教えてくれる人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。最新刊「東京最高のレストラン2024」が発売中。

大阪と福岡の大人気店が東京進出!

大箱がうれしい焼肉店

6月19日、新宿に「鶴橋ホルモン焼肉 松よし 新宿西口店」がオープンしました。大阪・鶴橋のガード下で人気の牛串焼き店ののれん分けということで、開店前から話題に。プロデュースは肉マイスターこと田辺晋太郎さんで、運営は東京レストランツファクトリーです。本店は煙がモクモクの小さなお店のようですが、こちらは78席と大箱。10席ほどしかない“予約の取れない店”が流行する昨今にあって貴重です。

ガレットブルトンヌ
和牛赤身串   出典:ガレットブルトンヌさん

驚いたのは本店直送の「もろみ味噌ダレ」。独特の酸味に最初は戸惑うのですが、気が付けば病みつきになって、あらゆる料理をこのタレに漬けてしまいました。串焼き以外にも「冷やしホルモン松よし盛り」「特選 焼き肝」「厚切りハラミ」など魅力的なメニューが並びます。そして田辺さんが食べ歩いた末に行き着いたという眞味食品のキムチ、必食です。

盛り上がること間違いなし、プルプル卵のオムライス

福岡の大行列店も東京初進出を果たしました。6月1日、渋谷にオープンした「はんばーぐ&おむらいすのお店 いくら 渋谷店」です。こちらを有名にしたのは、カウンターの目の前の鉄板で作るプルップルのオムレツ。最後に犬の肉球の焼き印を押すところまで、まるで飽きさせません。8席のカウンターに座れたら、ぜひこのライブをお楽しみください。テーブル席に座った方は、縦に切れ目を入れるとトロトロの半熟卵が開いていく、あの名画『タンポポ』のようなオムライスに驚いてください。

オムバーグ
オムバーグ   写真:お店から

オープン5日後の平日、11時半ごろにうかがったところ並ばずに入れましたが、この稿がアップされる頃にはどうなっているでしょうか。

直球のおいしさが味わえる10,000円以下のフレンチとペルー料理

フレンチ好きにはたまらない

6月2日、飯田橋の東京日仏学院にビストロ「Loiseau de France(ロワゾー・ドゥ・フランス)」がオープンしました。「水の料理」と呼ばれ、ビジネスも含めフランス料理に大きな革命をもたらしたベルナール・ロワゾー氏(1951-2003)。その会社を受け継いだ長女ベランジェール・ロワゾーCEOが、神戸「ラ・コート・ドール」時代の氏の愛弟子、山口浩シェフと組んでの出店です。

ポーチドエッグのムーレット 撮影:大木淳夫

都心とは思えない、緑豊かな空間にある新校舎の1階で、直球のフランス料理を味わえます。前菜・メイン・スイーツで5,000円のプリフィクスコースには、“シェフの帝王”と言われたアントナン・カレームのレシピの「根セロリのレムラード」やロワゾ―スタイルの「ポーチドエッグのムーレット」などが、ワゴンから選ぶデザートも「パリ・ブレスト」「サントノーレ」と伝統菓子が並びます。フランス料理好きにはたまらないラインアップで、私の周りでも話題沸騰中です。

本場さながらのペルー料理

5月27日、 白金高輪にオープンしたペルー料理店「AKOWA」も注目のお店です。古川橋の路地を入った元居酒屋だった場所。カウンターとテーブルの細長い店内で腕を振るうワルテル・ラバホスシェフは元在日ペルー大使公邸の専属料理人でした。ペルーといえば、昨年の「世界のベストレストラン50」で第1位に輝いたイノヴェーティブレストラン「セントラル」(その姉妹店が永田町「MAZ」です)などで注目を集めていますが、こちらはストレートにおいしい料理を提供してくれます。

ティラディート 撮影:大木淳夫

7品6,800円のコースは和食の影響から生まれたと言われる魚介料理「ティラディート」から始まり、ライスが付いた牛肉と野菜炒め「ロモサルダード」に至るまで、うまいなあと笑顔になる料理が続きます。辛さは抑えてありますが、お願いすれば本場そのままの味にもしてくれるとのこと。ぜひチャレンジしてみてください。

中華のスターシェフが新たなステージへ。そして80年代の香港を楽しめるカジュアル店も

スターシェフの“やりたいこと”が詰まった空間

“あの小林さんが新しい挑戦をするらしい”と、グルメ界で噂が駆け巡っていたお店が6月6日、ついに六本木にオープンしました。店名は自らの名を冠した「KOBAYASHI」。自信と決意のほどがうかがえます。小林武志シェフは2005年、中華「桃の木」で彗星のごとく登場し、同店を、東京を代表する中国料理店に育て上げました。

ウェイク
KOBAYASHI 特製 XO 醬 ULTRAstyle   出典:ウェイクさん

その当時のスペシャリテは個室でコースとして味わえます。そして“ULTRA・K”と名付けられた8席のカウンターは、シェフの新たな挑戦の場。自家製XO醤をアヒージョ風に仕立てたり、目の前で鍋を振るパフォーマンスがあったりで、目も舌も幸せにしてくれます。贅沢な内装と豊富なスタッフに囲まれて、料理を突き詰めるシェフは幸せそう。話題の中華が続出のレストランシーンにあって、注目の一軒です。

香港へ小旅行気分が味わえる

5月18日、麻布十番にオープンした「八十港」は綱島からの移転です。ガチ香港料理店として、香港好きや在日香港人に愛されていましたが再開発による立ち退きのため、昨年6月に閉店していました。

海老ワンタン麺 出典:49975356341さん

店名は80年代の香港を意味していて、内装も当時の雰囲気を再現。壁には現地の郵便箱やチラシがベタベタと貼られています。当然料理もストリートフードから点心、香港式おでんともいうべき滷水(るうすい)まで多彩。値段もお手頃なので、興味の赴くままに料理をオーダーし、お店全体を楽しんでみてください。