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【噂の新店】「Galerie ASAHINA」
「ミシュランガイド東京」で2022年から2年連続で2つ星を獲得する「アサヒナガストロノーム」の朝比奈悟シェフがプロデュースした、セイボリーコレクションレストラン「Galerie ASAHINA」(以下、ギャラリーアサヒナ)が2023年9月5日、六本木に誕生した。朝比奈シェフ監修のディフュージョンレストランとしては国内初となる。
レストランは「ラ ブリアンツァ」や「鮨 すきやばし 次郎」がある「六本木ヒルズけやき坂通り」のレジデンス棟3階。駅前の喧騒から離れ、緑が多く穏やかで上質な時間が流れるエリアだ。
一面の窓からやわらかな陽光が差し込む「ギャラリーアサヒナ」は、リゾートホテルのクラブラウンジをイメージしてデザインされている。インテリアは周辺の木々の緑が続くかのようなフォレストグリーンと高貴なシルバーのシンボルカラーを用い、月明かりのようなペンダントライトが店内を照らす。モダン過ぎずシンプル過ぎない上質な空間は全16席に制限され、ソファー席がゆったりと配置されている。
各テーブルには「アサヒナガストロノーム」でもカトラリーとして採用されている、フランス・クリストフル社のジャルダン・エデンの銀器や、ベルナルド社製の器など高級感あるセッティングがなされ、グラン・メゾンのような雰囲気を醸す。
店名のギャラリーには「朝比奈シェフの卓越した料理哲学や感性、芸術的な料理を、まるで絵画や美術品のように気軽に鑑賞する場所にしたい」という意味が込められている。正統派のフランス料理の世界観を、唯一無二のカジュアルフレンチのコースに仕立てることで、さらに多くの世代の方に楽しんでほしいという朝比奈シェフの思いからオープンに至った。
そんな「ギャラリーアサヒナ」の料理長を任されたのは、約18年フランスのレストランで経験を積んだ高木薫シェフ。パリ2区の「レストラン リザー」料理長をはじめ、パリ8区の「ホテル ル ブリストル」部門シェフや「レストラン ラ ブランチャ」料理長、「レストラン カルトブランシュ」料理長などグランメゾンから大衆店まで幅広い経験を積んでいる。
精巧に作られたアート作品のようなセイボリーコレクション
「ギャラリーアサヒナ」では、ホテルのクラブラウンジのように12・15・19時の1日3回、セイボリーを中心としたプレゼンテーションが行われる。コースは、ヴィヴィッドな野菜の味わいが全身に行き渡る、有機野菜のコールドプレスジュースからスタート。そして「アサヒナガストロノーム」の象徴として有名な、アミューズを更に昇華させたセイボリー6種が登場する。ドライアイスの幻想的な白い煙の上に広がる、カラフルで見目麗しいセイボリーたちに心が浮き立つはずだ。
スライスしたラディッシュを塩で洗い、表面を柔らかくしてからバラのように織り上げた「Salted Sea Urchin」は、中に塩ウニが秘められている。口に含むと潮の香りを纏ったウニを感じ、シャキシャキとみずみずしいラディッシュを食んでいくと、ウニの旨みの後にラディッシュの辛さが清涼感となって訪れる。
スナップエンドウの縁取りが目を引く「Foie Gras」は、自家製タルトにスナップエンドウのクーリを敷き詰め、フォアグラのムースを赤ポルト酒でコーティングし、ピーテンドリルと金箔をトッピングした一品。赤ポルト酒のコクのある甘さとフォアグラの濃厚さに、ボイルしたスナップエンドウのホクホクとした青い甘さがアクセントになり、シャンパンを誘う。
「Snow Crab」は、マスタードとマヨネーズ、レモン汁で和えたズワイガニをこんもり雪山のように盛り付け、メイプルシロップとビネガーでマリネしたラビオリ形の紅芯大根を傘のように被せている。油の重たさがなく軽やかながら、ズワイガニのしっかりとした味わいが口の中で解けていく。
トナカイのツノのようなチュイールがトッピングされた「Marbling Cherry Meat」は、リーフ形のカリカリと香ばしいトーストに、熊本県産の馬肉のタルタルがのっている。馬肉のタルタルは、ガルムという魚醤やリーペリンソース、ケチャップなどを使ったオリジナルソースとシブレットで和えてあり、後味の余韻が長い。
