【第3週のカレーとスパイス】恵比寿の人気間借りカレー店が世田谷で独立店舗をオープン!「RUBY MURRAY(ルビーマーレー)」

今回は2024年1月16日にオープンしたてほやほやの新店をご紹介します。東急世田谷線の世田谷駅と松陰神社前駅のちょうど間くらいに位置する松陰スクエアの2階にできた「RUBY MURRAY」です。

こちらのシェフは南インド料理の人気店「エリックサウス」に4年勤め、永田町の東京ガーデンテラス店の店長を任されたという経歴を持つ方。その後、独立に向けて退職するもコロナ禍に突入してしまったこともあって、まずは恵比寿にてRUBY MURRAYの名で間借りカレー店を営み、この度満を持して独立店舗をオープンしたという流れです。

ランチの「ターリーセット」1,590円は、ほうれん草キーマ、ビーフ、日替わりのフィッシュ、ポーク、バターチキンの中から2つ選んで注文します。色々とあるので通っても飽きなくて良いですね。

「ターリーセット」

今回はビーフとポークでお願いしました。まずポークを食べてみると、南インドはケララの料理であるマッパス(ココナッツベースのカレー)にも、ゴアの郷土料理ビンダルー(酢やスパイスで漬け込んだ肉を煮込んだカレー)にも近いと言いますか、その中間という以上にマッパスの作り方でビンダルーに仕上げたような非常に面白い仕上がり。

ポーク

トマトの酸味がしっかりと立ち、隠し味的に使ったココナッツとのバランスが見事で豚のうまみもグレイビーに染み渡り、ご飯とよく合います。

ビーフは南インド料理というわけではなくこちらのオリジナル。シャバッとした野菜の粒子感あるグレイビーは牛乳で煮込んだほろほろのビーフがスパイスによって見事にひとつになっていてこちらもまたご飯が進むカレーです。

ビーフ

ご飯はバスマティライスと日本米のブレンド。「さまざまな方に純粋にカレーを楽しんでもらいたい」というシェフの意図がしっかりと伝わってきます。

2種カレーの他にメニューにはダールとあったのですが、こちらも日替わりの豆をメインとした野菜カレーがつくようで、この日はオクラのクートゥでした。

クートゥ

それぞれそのまま食べて良し、クートゥは牛と豚どちらと混ぜても味が調和するので部分的に混ぜて食べるも良し。

ここを入り口に南インド料理へ深くハマるきっかけにもなりうる仕上がりで、流石は名店出身シェフだけあるなと納得。

「チャイ」

食後に「チャイ」400円も。こちらはマサラがしっかりと香り、エアブレンドされた本格派。おいしいカレーを食べた後のしめくくりに最高です。

夜には昼に無いカレーやその他料理も色々とあり、曜日限定でビリヤニも準備したいとのこと。そちらも楽しみです。

昼は陽光がしっかりと入る明るい店内。BGMはリラックスできるレゲエ。恵比寿時代の良さも、修業先であるエリックサウスの良さも感じさせつつ、新たなこの場所ならではの個性も既に見せられているのが素晴らしいと感じました。

世田谷エリアの方はもちろん、遠路はるばる行っても損のない新たな名店の誕生です。しっかりBM(ブックマーク)しておいてくださいね!

【第4週のカレーとスパイス】〜名古屋特別編〜

日本三大都市のひとつ名古屋。他のふたつである東京と大阪に比べるとカレーの名店の数が少なく、人口的には名古屋より少ない札幌や福岡と比べても思い浮かぶお店の数が減ると感じていたのですが、近年名古屋でもレベルの高いお店が少しずつ増えてきています。今回はその名古屋で注目の新店舗を2店ご紹介しましょう。

「HOTEL AUTHENTIC」

こちらは名古屋のセレブエリアとも呼ばれる場所に、2023年8月に開店したインド料理店。HOTELという言葉は南インドにおいては宿泊施設の他に飲食店という意味でも使われているのですが、こちらのHOTELもその意味。そしてオーセンティックとは本物、正統派という意味。この店名でこちらのお店のスタンスがうかがえます。

