〈今夜の自腹飯〉
予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?
スタイリッシュな大人の空間
2022年4月に横浜駅から徒歩4分ほどの場所にある「HOTEL THE KNOT YOKOHAMA」の1階にオープンした「SMOKE DOOR(スモークドア)」。22年に渡り様々な飲食店を手掛けてきた雨宮 龍氏が独立し、代表を務める「株式会社 BOND CREATION」が運営する「薪火料理」をテーマにしたカジュアルレストランだ。モーニングからディナー、カフェタイムやバー利用まで、あらゆる用途に対応できる。駅から4分という立地ながら、喧騒を忘れさせるモダンで落ち着いた雰囲気で、店内にはソファ席や、オープンキッチンがよく見られるハイテーブル、風が吹き抜ける気持ちのよいテラス席などがあり、様々なシーンで使い分けができる。
1階の以前はフロントだった場所をバーカウンターに造り替え、軽食やオリジナルカクテルを味わえるのはもちろん、ウェイティングバーとしても利用できる。バーカウンターでアペリティフを楽しむ時間は、リラックスモードに切り替えられ、その後の食事をより楽しくおいしくしてくれるだろう。
バーからレストランへの移動のちょっとした距離も、この後の食事への期待を高めてくれる。薪火を感じる温度や、薪と料理の香りが、レストランに足を踏み入れた時に身体を包んでいくのも心地が良い。
エンターテイメント性の高い薪火料理
シェフのTyler Burges(タイラー・バージズ)氏は、料理業界のハーバードと呼ばれる世界一の料理学校CIA(The Culinary Institute of America)を卒業後、米国のミシュラン二つ星「Coi」、 三つ星「The Restaurant at Meadowood」、 一つ星「MichaelMina」、一つ星「Caviar Russe」等のレストランを経てSaison Hospitality(セゾンホスピタリティー)に入社。2009年に、サンフランシスコにて熾火調理を主とした料理スタイルでミシュラン三つ星を獲得し、「世界のベストレストラン50」にもランクインしたレストラン「Saison」にてエグゼクティブスーシェフに従事。更にSaisonの姉妹ブランドでミシュラン一つ星を獲得した、「Angler(アングラー)」ビバリーヒルズ店でシェフを兼任した。
石川県輪島で行われたイベントの料理人として来日した際、日本の食材や文化に魅了され2020年日本へ移住を決意。2022年、「SMOKE DOOR」のエグゼクティブシェフに就任。日本の食材のパワーやポテンシャルを活かしながら、Burges氏ならではの視点や技術で唯一無二の薪火料理に昇華させている。
いたるところに食材が吊り下げられたシェフのこだわりが詰まったキッチンには、常に動き続けるBurges氏の姿がある。その仕事ぶりを目にすれば、「SMOKE DOOR」のおいしさの理由がわかるだろう。「薪場」の前で団扇を仰ぎ火を送り続けていたと思ったら、次の瞬間には食材を盛り付けているなど、シェフが2人いるのではないかと思うほど、休むことなく食材に向き合う姿には感動を覚える。
火力が安定しない約200~1,200度という広い温度帯から食材の火入れに適したポイントを見つけるという、高度な技術が求められる「薪火料理」は、職人の腕が試される。一見豪快に思われるが、細かく火力を調整し食材の魅力を最大限に引き出す繊細さが重要な調理法だ。オープンキッチンに設置された「薪場」では、薪に着火した炎が収まり、芯の部分が真っ赤になった「熾火」にフォーカスした調理が行われる。遠赤外線の力でムラなく食材に火を通せ、食材から落ちる脂や水分が落ちることで上がる煙により、燻製がプラスされおいしさを増していく。
薪場を見学することもできるので、是非近くに行って薪の燃える心地よい音や温度を感じて欲しい。カウンター越しでも、薪火の熱気に驚くだろう。色々な木材を試し、現在は薪にオークを、スモークには桜を使用しているそうで、木の香りも楽しめる。