〈これが推し麺!〉
ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。
今回ご紹介するのは、京都で絶大な人気を誇るラーメングループによるつけ麺専門店。イベリコ豚を使った豪華な一杯は、プロローグからエピローグまで、食べ方を変えて5度も楽しめるエンターテインメン(麺)トなんです!
教えてくれる人
猫田しげる
20年以上、グルメ誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」「あまから手帖」「旅の手帖」(手帖好き?)などで記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」。
人気グループによる初業態の「つけ麺」
関西のラーメン好きの間で「セアブラノ神」を知らない人はいないでしょう。その名の通り、豚の背脂が表面を覆う新潟・燕三条系をアレンジした「背脂煮干しそば」で有名です。
壬生本店に続き、伏見剛力店、錦店と、まぜそばや二郎系など各店オリジナルメニューを掲げた店舗を展開。そして4店舗目となったのが、三条烏丸に2020年オープンした「slurp」(現在は「セアブラノ神 slurp」)です。
まあ〜。黒を基調にしたシックな店内ですね。「女性一人でも入りやすい」をコンセプトに、オシャレなダイニングバーみたいなインテリアを意識しています。
猫田さん
オシャレ過ぎて逆に私のような田舎者は気が引けるのですが、スタッフさんが朗らかに迎えてくれるので、オドオドせずに入れます!
こちらの看板メニューは「イベリコ豚つけ麺」1,060円。「イベリコ豚」はもう知名度がそこそこあるので説明は簡略化しますが、スペイン産の高級豚で、上品で臭みのない肉質が特徴です。
このイベリコ豚のバラ肉を使ったスープと、昆布水に浸された麺が基本のセット。せっかくなので全盛りフィーバー的な「特製イベリコ豚つけ麺」を頼んだ方が良いでしょう。
チャーシューや味玉が盛り盛りフィーバーな「特製イベリコ豚つけ麺」
特製イベリコ豚つけ麺は、豚肩ロースのチャーシュー、味玉、白髪ネギなどが全盛り状態に。
着丼した瞬間、イベリコスープに麺をつけて食べたい衝動に駆られますが「まずは麺だけをすすってください」とのこと。え〜!と思いながら麺だけ食べてみますと、おお……昆布水が染み込んだ麺、香り高い昆布と醤油(2種をブレンドしているそう)のフレーバーがしっかりあり、確かにそのままでもイケます。
さて。冷めないうちに麺をスープにつけます。こちらは豚骨、鶏ガラをベースに塩ダレなどをブレンドし、そこにイベリコ豚のバラ肉を投入した清湯スープ。低融点の豚の脂が溶けてこってりしつつ、出汁が丁寧に取られているので雑味のないすっきり感も特徴。良い意味で豚らしい香りが鼻に抜けて広がります。
猫田さん
壬生本店で全店のスープを一気に作っているのだそう。清湯だったり白湯だったり魚介×清湯だったり、全部違うからこんがらがってしまいますね!
スープに入っているバラ肉を口に含むと、軟らかくしっとりした食感にうっとりします。舌でとろける……。実はこれまで私、イベリコ豚を色々な場所で食す機会がありましたが、ここに来て初めて「イベリコ豚っておいしいんだ!」と実感しました。
さらにイベリコ祭りを楽しめるのが、このチャーシュー。醤油などで下味をつけ、低温調理でじっくりレアに仕上げています。こちらはスープの豚バラ肉とは違い、赤身の旨みをしみじみ味わえる肩ロース。
そういえばレンゲにレモンがのっていたのをどっかによけたまま忘れていました。味変に使うアイテムです。麺に搾ってみると、キリッと爽やかな酸味が加わり、昆布のグルタミン酸と化学変化を起こして(多分)また違った旨みに。
麺をライスにバウンドさせたり、ライスをスープにつけたりと、だんだん自己流の楽しみ方を見つけはじめます。
そして最後、麺を食べ終わるともう一つお楽しみが。「麺に下味を付けていた昆布水でスープを割って召し上がってみてください」。喜びながら残ったイベリコスープに入れ、その中にご飯を投入して、雑炊を楽しみます。
「そのまますする」「スープにつける」「レモンを搾る」「ライスにバウンド」「雑炊風に」……と、最低5回は味変を楽しめる、エンターテインメントたっぷりなつけ麺。最初は「ラーメンで1,360円かあ~」と躊躇しましたが、コース並みにいろんな具材を食べられるので、満足度は値段以上です。
猫田さん
ここのことを人に紹介する時は「コース料理みたいなラーメンが出てくる店」と説明しています。最近はインバウンドでラーメンも高いので、むしろこの値段はリーズナブルかもしれません。