〈食いしん坊の集う店〉

食べることが好きで好きで、四六時中食べ物のことを考えてしまう、愛すべき「食いしん坊」たち。おいしいものが食べたければ彼らに聞くのが間違いなし! 今お気に入りの、“とっておきのお店”を教えてもらった。

教えてくれる人

山本 憲資

SumallyFounder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

寿司へのひたむきな姿勢が、独自のスタイルを生み出す

一見、寿司屋とはわからないような外観。足元に置いてある店名の書かれたあんどんが目印だ

2022年4月オープンながら、食べログの点数は3.72と高得点を誇る「鮨 西崎」。お店は東北沢駅から程近い閑静な住宅街にあり、入口のインターホンを押してから地下に向かう、プライベート感たっぷりのロケーションだ。

※点数は2022年11月時点のものです。

入口の障子を開けると、茶室をイメージして設計された店舗が現れる。インテリアや小物は、使い込むほどに味が出るもので仕上げている
 
 

山本さん

店主の修行先である「鮨 なんば」さんにも時々伺っていて、新しくお店をオープンされるとのことで興味を持ちました。 

鮨 なんば 日比谷」と系列の「鮨 しゅん輔 阿佐ヶ谷」で修行を積んだ、店主の西崎さん。修行先に選んだのは、温度管理にこだわる寿司作りに興味があったためだ。「鮨 西崎」ではそこで会得した技術だけでなく、独自のスタイルも表現する。

「一つひとつの調理方法を、これは何のためにやるんだろうと探ることが好きです。新しい食材を取り扱うことも好きで、この食材はどうすれば最もおいしくなるだろうと、日々試行錯誤を繰り返しています」(西崎さん) 

 

選び抜かれた道具が整然と並ぶ、つけ場。雜然と見えないよう、なるべくシンプルに見えるものを選んでいる
使う唐津焼の器は、中里太亀さんのもの。実は友人の父親という縁があるそうで、お店を開業するなら中里さんの器を使う約束をしていたそう
 

山本さん

寿司に対するストイックな姿勢と独自のスタイルを追求するバランスが、とてもいいご主人です。

寿司に対するひたむきさは、仕入れる食材選びにも表れている。

「毎朝市場まで行って、仲買人さんと直接話してから魚を仕入れます。やはり、毎日顔を出すことが、相手への信頼につながるのではないでしょうか」(西崎さん)

無駄のない美しい所作で、握るのを見ているのも楽しい
握る手数が少なく、ふんわりとした食感のシャリ。確かな技術が感じられる

用意するシャリは2種類。どちらも赤酢が使われているが「白」と呼ばれる薄い色のものと「赤」と呼ばれる赤酢を強く利かせたものがある。「白」は塩気が立っているネタ、「赤」はコクを感じるネタに合わせるが、同じ素材でも季節によって脂ののりが違うため変えることも。

提供されるのは、おまかせコース(18,000円、2023年1月から19,000円)のみ。酒肴7〜8品に握り12貫というメニュー構成で、使われる食材から考えると、かなりコストパフォーマンスが良い。食べログでも「鮨 西崎」の良心的な価格設定に驚く口コミが多いのもうなずける。

「コースでは、旬の食材や蒸し物、焼き物などをバランスよく味わっていただけるようメニューを決めています」(西崎さん)