〈自然派ワインに恋して〉

シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。

ナビゲーター

岡本のぞみ

ライター。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。

女性客の支持を集める人気の理由は?

neoの店内はカウンターがメイン

渋谷の円山町・神泉は、“裏渋”と呼ばれているエリア。かつて花街だった頃の面影を残す割烹と若い世代に人気の飲食店が軒を連ねる。ここ裏渋で、2021年8月のオープン以来、20〜30代女性の支持を集めているのがナチュラルワインスタンド「neo(ネーオ)」。同じ裏渋にある人気イタリアン「アウレリオ」の系列店で、おでんの「日和」に次ぐ3店舗目にあたる。

メニューは黒板をチェック

店内の黒板メニューを見ると、550円から食べられるイタリア小皿料理がずらり。そうした料理に合わせたいのはイタリアワイン。「イタリアワインには、ごはんを食べたくなるおいしさがありますよね」と店長の稲部里沙さん。立ち飲みながら、料理とワインがおいしいのが、neoが人気の理由の一つだ。実際、初回は立ち飲み目的で来店した人も、2回目は肉料理やパスタを目当てに料理とワインを楽しむ人が多いという。

左から荒金梅吉さん、柴田はなさん、店長の稲部里沙さん、矢花すずさん

もう一つの魅力は、スタッフの親しみやすい接客。ワインリストはなく、好みや料理に合わせてワインを選んでもらえるが、その時に詳しい解説がつくのがneoらしさ。「おいしく飲んでもらいたいので、なぜそのワインを料理に合わせたかを説明します。ナチュラルワインのおもしろさは造り手の思いが込もっているところ。それを伝えたいというのもあります」と稲部さん。

ジューシーなパプリカをミネラル感ある白ワインで

「ペペロナータ」880円

自慢のイタリアの小皿料理をいただいてみよう。「ペペロナータ」はパプリカが主役のイタリアの定番料理。パプリカを焼いて、甘みと旨みを閉じ込めた後、シンプルにアンチョビとオリーブオイルとレモンで味付けしてイタリアンパセリがのせられている。パプリカは一度、真っ黒に焦がしてあるため、甘みと旨みが凝縮。肉厚な身からフルーツのようなおいしさが口いっぱいに広がった。

メンティのリーヴァ・アルシーリア2019(グラス1,320円)

稲部さんが選んでくれたのが、イタリア・ヴェネト州の白ワイン。「全体にはパプリカに合う甘酸っぱい味ですが、火山性土壌のミネラル感があるワインでもあります。地元でも干し鱈の料理とよく一緒に飲まれているワインなので、アンチョビや塩気のある料理にぴったりです」。夏にエネルギーを与えてくれる組み合わせだった。

甘みのある豆料理は複雑なオレンジワインで

「グリンピースとパンチェッタとポーチドエッグ」880円

neoに来て必ず食べたいのが「グリンピースとパンチェッタとポーチドエッグ」。初めて訪れたら、こちらと「自家製ブリオッシュとブッラータとアンチョビ」(550円)を頼む人が多いそう。

「イタリアには『青豆とパンチェッタのサラダ』という定番料理があって、それをグリンピースに代えた一皿です。日本だとグリンピースが苦手な方がいますが、甘みのあるグリンピースを選んでいます。塩味の強いパンチェッタに酸味を利かせているので、ワインが進む味です」と料理人の矢花さん。

ワインは、レ・コステのビアンコ2020(グラス1,430円)

おすすめされたのは、3種類のブドウをブレンドしたオレンジワイン。「いろんな味の組み合わせがある料理なので、ワインもいろいろな品種を混ぜた複雑なタイプにしました。果実感と奥行きがあり、ちょっとほろにがさがあるタイプ。料理に寄り添いながら、味をまとめてくれます」と稲部さん。酸がしっかりしているところも料理にぴったりだった。

スパイシーな羊肉にはほどよくパンチのある赤ワインを

「仔羊のもも肉とクミンのアロスティチーニ」1,430円

neoでは、肉料理も小皿でいただける。「仔羊のもも肉とクミンのアロスティチーニ」は、食べやすく切ってあるが120gとしっかりボリュームがある。アロスティチーニとはイタリア中部のアブルッツォ州の郷土料理で羊肉の串焼きを指す。串焼きではなく一口サイズにして、クミンや唐辛子でスパイシーに仕上げられていた。脂身がほとんどない赤身肉なので、パクパクと食べられる味だった。

パーチナ2013(グラス1,430円)

アロスティチーニには、イタリアのサンジョベーゼ「パーチナ2013」が稲部さんのおすすめ。「仔羊のややクセのある風味にワインのスパイシーさや酸味や果実味、タンニンのバランスがちょうどよく合うワインです。ほどよくパンチがある組み合わせになります」。スパイシーな仔羊と赤ワインの酸味と果実味が素直に混じり合って、neoの陽気な気分をさらに高めてくれた。

グラスワインは約30種類を用意

neoにはイタリアの自然派ワインを中心にさまざまな国のワインが揃っている。特にグラスワインは約20〜30種類(1,100〜1,650円)を用意。好みや気分に合わせて、たくさんの種類から選べる。ボトルワインも80種類(5,500〜11,000円)あり、ウォークインワインセラーの中に入って選ぶことも可能。毎週、訪れてもいろいろなワインが楽しめる。