食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに、東京の“料理がおいしい酒場”を教えてもらう連載! 第14回は、東京・恵比寿にある「手打ち蕎麦と鴨料理 慈玄」のおいしいポイントを教えてもらいます。

【東京メシうま酒場 vol.14】「手打ち蕎麦と鴨料理 慈玄」

恵比寿駅から少し離れた落ち着いたエリアにひっそりと佇む隠れ家風

そば屋さんのメニューには鴨南蛮、鴨せいろ、鴨焼きなどの鴨メニューがよくありますが、今回ご紹介するお店はすばり「手打ちそばと鴨料理」とうたっている、おいしいおそばと鴨料理の両方がしっかり楽しめるお店。

壁にはたくさんの日本酒

日本酒のセレクトが多いのも飲兵衛にはうれしいところ。そばを喰らわば酒まで! と勝手な格言を作って、本日もお酒と料理のペアリングをしっかり楽しみます。

「そば若菜とジャコサラダ」950円

まずは、珍しいそばの若菜を使ったサラダ。

葉の緑色と茎部分の赤白のグレデーションもきれい。シャキッとした食感で酸味もある茎、さらに葉には少し粘りがあるのも面白い。そばの芽ってこんな味だったんだ。

「鴨の生ハム」700円

サラダで口がさっぱりしたところで、さっそく鴨三昧のスタート!

まずは、鴨の生ハム仕立て。ちょい厚切りの柔らかい鴨肉は、噛むほどに鴨の旨みが滲み出てきます。ほどよくスモーキーな風味で、これは日本酒にもワインにも合いそう。

「上喜元 からくち」

メニューにある定番のお酒以外にも、その時期その時期の新しいお酒も沢山あり、料理に合うお酒をうかがうと、ご主人自ら選んでくれます。

ということで、まずは上喜元のからくちを。しっかり辛口ではありますが、ほどよくフルーティーで、鴨の旨みとよく合います。

「鴨皮の山椒煮」550円

とりかわではなく、珍しい鴨皮の山椒煮。これが旨みがめちゃめちゃあって、ものすごくおいしい! なにこの濃厚さ!

鶏の皮はどちらかというと脂の旨みという感じですが、鴨の皮はそこにさらに肉の旨みも加わった重層的なおいしさ。 焼き鳥屋で、必ずとりかわを頼むという人は、鴨皮も絶対食べた方がいいですよ!

「鴨つくね豆腐」900円

鴨だしがしっかり利いた、鴨つくね豆腐。

このつくねがまた、粗挽きの鴨肉の旨みがガツンときて、めちゃくちゃおいしいのです 。豆腐やしめじなど、他の具材もしっかりだしの味が染みていて、これまたお酒が進みすぎる一品です。

「鴨つくね焼き」580円

つくねがあまりにおいしかったので、鴨つくね焼きも追加!

焼き鳥風の甘いタレで焼かれたこちらは、さらにダイレクトに鴨の肉肉しさを味わえます。まだ前菜的な料理だけですが、この時点ですでに鴨の魅力を超満喫。肉の味が力強いので、一品一品の満足度が高いのです。

「粋蕎 そば湯割り」630円

おっと、鴨料理のおいしさに歓喜しすぎて、おそば屋さんに来ているということを忘れていました。ということで、そばへと味覚をシフトさせるべく、そば焼酎を注文。

一般には売られていない、お蕎麦屋さんのために作られているという、そば原料100%の十割そば焼酎粋蕎。もちろんそば湯割りで。そばの香りと甘い口当たりが最高!

「鴨ねぎ陶板焼き(小)」920円

そしていよいよ鴨料理のメイン、鴨ねぎ陶板焼き。

熱々の陶板の上で、ジュージューとものすごい湯気を出しながら運ばれてきます! 醤油と鴨の脂の香りが広がって、食べる前からおいしさが分かるやつです。

きれいな鴨肉

湯気がおさまると、鴨肉がうっすらピンク色でレアなのが分かります。一口噛むと、熱々の肉汁が溢れて、肉の旨みと皮の脂の旨みが広がります。ジビエらしいワイルドさはありますが、癖がまったくなくて、とにかく旨みの塊! 鴨ってこんなにおいしかったのかと改めて実感。

そして、大事なのが、奥に横たわるネギ! もうね、ネギですよ、ネギ。鴨の脂のおいしさをしっかり吸ったネギが、とてつもなくおいしいのです。今まで食べたネギの中で、一番かもしれない! これだけ追加したいくらい。「ネギ無くして鴨を食べてはならない」という法案を可決させたいくらいのおいしさです。

残った汁

食べ終わったところで店員さんから「このお皿は残しておいてください」と。どうやら残った汁が後で利いてくるようです。

「せいろ」870円

そばは、二八の細打ち。しっかりとコシがあり喉越しも良いです。そしてこちらのお店だけの特別な食べ方が。

鴨ねぎ陶板焼きの残った汁にそばをダイブ!

そうです、先ほど鴨ねぎ陶板焼きを食べた後の残った汁に、おそばを付けて食べるのです。

甘じょっぱいタレに鴨の脂が加わり、おそばを付けて食べると、これがもう絶品! そこに鴨はないけれど、鴨のおいしさを十二分に味わえる見事な組み合わせ。鴨三昧の〆にぴったり。いやー、大満足! 最後はそば湯をいただいて、ご馳走様でした。

「手打ちそばと鴨料理」という名前通り、そばと鴨も両方の魅力を存分に味わえる名店でした。

※価格はすべて税込

撮影:GENIUS AT WORK

取材:小宮山雄飛

文:小宮山雄飛、食べログマガジン編集部