大阪・堺筋本町は船場と呼ばれ、大阪商人文化の中心地。今もオフィスビルが多く立ち並ぶビルの1階に、カジュアルな雰囲気の中国料理店がオープンした。

教えてくれる人

門上武司

1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会副理事長、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)など。年間外食は1,000食に及ぶ。

中国料理をよりなじみやすく

オーナーの船渡兼市さんは岐阜県出身。料理人を志し、大阪の辻調理師専門学校に入る。その後、同校で講師として勤め、香港やフランスでも経験を重ねたという。20年経った2023年、満を持しての独立だ。「中国料理って結構深く、あまり知られていない部分も多いんです。伝統料理を含め、色々な中国料理を知って、もっと中華を好きになって欲しいですね!古い料理そのままだとガチガチになってしまうので、少しアレンジして提供しています。香港でも少し働いていたこともあり、僕が大好きな広東料理と、同じく辻調理師専門学校で講師を勤め、数々のレストランで経験を積んだ富永料理長が得意な四川料理がベースとなっています」(船渡さん)。

耳なじみのない「SAVATOMY(サヴァトミー)」という店名の由来について聞いてみた。「フランスに研修に行った際に、フランス人たちが『サヴァ!サヴァ!』と朝昼晩ともにフランクに挨拶してくれて、なんて素敵な言葉と気遣いの文化なんだと思ったんです。お客様とスタッフの関係もフランクであり気遣いのできる関係にしたいなと。店は3人で始めたんですけど、料理長とサービス担当者のあだ名が、2人ともトミー。二つを合わせて『SAVATOMY(サヴァトミー)』にしました。安易ですね(笑)」(船渡さん)

左からスタッフの住田隆羽さん、店主の船渡さん、料理長の富永洋之さん、サービス担当の久保田瞳さん。「今は毎日が学園祭みたいです」(船渡さん)

現代風に昇華させた古典料理の数々

夜の料理はアラカルトのみ。メニューを見れば「伝助穴子の中華ハーブフリット」や「北海道産よだれ牡蠣」など、なじみがありそうでない、魅力的な品々が30種ほど並ぶ。

まずは、名物「高知鰹の塩炙り 紅ソース」。鰹の赤×ソースの赤と、見た目もインパクト大だが、鰹のうまみにスパイシーかつ甘辛い紅ソースが相性よく、やみつきになる味わいだ。紅ソースだけでも酒が進むこと間違いなしのおいしさ。「紅ソースは四川省の古いソースをベースに、少々手を入れています。鰹は新鮮なものを使うのは当然ですが、香りが大切なので必ず提供の直前に塩炙りをしています」(船渡さん)

「高知鰹の塩炙り 紅ソース」1,650円

「バルサミコ酢とヴィンコットの黒酢豚」は、サクサクの衣をまとったやわらかく甘い宮崎県産きなこ豚バラ肉に、香り高い黒酢ソースが絡みつく。ソースは黒酢だけでなく、バルサミコ酢やイタリアの完熟ブドウをぎゅっと煮詰めてオーク樽で熟成させたヴィンコットを用い、コクや香りをプラス。深く複雑な味わいが印象的だ。

バルサミコ酢とヴィンコットの黒酢豚(1,320円)