昼から“おいしい”はしご酒 vol.3 築地

酒場にも精通し、音楽界の“グルメ番長”小宮山雄飛が教える、昼からお酒を楽しめる店を紹介。明るい時間から飲みはじめ、おいしいアテを食するのは至福のひととき。一軒もう一軒と、ついはしご酒をしたくなる名店を3軒教えます。連載3回目は、観光客でも賑わう築地の居酒屋で酔いしれます。

教えてくれる人

小宮山雄飛

1973年原宿生まれ原宿育ち。ホフディランのVo&Key。音楽界のグルメ番長の異名を持つ。特にカレー好きとして知られ、著書に「カレー粉・スパイスではじめる 旨い! 家カレー」(朝日新聞出版)、「簡単!ヘルシー!まいにちカレー」(主婦と生活社)などがある。2018年に日本初のレモンライス専門店「Lemon Rice TOKYO」を渋谷にオープン(現在はEC、イベント出店限定)。渋谷区初のCEO(chief eat officer)を務める。

【小宮山さんおすすめの店】多け乃

狭い路地

今回、小宮山さんが紹介する店は、築地の路地裏にある「多け乃」。現・主人の祖父が、昭和15年に甘味処としてオープンした店は、魚河岸が日本橋から築地に移った際に、魚食堂へと転身。代々付き合いの深い業者から、いち早く鮮度のよい魚の情報を入手し、毎朝仕入れるからこそ、最高においしく低価格で提供できる。新鮮な魚料理を中心としたメニューが豊富に揃い、刺身や揚げ物、煮付け、小鉢、定食など、つい目移りしてしまいオーダーに迷うほど! 築地の端の波除通りにある人気店「築地すし大 本館」の角を目印に、脇の細道を曲がると辿り着ける、隠れ家的な場所にある。

壁一面にずらりと並ぶ品書きの多さに、まず圧倒される

2階席は、客が自ら自由にお酒やグラスを棚から取る、セルフシステム。初めて訪れたひとは驚くはずだ

「魚竹」「中村家」、そば「長生庵」など昔から通う店も多く、何だかんだ楽しくて月1は来てしまう築地エリアで、食べて飲んで、食材探ししながらブラブラ散歩するのが好きな小宮山さん。今回訪れた行きつけである「多け乃」の暖簾をくぐると、1階はオープンキッチンの席、2階はセルフシステムが導入された自由なスタイルで、連日、昔から市場で働く常連や地元の人、近いエリアのメディア関係者が中心となり賑わっている。外国人観光客でにぎわう築地場外市場だが、ここではほとんど見かけない。「下町の風情が残り、知る人ぞ知る穴場的な昭和レトロな雰囲気が、すごく落ち着く」と、小宮山さんが紹介してくれた。

酒類のラインアップは、日本酒が豊富。魚料理に合うよう厳選された日本酒は、4合瓶売りなので、数名グループで来店する客が多いそう。のの字のアイコンでおなじみの石川「農口尚彦研究所」が、店主のおすすめ。親交のある生産者さんが来店した際の写真が、壁に飾られている。

食べたい料理をメモして、1階厨房に自分でオーダーするスタイルが斬新で楽しい!

置いてあるメモに書いてオーダー

2階はスタッフが常駐していないので、基本セルフの放置されているスタイル。オーダーはまずメモに書いて、洗濯バサミでクリップ。

パイプのエアシューターにドロップ

酒冷蔵庫の横にある、昔、町中華などでよく見かけたようなパイプのエアシューターにドロップし、1階の厨房にオーダーを伝える。原始的なオーダー方法に、なんだかワクワク楽しい気持ちに。

がっつり濃いめウーロンハイで、至福の一杯から昼飲みがスタート

濃いめに作られるウーロンハイ

飲むときは、焼酎派の小宮山さん。築地というと、寿司や刺身、海鮮丼が名物の店が多い中、「あなごの天ぷらやアジフライをつまみながら酒を飲むというのが、なんだか渋くて大人に感じて、いいなって憧れた」と語る。築地で働いている人や常連さんが、昼も夜も一杯やりにきているイメージの店で、その雰囲気も含めて好きだとか。値段も高くなく、ふと入りやすくて、近隣にある出版社やメディアの人たちが、地元のお店として普段使いしているのもいい。「そういう使い勝手のよい店が、築地ってなかなかないので、貴重です」