大好物のあの魚が、近い将来食べられなくなる!? そうならないために選びたい「サステナブル・シーフード」とは? 購入する際の目印や、サステナブル・シーフードが食べられるお店についてご紹介します。

水産物の約3割が獲りすぎ! 大好物のあの魚が近い将来食べられなくなるかも

普段、何気なく食べている魚やエビ、貝類などの水産物。国産か輸入か、天然か養殖か、といったことは気にしていても、その漁業や養殖の方法が海の環境に配慮したものであるかまでチェックしている人は、まだ少ないのではないでしょうか。

「乱獲」や「混獲」が海の生態系に影響

自然に繁殖している魚やエビ、貝類などの水産物は本来、その繁殖スピードを考慮しながら適正量を獲っている限りは、いつまでも食べ続けることができると言われています。しかし現在、水産物の3割以上が「獲りすぎ(乱獲)」の状態なのだそう。

漁獲のペースが繁殖を上回る状態が続けば当然、海の生態系は壊れ、近い将来食べることができなくなってしまう可能性も。また、漁で狙った魚以外の生物を一緒に獲ってしまう「混獲」による、ほかの魚種や生物への影響も無視できません。

1974年には10%ほどだった「獲りすぎ(乱獲)」とされている漁業資源の割合は、2017年には約30%に。いっぽうで「十分ある」とされている漁業資源の割合は、10%以下まで減少しています
※図表「世界の漁業資源の状況1974~2017年」「FAO世界漁業・養殖業白書(2020)を基にWWFジャパン作成」
海底でおもりのついた網をひきずる底曳き網(オッタートロール)漁。海底の環境や、生態系を傷つける可能性があります
(C) Brian J. Skerry / National Geographic Stock / WWF

養殖も無関係ではない

「養殖」なら海の生態系に悪影響を及ぼすことがないのかと言えば、そうではありません。養殖の場合は、養殖場の建設にともなう自然環境への影響、エサとなる天然魚の乱獲、養殖場から逃げた魚が生態系を乱す可能性などが懸念されているほか、劣悪な労働環境で行なわれている養殖業の存在も社会問題になっています。

もちろん、魚を獲ることや養殖業は、私たちが水産物を食べるためには不可欠なもの。あくまで、漁は適正な数にとどめて生態系に及ぼす悪影響を軽減し、養殖に関しても、環境に配慮された方法で行っているものを選ぶ必要があるということです。

海の環境を守って獲られた「サステナブル・シーフード」を選ぼう

このような状況を改善し、水産物の安定した供給と海の環境を守るために、私たちにできることのひとつが「サステナブル・シーフード」を選ぶことです。

「サステナブル(Sustainable)」とは「持続可能」「維持できる」という意味の言葉。「SDGs(持続可能な開発目標)」とともに、最近よく耳にするという方も多いのではないでしょうか。

解決策のひとつとして、水産資源の獲りすぎに注意し、環境に配慮した漁業で獲られた水産物や、環境と社会への影響を最小限に抑えた養殖場で育てられた「サステナブル・シーフード」があります。私たち消費者が選ぶ際の目印となるのが、天然の水産物につけられる「MSC認証」ラベルと、養殖された水産物につけられる「ASC認証」ラベルです。

「天然物」の「サステナブル・シーフード」につけられる「MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)認証」ラベル(左)と「養殖物」の「サステナブル・シーフード」につけられる「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証」ラベル(右)

下の写真は、筆者の自宅周辺で購入できたMSC/ASC認証ラベルが貼られた商品。水産物はもちろん、原料にサステナブル・シーフードを使用した水産加工品にも、ラベルが貼られています。

認証ラベルは予想していたより目立たない印象。取り扱われている商品数も少ないので、現状では「何気なく手に取った商品がサステナブル・シーフードだった」となる確率は高くはなさそうです。

参考までに、筆者が購入した商品の価格は、明太子(70g)が321円、ちくわ(3本入り)が95円、鮭の塩焼きが255円(すべて税込)でした。サステナブル・シーフードでないものより明らかに高いということはなく、もちろん、すべて味もおいしいです! 写真:食べログマガジン編集部