レベルの高さを体験する、食通もうなるコース構成

厳選素材と職人技が織りなす、王道の焼き鳥

「つくね」。あっさりとした醤油ダレが濃厚なうまみを引き立たせる

「とり 難波」では、もも、胸肉、手羽先は水郷赤鶏、その他の部位は銘柄鶏を使い分けている。山本さんをうならせた「つくね」は、もも、せせり、軟骨、皮などを独自の割合で配合したジューシーで食感が楽しい逸品だ。

800℃の炭火でこまめに返しながら、少しずつ火入れしていく
カウンター越しに井口さんの熟練の手捌きを眺めるのも楽しい
 

山本さん

うまみがしっかりしていておいしいです。

希少部位の「ふりそで」

胸肉と手羽先の間にある部位で、1羽に2個しか取れない希少部位「ふりそで」。脂がのっていながらもさっぱりとした口当たりで、身はふんわりと柔らか。

焼き鳥は一口目でガツンとおいしさが伝わるように、一番上に大きめの身を串打ちするのも井口さんのこだわりだ。絶妙な火入れ加減による、ジューシーでみずみずしい焼き上がりも秀逸である。

 

山本さん

全体的に完成度の高い焼き鳥です!

焼き鳥だけじゃない! 店主のこだわりが堪能できる一品料理

「とり難波おまかせコース」8,800円を構成する、焼き鳥の合間に登場する一品料理にも食べ手を楽しませる創意工夫が満載。

皮をカリッと香ばしく焼き上げた「鳥鮨」

身体を整える鳥スープにはじまり、季節物など3品のお通しを味わった後、焼き物に入っていく。コースの途中では、香ばしく焼き上げた鶏皮とシャリを合わせた「鳥鮨」も登場。こうした引き出しの多さも、これまでピンチョススタイルなど新しい焼き鳥を生み出してきた井口さんの真骨頂。王道の焼き鳥は踏襲しつつ、最後まで飽きずに楽しませてくれる技術と経験値にただただ感服する。

炭火で炙った一口ご飯ときんかんが至極美味! 「1口TKGと漬物」

〆に登場するのは一口サイズのTKG。ご飯に添えられているのは、卵黄ではなく焼き鳥の「ちょうちん」に付くきんかん(鶏卵)。ボイルしたきんかんを醤油漬けしてから炭火で焼くことで、パリッとした皮からとろとろの黄身が弾ける食感を楽しめる。きんかん特有の臭みが苦手だったという井口さんが試行錯誤し「きんかんの一番おいしい食べ方を究めた」と話す名物だ。

 

山本さん

添えられた一口サイズのご飯とあわせていただきます。口の中でもぐもぐしたときの黄身が広がる感じがたまらなくいいですね。

すべてがそろう、行きつけにしたい焼き鳥店

カウンター主体の店内は、焼き台に立つ井口さんとの会話も楽しめる心地よい賑やかさ。しっぽりと焼き鳥を堪能したい夜は4名まで利用できる個室もあり、デートや接待にも重宝されている。高級化が青天井の焼き鳥ブームの渦中で、コースが1万円以下というリーズナブルさも通いやすい。

味、話題性、コスパどれをとっても非の打ち所がない「とり 難波」。予約が困難になる前に、レジェンドの新境地をぜひ体験してみてほしい。

※価格はすべて税込。

撮影:長尾真志
文:坂井あやの、食べログマガジン編集部