店内もインド現地の雰囲気にかなり近く、手洗い場が用意されているのも手食をすることが多いインド料理店ならでは。シェフは日本、そしてインド現地でさまざまなインド料理を食べ歩き、スパイス料理やインド料理に携わっていた方だけあり、本物のインド料理を理解しています。

メニューは日替わりで、SNSを参照。昼は売切次第終了、夜は予約制となります。今回は夜に予約して行きました。

写真左上から反時計回りに「レモンライス」「マトンキーマ」「プロウンカレー」「ソナマスリライス」「ブリンジャルヴェプドゥ」、中央が「トマトパップー」

食べたいメニューも予約の際に伝えるのですが、この日のカレーである「プロウンカレー」1,300円、「マトンキーマ」1,300円、「トマトパップー」700円、「ブリンジャルヴェプドゥ」800円をすべてひとつずつ予約。主食はお店で追加注文。2人で行ったので「ソナマスリライス」400円と「レモンライス」550円をひとつずつお願いしました。

この日はアーンドラプラデシュ地方の料理というテーマだったのですが、まさにアーンドラらしいスパイス感の料理の数々。プロウンカリーは小海老を使用することによって海老のうまみがしっかりとスパイスで引き立てられた仕上がり。マトンキーマはにんにくとチリのパンチが心地よく、マトンの味を存分に堪能できるもの。どちらも最高のおいしさであり、まさにインド現地の味。日本人でこれを作れるのは相当勉強したのだろうということが伝わってきました。

トマトパップー(アーンドラ地方のトマト豆カレー)やブリンジャルヴェプドゥ(茄子のマサラ炒め)も単体でおいしく、メインのカレーと合わせても機能する名脇役ともなり、ご飯もシンプルなソナマスリと酸味が爽やかなレモンライスでそれぞれカレーの味の感じ方にも変化が出て、すべて頼んで正解でした。

インドを旅したような気分になれる味と雰囲気。これはまた是非行きたいお店です。名古屋のみならず、全国のインド料理の中でも上位に食い込むレベルの高さ。わざわざ名古屋に行く意味ができました。

「ANDY 那古野店」

こちらは間借りカレーからスタートし、名古屋PARCO出店を経て栄で既に人気店となっているスパイスカレーのお店なのですが、国際センター駅近くでも2023年12月から新たなお店をスタートさせました。

名古屋駅からも10分少々でたどり着く立地。ランチタイムは早くも満席の人気でした。

「スパイス砂肝」をトッピングした「2種あいがけ」

「2種あいがけ」1,500円に「スパイス砂肝」200円をトッピングしてオーダー。2種のカレーは生食用のフレッシュな海老を使用した海老とあさりのココナッツカレーと、ブルーベリーのライタをかけた牛すじカレーを選択。

ココナッツカレーは魚介のうまみがグレイビーにしみ渡り、フルーツの酸味が程よく調和するのが楽しいです。

牛すじカレーは牛肉のうまみとブルーベリーの甘やかでほのかな酸味がやはりグレイビーと調和。どちらもフルーツの使い方が見事です。

そしてトッピングしたスパイス砂肝は予想よりかなり大ぶり。それでいて実に軟らかく、低温調理のコンフィ的な食感が気に入りました。こちらのトッピングは肉好きならマストです。副菜も色とりどりで見目鮮やかでヘルシー。女性の一人客も多かったのですが、それも納得の一皿でした。

シェフは特にカレー専門店での修業経験はなく、ネット上で探したレシピを元に独学でカレーを作り始めたそうですが、それでこの味を出せるのはセンスが良いということ。カレー界にはときおりこのような方が出てくるので目が離せません。

「修業経験のない素人ですが自由にカレーを作っていきたいです」と語ってくれたように、独学ならではの型にとらわれない自由な発想で今後も新しいカレーを生み出してくれそうなお店です。

※価格はすべて税込

撮影:カレーおじさん

文:カレーおじさん、食べログマガジン編集部