独自の技術が光る、他では味わえない寿司や酒肴を堪能

今回は、おまかせコースの中から、山本さんおすすめの鮨3貫と西崎さんおすすめの料理2品を紹介する。

メニュー① 5枚重ねになったイカの身に驚かされる!「白烏賊(しろいか)」

向こうが透けそうなほどの薄切りには、目の前で見ているお客さんも喜んでくれるという
 

山本さん

食べたことのない薄さで、まさに「烏賊のミルフィーユ」です!

塩を合わせた白烏賊には「白」の酢飯を合わせてシンプルに味わう

まずこれは外せないネタ「白烏賊」。薄くそぎ切りにしたイカの身を、5枚重ねて握っている。

「通常の寿司ネタとして出されるイカは、厚みや歯ごたえがあるので口の中に残ります。酢飯とバラバラに味わうことになり、これまで私はあまり好きではなかったんです。そこで、イカの食感は残しつつシャリと一体化させる方法を考えた時に、たどり着いたのがこの手法でした」(西崎さん)

口の中でとシャリとイカが優しく解け合い、とろけるようなイカの甘みとシャリの酸味と程よい塩気がバランスよく広がっていく。

メニュー② 立て塩で締めるという、独自の技が光る「小肌」

脂のある小肌には「赤」のシャリを合わせ醤油を刷毛で塗って仕上げる
 

山本さん

丁寧な仕事に感激しました。

まだ脂が弱い秋の小肌には、振り塩で締めると身が締まりすぎる。そのため「立て塩」という本来しんこ(小肌の稚魚)に施す塩水での締め方を応用した。小肌の程よい脂が塩水でうまく引き立ち、酢の利いたシャリとの相性も抜群。

メニュー③ 脂のりのよい身と玉ねぎの相性抜群!「鰹(かつお)」

玉ねぎは辛味がマイルドになるよう、刻んでから1回寝かせて落ち着かせる
 

山本さん

合わせる玉ねぎとカツオが抜群の組み合わせ!

皮目を少し炙ったカツオの身に、刻んだ玉ねぎを合わせて。カツオと玉ねぎなどの薬味との相性のよさは、カツオのたたきなどでもご存じの通り。ともすれば青臭くなりがちなカツオの風味を、玉ねぎの香りがうまく中和してくれる。

メニュー④ 驚きの食感は、ぜひ一度味わってほしい「鮟肝(あんきも)」

まるで豆腐のような淡い色味の鮟肝
箸でつかめないほどの、とろんとしたやわらかさ
 

この時期の「鮨 西崎」のスペシャリテという、鮟肝。独特の食感を味わってもらいたいと、工夫が重ねられている。鮟肝はまず自分で血抜きをして、臭みを徹底的に取り除く。醤油を使うと身が締まって硬くなるため、白醤油を香りづけ程度に少量しか使わず仕上げている。

鮟肝の独特のにおいは全く感じず、ぷるんととろけるような絶妙の食感が味わえる。まさに、今まで食べてきた鮟肝は何だったんだと思わせる衝撃の味。

メニュー⑤ カリカリの皮に、ふんわりした身の食感がたまらない「焼き穴子」

添えられたキュウリが濃厚なアナゴの味を洗い流し、後味スッキリ
独特の甘辛いタレに、お酒が進む

アナゴの皮目に50分丁寧に火入れされ、カリカリの皮とふっくらした身の食感が絶妙。寿司との食感の違いも楽しい。

どう成長していくか楽しみな、通いたくなる店

取材時も冗談を言ってくれるなど、サービス精神旺盛で気さくな西崎さん
 

山本さん

ご主人の対応がよく、とても気持ちがいいです。また、寿司に対する姿勢にも、今後どのように成長されていくかという期待を大きく持たせてくれます。

「和食の料理人としても携わってきましたが、やはり寿司の世界は奥深くて楽しいです。お客様との会話も楽しいので、自分からどんどん話しかけます。お店に来ていただいたら、寿司やお酒だけでなく私とのやりとりも楽しみましょう」と話す、西崎さん。

「今までなかったような珍しい魚もどんどん仕入れてくれ」と仲買人に頼んだり、休日にも和食以外の技法を店で活かせないか料理を作ったりと、飽くなき研究心を持っている。この寿司への情熱がある限り、今後もどんどんお店が成長していくことは間違いない。

確かな技が詰まった寿司を、良心的な価格で味わえる「鮨 西崎」。もうすでになかなか予約が取れない人気店というのも納得させられる。店主の気さくな人柄もあって、何度も通いたくなってしまうお店なのだ。

※価格は税込です。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

撮影:伊藤晴世
文:西尾悠希(フリート)