上質な素材をまとめ上げる、穏やかな風味と納豆の粘り

「納豆(おろし、納豆、刻み海苔、鰹節、卵黄)蕎麦」1,500円
 

秋山さん

暑い日で、冷たいそばを食べたいと思った時にメニューで気になった「納豆蕎麦」をオーダーしたら、めちゃくちゃおいしくて、なんで今まで頼まなかったんだろうと後悔するくらいでした。

もともとそばに納豆を合わせる気はなかった店主の馬場さんが、心変わりしたのは「えぞふじ納豆」がきっかけ。羊蹄山の湧水を活かした手作り納豆であり、納豆特有の香りは穏やか、優しい大豆の味わいがある。「これなら自分のそばに合うはず!」と運命を感じたという。

 

秋山さん

そばの下にある冷たい濃いめのつゆは、そばや具材とよく混ぜて、ちょうどいいバランスになっています。胡麻のかかったひきわり納豆と生卵と大根おろしと粗く切られた海苔と鰹節をそばとよく混ぜることで旨みが倍増されます。

混じり合うほどおいしくなるのは、それぞれ味のバランスが取れているからこそ

そばや納豆と釣り合いが取れるよう、脇を固める素材も良いものばかり。最高級である枕崎産本枯節の削り節、つゆに溶け込みやすいよう表面に細かな穴が空いている有明海苔、心地よい苦味がそばに適している信州産本山葵など、それぞれに重要な役割がある。

そば湯を注げば立ち上がる優しい香り。そばや大豆の輪郭はよりくっきり浮かび上がる
 

秋山さん

そばを食べ終わって、少し納豆が残ったつゆにそば湯を入れて飲むと癒やされます。

これまで、納豆をのせた挽きぐるみのそばと聞けば、どこか庶民的な田舎っぽい食べ物を想像していたが、今回でそのイメージは一変。驀仙坊の「納豆蕎麦」は、中目黒という地に相応しい都会的で洗練された味わいだった。もともと納豆そば好きの方だけでなく「そばはそのままが一番」と考えている方にも、ぜひ推したい!

※価格は税込。

撮影:佐藤潮
文:佐藤潮、食べログマガジン編集部