白とセピア色のコントラストが見事な「Small Shrimp」、カネロニのような土台は、一般的な白いパスタとイカ墨を練り込んだ黒いパスタを、交互に組み合わせることで仕立てている。中には手長エビのすり身のムースを潜め、イカ墨のチュイール、その上にボイルしたブラックタイガーをトッピングした。
その名の通り、たっぷりのキャビアが盛られた「Caviar」は、ジャガイモをクロワッサンのように見立てているのが面白い。蒸して円形にくり抜いたインカのめざめの上に、メークインのピューレやエシャロットのビネグレットをのせ、三角形に薄くスライスしたジャガイモでくるみ、表面をバーナーで炙り焦げ目をつけている。緻密な造形美、そして計算し尽くされた味わいのセイボリーたちに歓待され、コース前半から口も心も満たされていく。
断層美が光るフリヴォリテや、カプチーノをまとった牛頬肉の赤ワイン煮込み
アミューズに続いて登場する「フリヴォリテ」という名のサンドウィッチは、その色合いと断層美で私たちを魅了する。食パンを一度焼いて薄く延ばして、和からしとバターを塗り込み、トマトのコンフィ、グリュイエールチーズ、オゼイユという酸味のあるハーブ、パイ、サワークリーム、マリネサーモンなどをミルフィーユのように重ね、最後にケッパーをトッピングした一品。どの食材も同じ厚さ、サイズに重ねることが求められ、かなりの手間と技術が必要であることがうかがえる。
端正なショートケーキのようにセロファンで包まれた「フリヴォリテ」は、エクレアのようにワンハンドで食べるのがおすすめとのこと。一口の中でみっちりとした食感のパン、グリュイエールチーズのコクや、オゼイユの爽やかさ、トマトのコンフィの甘酸っぱさなどが気品あるハーモニーを奏で、ついついワイングラスに手が伸びてしまう。パンがプレスされているため小ぶりにも見えるが、意外と重量感があり食べ応えがあるのもうれしい。
この日の「温かいココット鍋の肉料理」では、クラシカルなフレンチの技法で作られた牛頬肉の赤ワイン煮込みに、カプチーノ仕立てのキノコソースをかけた現代的なプレゼンテーションの料理が登場した。国産牛頬肉を半日マリネし、4時間ほどフランス産の赤ワインで煮込み、最後にマッシュルームのソースで作ったフワフワのカプチーノで覆う。
マッシュルームの風味やまろやかさが引き立ったカプチーノは、フレンチの王道とも言える牛頬肉の赤ワイン煮込みの良さがしっかりと感じられながらも、一味違った姿を見せてくれる。
「アサヒナガストロノーム」のスペシャリテとも言うべきデザートも!
そしてこのコースで特筆すべきなのは「アサヒナガストロノーム」のスペシャリテとも言うべき「ポム・ダムール」をメインスイーツとして味わえることだ。「アサヒナガストロノーム」と同じくパティシエの岡田和馬シェフが作り上げている。
リンゴをキャラメリゼしたのち、リンゴ果汁を加えて食感が残るようシナモンやパンデピスなどとともに強火で煮込んだコンポートを、マスカルポーネを使ったムースと合わせ、周りをヴァローナのホワイトチョコレートでコーティング。表面がマットな質感になるよう、仕上げにカカオバターをスプレーガンで吹きかけ、ヘタの飴細工を上部に添え、真っ白な雪を被ったかのような純白のリンゴに仕立ててある。リンゴのコンポートはビターでスパイシーでありながら、紅玉と王林の2種類を使うことで、さまざまな角度の甘さと酸味をもたらす。そして、クリーミーなマスカルポーネムースと甘美にとろけ合う。隣の丸いバニラアイスとともにいただくことで、さらに味わいが変化する。
コースではこのほかにもミニャルディーズ、食後のフレッシュハーブティーやコーヒーも付く。ちなみにフレッシュハーブティーは「アサヒナガストロノーム」でも提供されており、スペアミント、パイナップルミント、ペパーミント、レモングラス、スイートマジョラム、ローズマリーなどを使ったオリジナルブレンドだ。
3カ月の頻度で内容が変化するというコースは1人9,350円、シャンパーニュや有機ワイン、ビールなどのアルコールを含めたフリーフロー付きで14,300円と手が届きやすい。
「アサヒナガストロノーム」のエッセンスを取り入れながら、新たなプレゼンテーションへと昇華された「ギャラリー アサヒナ」。芸術作品を生み出すように、丹念に作られたセイボリーコレクションをぜひ堪能してほしい。
※価格は税込、サービス料別、支払いはキャッシュレス決済のみ