これぞ「うなぎ尽くし」! コース内容をご紹介

コースは22,000円の1種のみ。「和食のコースでうなぎを出すお店はありますが、コースを通してうなぎを味わう店にしたかった」という荻原さん。すべての料理にうなぎを使い、野菜の炊きものもうなぎの出汁で炊き上げている。これがうなぎとは思えない雑味のないきれいな味わいなのだが、そのわけは特別な下処理の方法にあった。うなぎの骨をきれいに血抜きし、硬水のコントレックスでよく洗うのだ。硬水を使うのは、軟水と比べて旨みが逃げないためだという。

「うなぎの出汁で炊いた聖護院かぶと海老芋」

串に刺してパリッと焼き上げるひれ焼きは、うざく仕立てて登場する。季節によって野菜は変わるが、この日はトマト、きゅうり、菊花を散らして、食欲をそそるとろりとした甘酢でまとめていた。

「ひれ焼きのうざく仕立て」

「うなぎと卵の食感をそろえたいんです」という、う巻きも絶品。ふんわりと蒸したうなぎを1尾まるごと卵で巻いているので、たっぷりのうなぎを味わうメニューだ。卵もうなぎもふわふわの食感がたまらない。

肥育期間が長いという共水うなぎを使った「う巻き」

お酒に合わせたくなる! 食感の良い白焼き

たれを使わない白焼きには、この日は脂が多くのっている浜名湖産を使った。焼き上げるうちに、じわじわと身から染み出る自分の脂で揚がるようなイメージで焼けていく。

皮目にしっかりと火を入れていく

そこで皮は揚げた時と同じようにカリッ、バリッとワイルドな食感に。かぶりつけば、身はふんわり、しっとりというコントラストに驚かされる。

「白焼き」。岩塩と自家製の肝塩を添えて

タレの香りに食欲が止まらない!

「参宮橋 あさや」のタレは、火入れをしない生醤油、旨みの濃い赤酒、本格みりんなど高級料亭でも使われる、自然な製法の伝統的な調味料だけを使っている。黒糖と白ざらめをブレンドして甘みを加えているから、丸い甘みが広がる。くどさは微塵もなく、すっきりしてキレのあるタレはうなぎを存分に引き立てるのだ。

地焼きのうなぎは、皮に食感を出すためにタレに沈めずにタレをかける
うなぎはマッサージするように身をほぐしながら焼いていく

メインのうな重は2種類の焼き方を楽しめる!

主役のうな重は、関東風の蒸し焼きと関西風の地焼きの両方を楽しめる合盛り。蒸し焼きは身がふんわりとした食感で口どけがよい。一方地焼きは、皮目をパリッと仕上げ、軟らかい身や脂とのコントラストを味わえる。産地の違ううなぎを使っているので、その特徴も食べ比べられるのも楽しい。

正式なふた付きの専用のお重で提供する

「コースの最後なので、1種類では飽きるかもしれないなと思って、思い切って2種類を食べていただくことにしました」と荻原さんは笑う。最後まで手間を惜しまず、ゲストへのサービス精神にあふれているのだ。

「うな重」

「研究できることはすべてし尽くしたいんです」と話す荻原さん。文献をあさることもあれば、周囲の先輩料理人から知識を得ることも多いという。科学的な裏付けなども駆使し、常に今以上を目指す気迫がすごい。それでいて親しみやすく、謙虚な人柄も愛される理由だ。

すでに予約困難といわれるうなぎの人気店になりつつあるが、今後もどのように進化していくのかが楽しみ。うなぎ料理の未来を切り開く新店の登場だ。

※価格はすべて税込

文:岡本ジュン、食べログマガジン編集部 写真:菊池陽一郎