食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに、東京の“料理がおいしい酒場”を教えてもらう連載! 第18回は、東京の下町・森下にある人気焼き鳥店「BLESS」のおいしいポイントを教えてもらいます。

【東京メシうま酒場 vol.18】「BLESS」

下町・森下といえば、老舗のモツ焼き屋や焼き鳥屋も多い、居酒屋激戦区。 そんな土地で、2020年にオープンして瞬く間に予約の取れない人気店となり「食べログ 焼き鳥 EAST 百名店」にも選ばれているのが「BLESS」。

焼き鳥屋さんらしからぬブルックリン調のオシャレな店内は、アメリカンダイナーだったお店を居抜きで借りたからとのことですが、下町にしてダイナー調の焼き鳥屋さんというギャップがまた、食べる前からなんともワクワクします。

「ヴィリエラ トラディション・ブリュット」

お酒の品ぞろえも良く、ワインは4杯楽しめる「ワインセット」3,300円がお得ということで、まずはスパークリングから。「ヴィリエラ トラディション・ブリュット」は辛口で、最初の一杯にピッタリ。

いきなり突き出しとして、ミニトマト串が!

焼き鳥屋さんで、突き出しに野菜串という遊び心が素敵ですよね。しっかりつけた焦げ目が香ばしく、かめばとにかく甘くてジューシー。さっぱりといただけます。あえて串メニュー内ではなく、スターターとして出してくる意味合いが分かります。

「生甘海老のマルサラ酒漬け」

前菜でお願いしたのは「生甘海老のマルサラ酒漬け」。

マルサラ酒は、ポートワインやシェリー酒と同じ種類の、アルコール度数高めのワイン。生の甘海老をマルサラ酒に漬けたこの一品は、言ってみれば洋風酔っ払い海老といった感じ。

殻をむいてかぶりつけば、ねっとりとろっとした甘海老の身が甘くて最高! 頭の方もちゅるちゅると吸うと、マルサラ酒に良い具合に漬かった海老の味噌が濃厚な旨味で、これまたワインが合う最高のツマミ。

「テルゾーニ ソルシ・ディカント フェルモ」

というわけで、ワインもどんどん行きましょう。

2杯目はオレンジワイン「テルゾーニ ソルシ・ディカント フェルモ」。オレンジワイン特有の苦味が少なく、フルーティー。この流れで、いよいよめくるめく焼き鳥ワールドのスタートです。

焼き鳥は1名3本の「基本セット」1,500円を頼んだ上で、追加は1本500円というシステム。

本日最初の1本はつくね。これがね、もう信じられないくらいフワッフワなんです! といって、単に柔らかいというわけではなく、外は香ばしく焼かれ、中はしっかりと旨味を閉じ込めつつもフワッフワの食感。これ、ほんと理想のつくねです。

2本目は丸ハツ。

鶏のハツを開かずに丸のまま焼いた一本。ともすれば硬くなってしまうハツを、コリッとした歯応えは生かしつつ、中はしっとりとレア感を残した、見事な火入れ。 一本一本のポーションが、小さすぎず大きすぎずで、ちょうどいい食べ応えなのも見事です。

「ブレッド&バター」

ここらでワインもどっしりした味わいの方向へ移行。

「ブレッド&バター」は、白ワインでありながら、その名の通りバターのように濃厚な香りが特徴。焼き鳥の旨味をしっかりと受け止めてくれそうな一杯です。

かしわ

基本セット最後の1本は、かしわ。

外の皮は見事にパリッと焼かれ、身はしっとりとして肉汁があふれ出すジューシーな焼き加減。まさに焼き鳥の理想形と言える一本。この1本を食べるために森下に通ってもいい!!と思えるくらい、完璧な仕上がりです。

今回は初訪問だし基本の3本でいいかと思っていたのですが(3本なのに満足度がすごい!)、あまりのおいしさに追加できる串も注文。

「チートラ カローソ」

追加串に合わせて、ワインも赤へ。「チートラ カローソ」は、どっしりとした飲み口で、旨味の強い焼き鳥に負けない風味があります。

追加1本目は希少部位と言われる、ふりそで。

皮の脂身と、胸肉寄りのあっさりとした肉の食感を楽しめます。そして何よりも、どの串も塩加減が絶妙で、何本食べても1口目の感動がすごいのです。

追加2本目は手羽先。

これまた皮の火の入れ方が見るからに見事。少しの焦げ目と、パリッとおいしそうな焼き目。

そして身は低温調理のようなしっとり感。骨からの身ばなれもよく、手羽先もプロの手にかかるとこんなに繊細でおいしいご馳走になるんだ!という感じ。

追加最後の1本は砂肝。

コリコリの食感が魅力の砂肝ですが、こちらの砂肝はそれだけじゃない! コリコリッとしつつも、身が実にしっとりしているのです。あっさりとしていて、最後の1本としても最適。

大満足の基本3本+追加3本の串尽くしでした!

「ンドゥイヤのアラビアータ」

こちらは焼き鳥×イタリアンで有名なお店なので、締めはパスタを!(こういう遊びを楽しめるのも魅力です)

おすすめのピチ(極太パスタ)を使った「ンドゥイヤのアラビアータ」1,700円は、岡山の老舗製麺所・冨士麺ず工房の生パスタを使用。

中華麺を製造している工房の生パスタというだけあって、極太の麺は確かに極太ラーメンか讃岐うどんのような圧倒的な存在感。この麺をあえてイタリアンの基本中の基本、アラビアータで食べさせてくれるというところに、またワクワクします。

見た目以上にドッシリとした重量感。モチモチのかみ応えの麺のおいしさもすごいですが、その麺に絡むソースがやっぱり最高。

しっかりと油を利かせ、ガーリックの香ばしい香りも力強いのですが、塩加減は抑えめで、トマトの酸味がアクセントになっています。ワイルドなのに締めにスル〜と食べられてしまう、絶妙なおいしさ。

下町・森下のオシャレな空間で食べる最高の焼き鳥と、これまたセンス爆発の前菜にパスタと極上のワイン。予約困難もうなずける、至福の名店でした。

※価格はすべて税込

撮影:GENIUS AT WORK

取材:小宮山雄飛

文:小宮山雄飛、食べログマガジン編集部