おしゃれフードトレンドを追え! Vol.13

もうコーヒーに並んでる場合じゃない。日本茶を飲むならここへ!

身近な飲み物が、今トレンドとして大注目

浅煎りシングルオリジンのドリップコーヒーを求めて、やれSやBなどに長蛇の列をなしていたことを懐かしく感じる昨今。コーヒーはさらにローカルで親しみやすいものに変わり、コーヒーのために遠方に出向いて並ぶのは、今や少し恥ずかしいことになるかもしれないのが2018年のドリンク事情だ。

 

そして最近は、「コーヒーよりも日本茶」という人が確実に増えており、当然おしゃれ業界でもお茶派が増えてきている。展示会でのお土産に茶葉をもらったり、雑誌(VOGUE、エル・グルメ、Hanakoなど)で組まれるのはコーヒーではなく日本茶特集だったり、街を歩けば次世代のお洒落な茶屋がオープンラッシュだったりと日本茶流行りを肌で感じる。毎月20〜30件の新オープンの店(ファッション&お洒落ショップがメイン)をリサーチしている私だが、ここ半年で少なくとも10件のお洒落茶房を訪問し、実際に飲んでいる。これは過去15年の市場調査の中でも初めてのことで、驚いている。

 

茶所静岡出身の私にとっては、緑茶(煎茶)は毎日欠かせない存在だ。上京して一人暮らしを始めるときにも親に急須を持たされ、実家から送られてくる段ボールにはいつも親戚の茶畑で採れたお茶が入っていた。わざわざ茶葉を買うほどではないが、日本茶は当たり前の飲み物として幼い頃からそばにあった。それが突然、このお洒落化! いつも近くにいたはずの煎茶が遠い存在になってしまったようで、昨今の現象を見て少々の戸惑いがある。メディアで器について熱く語るキャップを被ったデザイン系男子を見かけたり、流行りのシェアホテルのショップに置かれたお洒落パッケージの茶葉を見たりすると、格好だけじゃないの? 「渋い」とか「高尚」とか思われたいからお茶好きを気取ってるんじゃないの~?と意地悪心がムクムク出てきたりする。しかし実際にお店に行って、スタッフと話してみると茶への愛がなかなか深いではないか。

 

都内を中心に増え始めているのが、茶葉を販売しつつ、お茶の飲み比べを楽しめる新感覚の茶房。カフェでもなくサロンでもなく、喫茶店でもない。店主との会話を楽しみながら、それぞれの店の点前を見ながら味わう茶房こそ、今訪れたい場所だ。そのスタイルはさまざまで、急須の形も素材も和菓子も、器もバリエーション豊かなので、お店を何軒か回っても飽きないのがおもしろいところ。いわゆるインスタ映え的にも抜群で、わびさび感が今抜群に新鮮なのだ。

今東京お洒落シーンが注目する日本茶はここで飲める!

櫻井焙茶研究所

まず、新世代日本茶旋風を巻き起こしたパイオニアともいうべき存在「櫻井焙茶研究所」には一度は行っておきたい。ここは、泣く子も黙るお洒落空間。所長の櫻井真也さんはじめ、スタッフの方も白衣に身を包み、ピーンと張り詰めた静寂空間でお茶をいただける。大きなカウンターテーブルを囲むようにして、8席が並ぶ。王道の煎茶、抹茶やほうじ茶のほか、お茶を使ったお酒も飲めるので夜の一杯にもちょうどいい。茶房では、店主である櫻井さんが自ら茶葉を焙煎し、美しい所作で客をもてなす姿はなんともエレガントだ。いつ行っても欧米系の観光客が来ていて、彼らに完璧な英語で対応するスタッフたちにも感銘を受ける。これぞジャパニーズカルチャーの伝道師! 日本の茶の文化をお洒落に世界に伝えてほしい。

幻幻庵

出典:ねりまるさん

出典:ねりまるさん

 

「幻幻庵」の兄ちゃん(坊主で強面だが話すと優しい)が「日本茶っていうとお年寄りのものというイメージがあるけど、それを変えたいんです」と語っていた。店のスタッフは20代という若さながら、佐賀の嬉野の畑にまで赴き泊まり込みで収穫や製造にも携わったそうだから、茶葉への想いも熱い。スケボーに乗って煎茶を立ち飲みする、そんなヒップな感覚がこの店にはある。煎茶を日本人のソウルドリンクと呼び、ロケーションも渋谷・宇田川町(B-BOYの聖地)とオフビート感がある。ストリート系メンズも気軽に立ち寄れる価格(ホットティー 玉緑茶・ほうじ茶・カモミールほうじ茶 各450円)にも好感が持てる。

東京茶寮

寿司屋のようなカウンター越しにお茶を淹れてくれる東京茶寮は、急須ではなくハンドドリップで淹れるコーヒーのような抽出スタイルが面白い。香り⇔旨味/甘味⇔渋味のマトリックス図を見ながら好みの茶葉を選び、番煎じ、二番煎じを楽しむ。さらに三煎目にはカリカリの玄米をプラスしてくれるので、香ばしいフレッシュな玄米茶を味わって終了。

八屋

スタバに行くような感覚で気軽に楽しめる日本茶スタンドカフェ八屋は、代官山と千駄ヶ谷に2店同時オープンしたお店。煎茶・ほうじ茶・玄米茶をメインに、お茶のラテ、お茶×炭酸×フルーツという、斬新な組み合わせのドリンク、和菓子などを自由な発想で提供。店内の壁には全面に北斎風の波模様、盆栽が飾られており外国人受けも良さそうだ。ゆったり寛げる雰囲気ではないのでテイクアウトがおすすめだ。

NAKAMURA TEA LIFE STORE

個人的には静岡のお茶にも頑張ってほしいなと思っていたところ、昨年蔵前に静岡県藤枝発の茶屋・ナカムラティーライフストアがオープンした。鮮やかな紫の暖簾が目を引くレトロな店内には、贈答に便利そうな和モダンのお洒落すぎるパッケージの茶葉たち。残念ながら茶房ではないので、試飲して茶葉を買うだけで我慢だ。最近は鹿児島や佐賀など九州の茶葉を多く見かけるが、それは九州には若くてやる気溢れる産地の農家さんが多いからだそうだ。もっと頑張れ静岡!

 

とにかく、今年は「私はどちらかというとお茶派です」と言っておこう。なぜなら和の心を持った知的な大人に見せてくれるはずだから。ファッション業界には器好きが多いが、今度は茶器にこだわる人も増えるのではないだろうか。ちなみに私は、東京茶寮さん一押しの透明急須(2018年Red Dot Award受賞)を買おうと思っている。みんなどんな茶器を選ぶのか、インスタチェックが楽しみだ。