〈噂の新店〉フレンチレストランの晴れがましさを存分に楽しめる期待の店

表参道のまい泉通りに登場した「レヴォル」は、昨年惜しまれつつ閉店した「キャリエ」の高木和也シェフが腕を振るうレストラン&ワインバー。気鋭のシェフの新天地での活躍ぶりをレポートします。

名店出身の強力コンビ

表参道駅から近くを通る、通称「まい泉通り」は、表参道と外苑西通りを結ぶ静かな通り。その一角に2018年3月21日オープンした「レヴォル」は、地下1階のワインバーと地下2階のダイニングから成る。オーナーは名店「シェ・イノ」出身のソムリエ細野博明氏、シェフは昨年11月まで渋谷の人気フレンチ「キャリエ」で活躍した高木和也氏だ。

通りに面した入口から階段で地下1階に降りると、そこはゆったりしたカウンターとテーブル席が広がるバーエリア。チャージは無料でラストオーダーは22時、ワイン1杯とおつまみを楽しむだけでもOKという、使い勝手のよい空間である。

地下2階のレストランは、接待や記念日にもふさわしい華やかな雰囲気。裏の厨房で高木シェフが作るのは、クラシックを再構築したモダンなフランス料理だ。幼少の頃から料理人を志していたという高木シェフが修業してきたのは、「オレキス」「レフェルヴェソンス」「ラ・フィネス」といった都内の一流フレンチレストラン。

名皿のエッセンスをオリジナルに取り入れる

コース仕立てのランチやディナーに登場する料理は、修業先で磨いた技と経験の結晶だ。たとえば7皿7500円のランチコースの前菜として登場する「フォア・グラの冷製」は、シェフいわく「レフェルヴェソンス」と「ラ・フィネス」で出していたフォア・グラ料理の“いいところどり”をしたものだとか。

 

ディナーのコースは10皿10,000円のおまかせ1種類。最初の3皿はアミューズで、そのうちの1皿は前店の「キャリエ」時代から作り続けている、パテ・ド・カンパーニュのチーズベーグルサンドだ。

モダンだけどクラシック、なここだけのコース料理

「レヴォル」のコースの面白さは、魚料理と肉料理の間にチーズが出されること。普通なら口直しが登場するようなタイミングで、たとえば薄く削られたミモレットチーズとフロマージュブランが出されるのだ。高木シェフいわく、「肉料理の前にチーズをお出しするのは、オーナーソムリエの細野の提案です。話題の“ロカボ”理論に基づき、肉料理の前に発酵食品であるチーズを食べることで消化を促そうという狙いです」。細野氏はワインだけでなくチーズのプロフェッショナルでもあるのだとか。

メインディッシュは、鴨のローストならソース・サルミ、ヒラスズキのパイ包み焼きならソース・ショロンと、クラシックなソースを添えるのが高木シェフのスタイル。「ヒラスズキのパイ包み焼き」は、フランス料理の神様と呼ばれた故ポール・ボキューズへのオマージュだ。ボキューズシェフのスペシャリテとして有名な「スズキのパイ包み焼き」は、ベアルネーズ・ソースにトマトピュレを加えた「ソース・ショロン」を有名にした料理としても歴史に刻まれる名作。これまで高木シェフが働いてきたのはポール・ボキューズの系譜に連なる店ではないが、伝統へのリスペクトとして作っているという。

 

一方、“パイ包み焼き”は、もともと高木シェフが好む調理法。しかし好きとはいえど、肉や魚をパイ生地で包んで焼くと具材と生地が接する面が生焼けになりやすく、底には水分がたまりやすいと言う。そんな難しい料理を敢えて何故?と尋ねれば、「こういう料理はレストランでしか食べられないので、お客様に喜んでいただけるから」とシェフ。

新鮮なヒラスズキとホタテのムースを包んだパイ生地は見事に均一に香ばしく焼かれ、まろやかな酸味のあるソース・ショロンと淡白な魚介の旨みが抜群の相性だ。

 

デザートの「ホワイトチョコレートのヴァシュラン仕立て」は、メレンゲを使ったフランスの伝統菓子を再構築したもの。原典はクラシックだが、柑橘のジュレのソースやココナッツオイルの冷たいパウダーが軽やかな印象を残す、モダンなデザートだ。

クラシックなエッセンスが随所に散りばめられた「レヴォル」のコースは、懐かしさと新しさが共存する独特のバランスが魅力。高木シェフの新天地での活躍に、今後もしかと注目したい。

 

撮影:松園多聞