【噂の新店】「蓮香楼(れんかろう) 銀座店」

中国・広州で1889年に創業し、伝統的な食文化を守るための「国家認定印」を国から授与された広東料理店「蓮香楼」。そんな「蓮香楼」が2023年9月29日、初の海外店舗として、銀座2丁目のビルの7階にオープンした。

撮影:中森りほ

本国の店舗とライセンス契約を結び日本で運営を行うのは、雲南料理の「御膳房」や四川料理の「百菜百味」、湖北省の郷土料理を展開する「珞珈壹号」や「168点心飲茶」などさまざまな中国料理レストランを展開する東湖株式会社だ。

かむほどにスパイス広がる! お酒が進む広東式の焼き物

「蓮香楼」では本家の味を受け継ぎつつ、日本の食材も活かし、中国料理の真髄を和の装いにアレンジした「華魂和装」の精神で料理を提供する。料理長を務めるのは、広東料理歴30年以上で広州にある「蓮香楼」本店でも学んだ華金兵氏。このほかにも台湾出身の点心師や、焼物師など東湖グループで研鑽を積んだ熟練の職人たちが腕を振るう。

「広東式ダック」

乾杯酒とともに味わいたい焼き物も、広東式の調理法が光る。例えば中華の代表料理である北京ダックは、一般的に焼いたアヒルの皮だけをカットし、カオヤーピンという薄い小麦生地に甜麺醤やキュウリ、ネギなどと共に包んで食べる。しかし同店の「広東式ダック」2,800円はあらかじめ丸鴨の中にネギやショウガ、八角、大葉、乾燥させた香草などを詰めて焼き上げるため、しっかり中まで味が付く。そのまま食べるか、特製タレや梅醬をつけて食べる。

「広東式腸詰」

「広東式腸詰」1,800円も「蓮香楼」オリジナルレシピによるもの。山梨県のブランド豚「富士ヶ嶺ポーク」の豚バラを多めに使い、五香粉をはじめとした数十種類の調味料で味付けをしている。ジュワッと豚脂が口の中に広がり、じんわりと甘い味わいの腸詰は白酒や紹興酒など強めのお酒を誘う。

「香港チャーシュー」

火鉢の上に鉄板をのせて提供するという、オリジナルのプレゼンテーションが面白い「香港チャーシュー」2,200円。豚バラを水あめや醤油、酢などを使ったタレに漬け込み、270℃で1時間ほど火入れしている。外側はキャラメリゼされたかのようなカリッと香ばしい甘塩っぱさながら、中はホロッとほどけるやわらかさで、食感のコントラストが楽しい。

香辛料がビールを誘う「車海老の広東スパイシー炒め」や「潮州揚げ豆腐」

ビール党なら是非楽しんでほしいのが、漁師料理である「避風塘(ベイフォントン)」をアレンジした「車海老の広東スパイシー炒め」2,800円と「潮州揚げ豆腐」1,280円だ。

「車海老の広東スパイシー炒め」

「車海老の広東スパイシー炒め」は、ニンニク、ショウガに加え、黒豆に塩や麹、酵母などを加え発酵させて作る中華調味料の「豆豉(トウチ)」など複数の調味料を、パン粉とともにごま油を使い炒めた料理だ。先に調味料を鍋に入れて火入れして香りを立たせてから、車海老やネギ、モヤシを加える。食べる前から食欲をそそる香り高さで、ザクザクとスパイシーなパン粉と車海老の香ばしいうまみに、ビールが止まらない。

「潮州揚げ豆腐」

そして豆腐という名前とは裏腹にビール泥棒なのが「潮州揚げ豆腐」だ。絹豆腐に塩、胡椒、醤油や白ゴマなど複数の調味料を、片栗粉と共にまぶしてカラリと揚げてある。衣はフライドチキンのようなパンチのある味わいで、外はガリッと香ばしく、中の豆腐がフワッとなめらかにとろけていく。

ホタテ丸ごと焼売に、広東のソウルフードヌードル「乾炒牛河」も必食

広東料理といえばやはり点心も見逃せない。「海老餃子(2個)」800円、「小籠包(2個)」780円など定番点心をはじめ、ポルチーニ茸を使った「ポルチーニ焼売(2個)」800円など変わり種の点心もそろう。

「ホタテ焼売」

特に「ホタテ焼売(2個)」1,080円は、下にプリプリの海老、その上にホタテが丸々一つ入り、ポルチーニで作った佃煮をトッピングし、ほうれん草を練り込んだ緑色の生地で包んでいる面白い一品だ。

「乾炒牛河(牛肉のライスヌードルソース炒め)」

広東ならではの料理を食べたいなら、米粉で作る幅広麺と、牛肉を炒めた広東のソウルフード「乾炒牛河(牛肉のライスヌードルソース炒め)」2,180円は必食だ。腸粉を作るように大きな鉄板に米粉を溶いた汁を流し入れ、きしめんのように幅広にカットした自家製麺を使用する。牛肉のほか、ニラや玉ねぎ、もやし、ゴマと共に米粉麺をオイスターソースとごま油で炒めたのが「乾炒牛河」だ。モッチモチの米粉麺に牛肉のうまみや、オイスターソースの味がしっかり染み込んだ広東風の焼きそばは、後味の余韻が長い。

蓮の実餡の月餅発祥店! 広州土産の定番と言われる「広式大月餅」も要チェック

「広式大月餅」

「蓮香楼」を語る上で欠かせないのが、月餅だ。現在中国では定番となった蓮の実餡を誕生させた名店として名高い。広東ならではのやわらかな皮の月餅は、広州を訪れた人のお土産の定番で、中国の中秋節にも欠かせないという。「広式大月餅(2個)」1,680円は、手のひらサイズと大きい上、かなりずっしりと重く、蓮の実の優しい甘さとねっとり感が魅惑的だ。もちろん胡桃入りのこし餡月餅もある。

日本で人気の点心だけにとどまらず、焼き物、炒め物、煮物まで幅広くディープな広東料理の世界を見せてくれる「蓮香楼」。点心ランチコース2,880円〜(オープン期間限定)、ディナーコース6,000円〜と手が届きやすい価格設定のほか、個室もあるため、プライベートだけでなく、会食利用にも良さそうだ。

※価格はすべて税込

写真:お店から

取材:中森りほ

文:中森りほ、食べログマガジン編集部