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タベアルキストがたどり着いた「最高の土鍋ご飯」と脇を固めるおかずたち
薄皮一枚残すプロの精米や粒をそろえる技術を堪能できる「ご飯食べ比べ」
各種コースはすべて「白米満腹」をテーマとしており、主役は土鍋で炊いた白米。マッキー牧元さんのイチオシは「ご飯食べ比べ」だが「白いご飯がおいしすぎてコース半ばでお腹いっぱいになる方が多い」ことから、食べ比べのオーダーは大人数から、事前に電話での相談が必要だ。
この日提供されたのは富山県産プレミアムブランド米「富富富」。精米を手掛けたのは、江戸時代から続く錦糸町の老舗米屋「亀田商店」だ。ポイントは亜糊粉層(アリューロン層)という、白米を覆う厚さ数ミクロンの薄皮一枚だけを残していること。この層はビタミンB1やオリゴ糖などが豊富で、上質な旨みや甘みのもととなる。小栁津さんの巧みな炊き加減で「富富富」の個性である歯を押し返すような力強い食感も引き出されていた。
もう一方は気温が高い地域でもおいしく育つ九州生まれのブランド米「にこまる」。沼津市の米屋「長谷川多作商店」が精米し、粒の大きさを2.5mmにそろえている。特殊な「米選機(ライスグレーダー)」が必要であるため、都内で大粒のお米を仕入れようとしても2.1mmが限界という。品種的には「さっぱり系」というが、大粒であることから口のなかでの存在感は非常に大きい。
マッキーさん
まずはそのままで、香りを嗅ぎ一口食べて口の中でゆっくりと咀嚼します。様々なご飯の友が用意され、それで食べてもいいのですが、ぜひ塩をかけて食べてみて。甘さに驚くはず。
食味豊かで上質なお米に、濃厚な旨みが調和する「ウニ3種食べ比べ」
マッキーさん
産地違いで3種食べ比べは希少。
雑食性のウニは何を食べて育ったかで味わいが大きく変わる。お米の食べ比べで研ぎ澄まされた味覚により、産地の違いによるウニの個性もよりはっきりと感じられるだろう。
たとえば函館沿岸のウニは、出汁に向いている真昆布が豊富な海域で育っただけあり旨みが強い。厚葉昆布や長昆布などが多い根室沿岸のウニはピュアな甘みが印象的。宮城産は風味が複雑で、ほか2地域のウニとは全く異なる魅力があった。
ルビーのような美しい断面が白いご飯によく映える「牛ヒレカツ」
マッキーさん
肉汁たっぷり香ばしい。
西郷どん牛や庄内牛といった全国各地の和牛から、そのときどき雌の良いものだけをセレクト。なかでも非常に柔らかいヒレ肉を、低温と高温の油を使い分けつつじっくり揚げた牛カツが「おこん」の一番人気メニューだ。雌の牛ヒレ肉ならではの上品でさっぱりとした旨みが、白いご飯の引き立て役に適している。パリッと香ばしい衣から、中心部のレアまで、グラデーションのように変化する食感も面白い。
3種の「すき焼き」で、最高においしい土鍋ご飯を贅沢にかっこむ!
まず「すき焼き」で登場するのは特注大判カットの最高級和牛サーロイン。無肥料の自然栽培で育てた大豆や小麦が原料の「魯山人醤油」と砂糖を加えて照り焼きにし、卵の代わりに生のウニと合わせていただく。とろけるような和牛とウニ、そして上質な土鍋ご飯が口のなかで三位一体のおいしさを生む。
マッキーさん
甘からさと牛脂でご飯がススム。
サーロインと生ウニ、もも肉と卵、肩ロースと野菜、3種類の「すき焼き」を食べてもなおお腹に余裕があれば、残り汁を楽しめるよう〆のうどんも用意しているそうだが……「白米満腹」がテーマだけあって、うどんまでたどり着ける人は少ない。
「日本のお米は本当においしいです。いつか高級なコーヒー豆のように、嗜好品として海外で流通するようになると思います。そうなると『誰が炊いたか』も重要になるでしょう」と、日本のお米の未来も熱く語る小栁津さん。「日本一、炊かれたいオトコ」を自称するほど、お米への愛情は強い。これからも「米way(マイ・ウェイ)」を突き進み、全国各地のみならず、世界中のお米好きに「人生最高の白いご飯」をふるまい続けていただきたい。