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〈これが推し麺! 〉
ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。
今回訪れたのは、食べロググルメ著名人・山本憲資さんが教えてくれた五反田の「彬龍華 66」。伝統を守りつつ、バージョンアップした「担々麺」を紹介する。
教えてくれる人
山本 憲資
Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。
五反田の川沿いに新しくオープンした、肉中華の注目店へ!
JR山手線と都営浅草線、東急池上線の3線が乗り入れる五反田。ちょっとディープな“大人の街”の雰囲気も残しながら、数年前からベンチャー・スタートアップ企業が多く集まる経済活性エリアとしての認知度を高めている。
土地の多様性をあらわすように、飲食店もいい意味でクセのある個性派揃い。老舗の酒場から予約困難店まで猛者がひしめく五反田でひと旗あげるのは容易ではないが、そのぶん“付加価値”のある店が多いのもこの街の特徴だ。
そのなかで、いま食通のあいだで話題を集めているのが「彬龍華 66」。五反田界隈をはじめ、都内でも圧倒的知名度を誇る「ヤザワミート」が手がける肉中華、というだけでもニュース性は十分だが、かつて美食好きを唸らせた“日本で一番有名な裏メニュー”が味わえる、と聞けばさらに興味がそそられる。
グループ客で賑わう店も多い五反田エリアのなかで、どちらかといえばシックな雰囲気。「ヤザワミート」初の中国料理業態とあって、アラカルトはもちろんコースもゆっくりと楽しんでほしいと、インテリアやテーブルの配置も大人が落ち着く設えに。奥の個室はビジネス会食のニーズが高いというのもうなずける。
最近は大衆から高級、町にガチと東京の中国料理シーンの多様化がどんどん進んでいるが「彬龍華 66」では、広東料理をベースにしたオリジナリティのある中国料理を提供。香港に多く見られる鮮魚レストランのように、ゲストが食材をセレクトし、料理をセミオーダーすることもできる。厳選した黒毛和牛が自慢の「ヤザワミート」の直営とあって、あらゆる部位を好きな調理法で注文できるのも魅力だ。
熟練の料理長と「ヤザワミート」の出会いが、あの“元祖の味”をバージョンアップさせた!
和牛を使った中国料理とくれば肉好きの心をときめかせるのは必然だが、この店を訪れるもうひとつの楽しみが、かつて「日本一有名な裏メニュー」と呼ばれた伝説の麺料理。総料理長の中里 卓さんは都内ホテルをはじめ、さまざまな中国料理の店を渡り歩いた大ベテラン。そして、日本の中国料理に革新をもたらした“仕掛け人”でもある。いまでこそ全国の中国料理店で見かけるが、実は、中里さんはくるみを使ったマイルドな担々麺を考案した張本人。
中華の名匠として知られる陳 啓明氏と同じ厨房で働いていた30年前、陳氏がつくる豆板醤の上澄みとくるみを使ったスープを合わせた担々麺を思いつき、アメリカのウォールナッツ•コンテストでグランプリを受賞した。
「陳さんの自家製ラー油がなければ、このアイディアが形になることはなかったかもしれない。それまで担々麺といえばごまペーストが一般的でしたから、当時、働いていたホテルでこの担々麺を出したときはものすごい反響でした。それはとても喜ばしいことだったのですが、注文がそればかりになってしまったのは想定外でした(笑)。それで裏メニューとしてご提供するようになったのですが、常連の方からのリクエストも多く、いつからか伝説の裏メニューとまで呼ばれるようになりました。料理人としてこんなにありがたいことはないです」と中里さんは当時を振り返りながら話す。
そして、その“元祖の味”には、実はもうひとつの裏メニューが存在した。それこそが「彬龍華 66」で、さらにブラッシュアップされた「冷やし担々麺」だ。
山本さん
よく通っていたホテルのメニューにあったとき(今はもうない……)から大好きで、その味が冷やし担々麺で食べられると聞いて行きました。ああ、この味!と感動しました。
裏の裏メニュー“冷やし担々麺”の作り方を徹底解剖!
こだわり抜いた素材が光る
こうして完全復活した元祖の味だが、中里さんが目指したのはさらに上のおいしさ。「せっかくまたご提供できる機会に恵まれたのだから、おいしさのレベルアップはもちろん、ヘルシーさも意識したいと思いました。化学調味料や添加物は一切使わず、スープの塩分も極力抑えるように工夫しました」(中里さん)
スープのベースには白味噌を使い、ひき肉は肉がジューシーで甘みのある岩中豚を使用。半年間熟成させたラー油と粉末状の青山椒でキレのよい辛みを添えており、夏バテ気味のときでも体が欲するおいしさ!
味の決め手となる肉あんを素早く作りあげる
スープの味はもちろんのこと“肉中華”というからには肉味噌の存在感も際立っていなくてはと、岩中豚を贅沢に使用。強火で一気に肉を炒め、具材や調味料を加える豪快な鍋振りに熟練ならではの技が見て取れる。岩中豚の脂の甘みを損なわないように、旨味を閉じ込めるようにして素早く火を入れる。