〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

注目のビストロ「bistro IZUMY」。暑い季節に食べたい素麺の“冷製ボンゴレ・ビアンコ”を紹介します。

小寺慶子

肉を糧に生きる肉食系ライターとして、さまざまなレストラン誌やカルチャー誌などに執筆。強靭な胃袋と持ち前の食いしん坊根性を武器に国内外の食べ歩きに励む。趣味はひとり焼肉と肉旅(ミートリップ)、酒場で食べ物回文を考えること。「イカも好き、鱚もかい?」

注目度急上昇中のグルメタウンにオープンした創意あふれるビストロ

東京の私鉄沿線の中でも、いまもっとも勢いのあるエリアといえば幡ヶ谷。駅直結のややディープな幡ヶ谷ゴールデンセンター地下商店街や100店舗もの店が立ち並ぶ幡ヶ谷六号通り商店街は、まさに食いしん坊のパラダイス。とくにここ数年はナチュラルワインを楽しむことができる良店が続々とオープンしており、京王線が誇る“一大グルメタウン”として注目を集めている。

その中でも食べ慣れた大人の心を惹きつけているのが、今年、甲州街道沿いにオープンした「bistro IZUMY」だ。

幡ヶ谷駅とお隣の笹塚駅からそれぞれ徒歩6分。甲州街道沿いでひときわ洒落たオーラを放つ。その佇まいに足を止める通行人も多い

カウンターとテーブル席のみの小体な空間で腕を振るうのは、店主の泉 謙介さん。渋谷で人気を集めたワインバー「シノワ 渋谷店」で働き、26歳のとき単身渡豪。その自由な空気感に魅せられて、シドニーのレストランやパブで5年働いたという“異色の経歴”の持ち主だ。店はシンプルなつくりだが、メニューには思わず前のめりになる料理が並び、いい意味でのギャップに好奇心がかきたてられる。

カジュアルで居心地のいい空間。常連客はカウンターを指定する人も多いそう。ひとりでもゆっくりと料理とワインを楽しむことができると評判
 

小寺さん

肩の力を抜いて料理を楽しめる店が多い幡ヶ谷の中でもとりわけゆるやかなムード。泉さんのフラットな接客にも心が休まります。

おいしさと自由さを両立させた料理を作る、シェフの経歴

シェフの泉 謙介さんは当時、オーストラリアで爆発的な人気を誇ったファインダイニングで働くことを夢見て渡豪。「残念ながら、そのときは言葉の壁もあって門前払い(笑)。でも街角のパブからシェフハット(オーストラリア版のお墨付きレストラン)まで幅広く働くことができたのはいい経験になりました」と話す。

オーストラリア・シドニーの飲食店で5年働き、帰国後は神泉の「遠藤利三郎商店」へ。今年3月に自身の店をオープン

移民国家のオーストラリアではさまざまな文化が自由に交錯していて、食の分野でもまだまだ伸びしろがあると感じた泉さん。ワインにクラフトビール、コーヒーやカフェ文化も盛り上がりを見せており「伝統を重んじるスタイルもいいけれど、性分的においしさと自由さを両立した料理を作ることにやりがいを感じた」という。