教えてくれる人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 
好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。最新刊「東京最高のレストラン2023」が発売中。

隠れた注目スポットのオートクチュールレストランと隠れ家ワインバー

まずは前回の締め切り後、11月30日にオープンしたフレンチ「caillou(カイユ)」です。場所は西小山。人気スポット、武蔵小山の隣駅なんですが、最近大注目です。

「caillou(カイユ)」リー・ド・ヴォーのムニエル 写真:松村宇洋(UP SPICE)

リ・カーリカ」出身の「nerisa(ネリザ)」、今年の「東京最高のレストラン2023」に掲載された「チッツィア」といったイタリアンや、「WINE BAR WEST」など最先端のお店と、古くからの町中華やもつ焼き屋さんが同居する、なんとも住みやすそうな街。そこに誕生した「caillou」は、さらに西小山の価値を上げそうなレストランです。

「caillou(カイユ)」冷蔵ケースに並んだ食材 写真:松村宇洋(UP SPICE)

オープンキッチンの前にはアミューズ、前菜、メインの食材が並び、その中から好きなものを選んで、調理法までリクエストできます。腕はもちろん、コミュニケーション力の高いスタッフが揃っているので、臆することはありません。わからなければなんでも聞いてみてください。

アラカルトだし、量も選べるので、ちょっと贅沢をしたいときや、お子さんから祖父母まで一族で記念日を楽しむといったシチュエーションなどにも重宝しそうです。

もう1店、同じく11月30日に池尻大橋にオープンした「混混」も楽しいです。恵比寿の「創和堂」から独立した店主の、ナチュラルワインと小皿料理の店。温かみのある木のカウンター奥の厨房スペースがとても広く、客席の後ろの空間もまた広い。コンクリート打ちっぱなしの壁に大きなポスター、JBLの大型スピーカーと、自分の好きなものを集めて作った、プライベート空間のようなお店ですが、飾り気のない店主の人柄とあいまって、気持ちのいい時間が過ごせます。

料理はフルーツを合わせるなど、センス良く酸味を使った品々から、チューリップ唐揚げまで美味。やけに旨いパンは「TOLO PAN TOKYO」から。知っておくと自慢できそうなお店です。

立ち飲みの躍進と「&立ち飲み席」の出現

最近の立ち飲み店の躍進ぶりは驚くほどですね。12月9日には、あのインドカレーも有名な「よもだそば」が、有楽町ガード下に「立吞み よもだ」をオープンしました。

ロバオ
「立呑み よもだ」   出典:ロバオさん

酎ハイはカウンターのサーバーでご自身で。500円で30分飲み放題です。休日16時ごろにうかがいましたが、7人も入ればいっぱいの店内は満員で熱気にあふれていました。つまみは300円か400円。豊洲の仲卸直送の日本近海マグロや、山ちゃんこと月島「鮨処 如月」ご主人特製の自家製干物などもあり、新作も続々登場するようです。せんべろ人気、健在です。

一方で個人的に注目しているのが「&立ち飲み席」の出現です。先月の「新店アドレス」で「EUREKA!」には予約不要の立ち飲み席があるとご紹介しましたが、なんとイタリアンにも。神泉に12月3日にオープンした「erba」です。

「erba」
「erba」   写真:お店から

シンプルモダンな店内にカウンター、テーブル席のほかに立ち飲み席がひとつ。ワインはナチュラルでお酒に合う料理も多く、スタッフは元気のいいシェフとソムリエ、感じのいいアルバイトさんがいるので一人でも寂しくありません。なにより、次はきちんと予約してしっかり食べよう! と思うわけです。いわば立ち飲み席はお試し席でもあり、客にも店にもメリットがあるシステム。この形態は今後多くなる気がします。