〈広島の麺料理〉

広島つけ麺の発祥は、元祖と呼ばれる店の先代が、戦後に中区八丁堀で始めた中華料理店から。当時は3〜10月の季節限定メニューだった冷麺を、角中久司さんが通年食べられる専門店として1985年「冷めん家」を創業。その後、人気が広がるにつれて「広島つけ麺」と呼ばれるようになり、現在では多数の専門店がしのぎを削っている。今回は、広島つけ麺の専門店の中で2番目に古い「冷めん家」をレポート!

教えてくれたのは

佐藤明日香
生まれも育ちも広島の生粋の広島県民。広島のタウン情報誌「TJ Hiroshima」編集部を経て、編集者・ライターとして活動。作り手をリスペクトしつつ、その思いを少しでも読者に伝えるべく「シンプルに分かりやすく、目に浮かぶような文章」を心掛け情報を発信する。広島の麺料理の中ではつけ麺が一番好き。

広島で2番目に古い、広島つけ麺の名店へ

大手町店は広島電鉄・本通駅より徒歩5分。マンションの1階、黄色の暖簾が目を引く
木を多用した温かみのある空間にテーブル12席、カウンター7席をゆったりと配置している

今回紹介するのは、広島つけ麺を通年で提供し、広く愛される一品へと押し上げた立役者の一軒である「冷めん家」。こちらでは、創業時から変わらず、冷麺として提供している。2号店である大手町店は、平和記念公園からほど近い元安川沿いの道を少し入った場所にある。場所柄、県内外の観光客が多いが、足繁く通うリピーターも多数。

「やっぱり冷麺が好きですね。毎日食べていても飽きないですから」と角中さん

大手町店で腕を振るっているのは「冷めん家」2代目の角中賢太さん。父が営む十日市町店で8年間修業し、2017年10月に大手町店を開業した。「技術を学びはじめてから13年間、店に立つ日は欠かさず、昼食に冷麺を食べています」。その日の冷麺を食べて感じたことを、翌日の提供分に生かすようにしているという。並々ならぬこだわりようだ。

広島冷麺 普通(1,050円)。辛さは、なし〜激辛の7段階から選べ、後からラー油の追加も可能

広島つけ麺と言えば、醤油ベースの付けダレにラー油や唐辛子、酢、ごまなどが入った、辛口のタレでいただくのが基本。特に冷めん家の自家製ラー油は辛いそうで、初来店時は他の広島つけ麺の店でオーダーする時よりもタレの辛さを抑えめにするのがおすすめだ。

また、冷めん家のメニューの中で最もスタンダードな「普通」は、中太麺を1.5玉使用し、その麺が見えないほど野菜もたっぷり。鋭い辛さとツルツルの麺の喉越しのよさが相まって、食べる手が止まらない!

こだわりの冷麺。そのおいしさの秘密とは?

無添加で体に優しい、注文毎に合わせる秘伝のタレ

食べやすいようにタレの温度も調整。夏は冷たく、冬は常温で出している

オーダーが入ったら、まずは付けダレ作りからスタート。魚介ベースのあっさりとした特製スープは、化学調味料や添加物、塩や砂糖を使用せず、毎朝店で仕込んでいるもの。そのスープをベースに、チャーシューを炊いた後の旨味たっぷりの醤油、自家製ラー油、酢、煎って香りを引き出したごまを加え、注文毎に作っている。

試行錯誤して生み出したオリジナルの麺

麺の太さは中太麺だが、一般的なものよりはやや細め

「製麺屋は非公開ですが、配合レシピは創業時から変わっていないと父から聞いています」と角中さんが話す麺は、喉越しのよさが光るストレート麺を特注。小麦粉と水のみのシンプルなレシピで、つるっとコシのある理想的な歯応えになるように、製麺屋とともに試行錯誤して配合を決めたのだそう。