定食王が今日も行く!Vol.42

うどん、卵、ご飯と3つの食べ方ができるホッとするカレーうどん定食!

江戸時代から続く蕎麦屋は

B級グルメ業界の革命児!

 

久しぶりに用事があり、早稲田駅へ。「良い定食屋は良い大学のまわりにある」という法則が自分のなかにはあるのだが、早稲田大学もその類に漏れず、多くのすばらしい食堂が周辺に集まっている。今回紹介する「三朝庵」もその一つだ。後楽園周辺で江戸時代から続く蕎麦屋「三河屋」を営んでいた店主、加藤朝治郎が早稲田大学の創設者、大隈重信から店舗を借りて1906年に創業した蕎麦屋だ。「三河屋の朝さん」と呼ばれていたことが、現在の店名の由来だとか。

店前には「元近衛騎兵連隊御用」「元大隈家御用」という看板が今でも掲げられており、実際に大隈重信自身も何度も店を訪れていたそうだ。

店内は昭和にタイムスリップしたような大衆食堂だ。かつては早稲田の学生や教員が多く訪れており、壁一面のウィンドウには過去の偉人や、早稲田のサークルや地域の高校からの寄せ書きなど、多くの人に愛された歴史が飾られている。

入り口を入った右側にはおばあちゃんが座った食券売り場があり、事前に食券を購入する形式だ。「どれが人気?」「どれも美味しいよ」なんていう、おばあちゃんとのやりとりも、なんだか道の駅の食堂のようで東京にいることを忘れるほどだ。

カレー南蛮うどん発祥の店の

カレー定食!味変3段活用

 

食べ歩きを生業としている人ならば、必ず「元祖」や「発祥」のお店を訪れるだろう。「元祖・発祥系」と呼ばれるジャンルも存在するほどだ。この店は重要メニュー、カレー南蛮うどんとカツ丼を生み出したと言われる日本のB級グルメの重鎮なのだ。カレー南蛮の“南蛮”は、長ネギのことを指す。このネギが玉葱になると、ただの「カレーうどん」になるそうだ。

今回はそんなカレー南蛮うどん/そばに、ご飯がついた「カレー定食」950円をオーダー。ほどよい辛さの中にほんのり出汁の甘さを感じるカレー。蕎麦つゆのような風味が舌に残りさっぱりといただけるまろやかな味だ。定食の小鉢としてついてくる卵を途中で溶かし、味をもう一段まろやかにするのもオススメだ。ツルツルと麺をすするとあっという間に麺を完食!

最後にはご想像の通り、ご飯を投入しカレーTKG(卵かけご飯)のでき上がりだ。この店にはカレーカツ丼というメニューもあり、卵とカレーの黄金コンビで白飯が進むこと間違いなし!

明治時代に生まれた

卵とじのカツ丼の元祖!

 

先述したように、この店はカツ丼の元祖とも言われている。トンカツの元祖「王ろじ」、カツカレーの元祖「スイス」、カツサンドの元祖「井泉」などカツとカレーにまつわる元祖は網羅して来た。

 

この店の発明はカツを卵でとじた丼を作ったというところにあるという。宴会用の仕出しのトンカツが余ってしまい、親子丼や開化丼のように卵でとじてみてはと初代が考え出したのが現在の「カツ丼」だ。

入り口の食券売り場にも、注意書きがあるように、このカツ丼自体に何か特別な「感動」はない。ただ、ほっと安心するような味わいがある。カツと玉ねぎに蕎麦つゆをベースにして卵でとじた蕎麦屋のカツ丼だ。創業当時は高級品だったカツをこんな風にして食べるのは、さぞ贅沢だっただろうなと想像させる。

 

定食屋とは「感動」ではなく「安心」を食べる場所だと思っている。この春、上京してきた新入生たちもぜひ、自分の大学のまわりで実家のように通えて、ほっと一息つける定食屋を見つけてほしい。