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今話題のフレンチ店が夢のコラボレーション!
名店のシェフがコラボするイベント『食べログ Special Dining』
今回の主役は、富山県産の食材に食器、調度品、富山の魅力を前面に活かしてブランドを築いてきた富山の名店「L’évo」と、21年間ロブション・グループに勤務し、エグゼクティブ・シェフとして活躍してきた渡辺氏率いる「Nabeno-Ism」。
今話題の2人のシェフのコラボイベントが、2017年10月24日(火)~10月25日(水)の2日間限定で、「Nabeno-Ism」にて開催された。その様子をシェフのインタビューを交えてお届けする。
独占!シェフズインタビュー
左・「L’évo」谷口シェフ、右・「Nabeno-Ism」渡辺シェフ
今回のコラボイベントに関して、両レストランのシェフに意気込みやエピソードなどを語っていただいた。
Q. 今回のコラボイベントの経緯は?
渡辺(以下・渡):2年前に初めて谷口シェフの料理をいただいた時、とても“説得力”があったんですね。富山という「土地との融合=テロワール」がお皿で表現されている。私にとって富山は「遠い国」というような神秘的なイメージがありましたが、谷口シェフの料理からは、「富山の自然や文化」をしっかりと感じ取れたんです。
「料理人は、厨房に立った空気感だけでその人の力量がわかる」とよく言われますが、谷口シェフはまさにそうでした。これまであまり深い交流があったわけではないのですが、食材に対する姿勢や情熱などを見て「この人スゴイ」って直感でわかりました。
谷口(以下・谷):このお話をいただいた時は、正直驚きました。渡辺シェフは、日本のフランス料理界でトップに君臨し続けてきた方ですから。不安やプレッシャーを感じたのは確かです。
一方、我々は富山の食材を富山のレストランで作ったことしかなかったので、「東京で富山の食材を披露する場」というのはとても貴重な機会ですし、大きなチャンスだと思いました。このご縁に心から感謝しています。
Q. 今回のコラボイベントに対する意気込み、思いは?
渡:富山の素晴らしい食材を使って料理を作れることは、新しい発見がたくさんあってすごく新鮮でした。「Nabeno-Ism」はまだオープンから1年弱しか経っていないお店なので、このようなコラボイベントを催せるのはとても光栄なことです。
お越しいただいたお客様に満足していただけるよう、チーム一丸となって、最高の料理と空間を作り上げたいですね。
谷:渡辺シェフが富山の食材を使って、斬新なアイディアと技巧で料理を完成させていく様子を見させてもらい、大変刺激になり勉強になりました。最初私が大阪から富山に来てお店を出した時は、外から来た分だけ「富山の良さ」がよく見えたんですね。
その7年前と同じような感覚、「富山の隠れた魅力の再発見」を今回のコラボイベントで味わうことができました。東京の皆さんに、料理を通じて富山の魅力をお届けできればと思っています。
Q. 今回コラボしたことでの、苦労や発見などはありましたか?
渡:大変だったことは、直前の台風の影響で食材の仕入れに調整が必要になったことでしょうか。でも、料理は食材ありきなので仕方ないんですよね。
良かったことは、コラボイベントの前にチームNabeno-ism連れて富山まで行って、現地の新鮮な空気を吸えたこと。実際、今回のイベントで使用する食材を作っている生産者さんの現場にも行かせていただき、その熱意や想いを直接お聞きできたことが大きかったです。
食材への感謝の気持ちやリスペクトを持って料理をすること。料理は「おもてなし」なので、その「心」はきっとお客様にも伝わるものだと思っています。
谷:最初は、普段と違う厨房で料理を作ることへの不安も大きかったのですが、実際やってみると予想以上に動きやすくてびっくりしました。良かったことは、チームのメンバーが「Nabeno-Ism」の方達と一緒に働けたことです。他のレストランの調理風景を見たり、一緒に他のシェフと働いたりする機会はめったにありませんから。
渡辺シェフがよく仰る「井の中の蛙になるから、チームのメンバーは出稽古には行かせたほうがいい」というご意見は、本当にその通りで、スタッフのとてもいい刺激と経験になりました。
Q. それぞれのシェフを一言で表すと?
渡:「“アルティザン”であり“ポエット”」でしょうか。谷口シェフは生粋の「アルティザン(職人)」なんですよね。今日のイベント中も、メインのレヴォ鶏を店の奥で、ひたすら一人で黙々と焼いている。
もう一つの「ポエット(詩人)」的な要素は、谷口シェフの料理がそれを物語っています。彼の料理を食べていると富山の風景が見えてくるんです。フランス料理という基本をしっかりと押さえつつ、富山の物語を料理で伝える。唯一無二の「谷口料理」を作り上げた、尊敬できるシェフです。
谷:渡辺シェフは僕にとって「トップリーダー」ですね。誰もが認める実績と経験をお持ちにならっている。でもそれだけではなくて、絶大な安心感や信頼があるんです。僕の質問や相談に対しても、いつも深くまで丁寧に論理的に説明してくださって、納得感がある。
それは渡辺シェフのお人柄、誠実さやユーモア、溢れるエネルギーがあるからこそだと思うんですよね。そしていつまでも「新しいことをしよう」というチャレンジ精神や向上心を持ち続けている。これまでもこれからも、僕たちを牽引してくださる“力強いリーダー”のような存在です。
「ここでしか味わえない」富山づくしのフルコース
今回のテーマは「富山の魅力を東京で感じる特別な食事会」。コースはデザートを含む全8品が振る舞われた。デザートと焼き菓子以外はシェフの魅力を最大限に引き出すべく、店ごとに3品ずつ提供するというスタイルだ。
前菜:Nabeno-Ism
『前菜計4品』富山県産完熟柿と梨のガスパチョ こんかブリ、黒造りなどを使ったスナック
『両国江戸蕎麦「ほそ川」のそば粉を富山の名水や富山県産の塩で炊き上げたそばがき』四十物利尻昆布のジュレとアキテーヌキャビア、富山産の白エビなど
『富山県産越中バイ貝の炙り』マリネとマコモダケ、千住葱と杏のコンポート
メイン:L’évo
『レヴォ鶏』 どぶろくでマリネし、半日乾燥させた生後45日の雛鳥を使ったレヴォ鶏
満寿泉の酒米のおこげを詰めて、和芥子のアクセントと共に
『漆黒』富山の郷土料理黒作りで熟成させた真鱈と立山町で採れた菊芋と白子のサラダ
『氷見 仔猪/五箇山の赤かぶ 』セイズファームのアルバリーニョの澱のソース
デザート:Nabeno-Ism
ミニャルディーズ: L’évo×Nabeno-Ism
日本堤バッハ珈琲とL’évo、Nabeno-Ism餐宴の小菓子
大盛況のイベントが終了!
食事を堪能したゲストの満足気な表情を見て、手応えを感じたという両シェフ。今回のイベントに参加できなかった皆さんも一度、それぞれのお店に足を運んでみてはいかがだろうか。
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第1回 そのレストランのためだけに育てられた鶏がいる。富山の名店「レヴォ」の物語
第2回 地元の人も知らない”どぶろく”を使ってフレンチを。富山の名店「レヴォ」
第3回 世界に一つのワインを創る。富山の名店「レヴォ」の物語ができるまで3
写真:八木 竜馬
取材・執筆:アキレウス