9皿)の中の一品

現地で学んできた地方料理を、シンプルに提供するのも斎藤シェフならでは。「アニョロッティ ダル プリン」は、卵黄を贅沢に使ったパスタ生地に、詰め物をして作るピエモンテ州の郷土料理だ。

詰め物には、豚肉、鶏肉、仔牛を使い、野菜もたっぷり。「現地ではここにウサギやお米も入れていましたね」(斎藤シェフ)。つまむようにして具を包み入れた、小さなパスタを茹で、バターと鶏のブロード、セージを用いたシンプルなソースを絡めている。

一切れを口に運べば、小粒ながら旨みがギュッと凝縮した味わい。削りたてのチーズの程よい塩味もあり、噛むほどに旨みは深くなる。

他にも、ナポリの郷土料理・タコのルチア風(トマト煮込み)をタリアテッレに絡めるなど現地色の濃い一品も登場する。

料理に寄り添うワインも、イタリア北から南まで幅広く。さらに、大阪・交野市「PAPA◯FARM」で栽培したデラウェアを用い、奈良「木谷ワイン」が醸造したナチュラルワインなども揃える

名門ホテル出身ならでは。伊と仏、ハイブリッドな創造も

「ニョッキとオマール」はディナー16,500円(10皿)より

大阪の名門ホテルでの経験、さらにはフランスの国境の地でもキャリアを積んできた斎藤シェフらしいチャレンジングな一皿も。中でも「ニョッキとオマール」はイタリアとフランスの技を組み合わせた、ハイブリッドな魚料理。

リコッタチーズとジェノベーゼを忍ばせたニョッキは、とろけるような滑らかさ。その脇には、オマールの肉厚な身がゴロリ。オマールの頭や香味野菜などから作る濃厚なソースが、ふわトロのニョッキに絡むのだ。

オマールの頭や殻を用いるだしの取り方。さらには少しのトマトペーストでコクを出すソース作りの工夫などは、シェフ曰く「ホテル修業時代に先輩から教わった“足し算”のフレンチです」。

イタリア郷土の味と、ホテル仕込みの技をもち、クラシックでありながらセンスの光る料理が、ひときわ存在感を放つ。

左から、斎藤シェフとスタッフの田中康博さん。田中さんは「リーガロイヤルホテル大阪」で18年経験を積む中、フレンチレストラン「シャンボール」でもキャリアを積んだ

斎藤シェフは、独立開業を支援するコンテスト「チャレンジキッチン淀屋橋」にエントリーして優勝。晴れて「芝川ビル HANARE」で独立開業が叶った料理人。「この歴史ある木造建築を初めて見たとき、イタリアに通ずる、温もりや歴史を感じました」とシェフ。

店名の「isolata」とはイタリア語で「離れた」という意味。誰かにこっそり教えたくなる隠れ家で、まるでイタリア各地を旅するような気分に浸りたい。

2階にはテーブル10席があり、貸切やパーティーなども可能。100年以上の歴史に育まれた、落ち着いた空気感が心地よい

※価格はすべて税込

文:船井香緒里 撮影:竹田俊吾