京都の水を生かした出汁が秀逸

料理は昼夜共におまかせ(約10品 昼22,000円、夜27,500円)のみ。素材自体のおいしさを引き出すシンプルな調理を心掛ける。だからこそ素材は選び抜き、現地調達も多いとのこと。「開店前には1カ月、氷見に行って仲買の仕事をしました。船にも5日間乗って、船上でのブリの血抜きなど漁師の仕事を見てきました」という。素材への探求心は常に欠かせない。

今回は、おまかせから料理を3品紹介する。

向付

まずは向付。愛媛八幡浜の白甘鯛。ひと塩をして1日置くと、身が締まってうまみがぐんと増す。ねぎを巻いていただく。優しい味わいの煎り酒は、醤油よりも素材の味を感じやすい。

椀物

菜の花、こごみ、タラのしんじょの椀物。出汁は「フレッシュな香りを感じていただきたいから、お客様が召し上がる直前に作る」のが身上。水も厳選し、井戸水を常に2種類以上準備している。京都には4つの水脈があり、鰹や利尻昆布のうまみの出方にそれぞれ違いが出るとのこと。「理想は味付けがいらない出汁。香り、うまみなどのバランスを大切にしています」

 

門上さん

出汁が一口目の淡さから椀種と一体になってゆく流れが素晴らしい。じっくり味わって飲み、ゆっくりと変化を楽しむのがおすすめ。

囲炉裏で炭焼きにしたのどぐろ
焼き物

ご飯のお供の焼き物は、のどぐろの一夜干し。竹串に刺したのどぐろを囲炉裏で炭焼きにする。直接火に当たっていないので、身はふわっと仕上がる。頭を下にしているので脂が落ち、頭までやわらかくなるそう。

 

門上さん

僕がいただいたときの焼き物は伊勢海老でしたが、半生に仕上げられていて、炭床に立てられて焼かれる技は見事でした。ご飯のお供の焼き物は丸ごとのハタハタで、ふっくらしていて脂がのっていましたよ。

地に足をつけて一歩ずつ進む

店名の「徳ハ本也」は中国の古典『大学』から。「徳を慎むことを根本とし励むことが一番である」と説いたものだそう。もともとは「徳者本也」だが少々アレンジ。店主の名前の、“本”“也”の2文字が入っているのが気に入っているという。

「これからは、地に足をつけて一歩ずつ前へ進んでゆきたいですね。次の目標としては、海外の方々を中心に、日本や海外で料理教室を開きたいです。パリやバスクなどで、土地の味ではなく、きちんとした日本料理を伝えたいです」

 

門上さん

日本料理の静謐ながら滋味深いところを感じていただきたいです。

外観

※価格は税込。

撮影:福森公博
文:木佐貫久代