〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

周辺には行列のできるお店が点在。話題のエリア

Risosteria TRENTATRE 外観
2駅を利用でき、いずれも徒歩8分ほど。黄色い壁が目印の一軒家レストラン。

清澄白河駅と門前仲町駅のほぼ中間地点に一軒家レストラン「Risosteria TRENTATRE (リゾステリア トレンタトレ)」がオープンした。駅からは少し歩くが、周辺には人気のパン屋や行列のできる飲食店などが点在する注目のエリアだ。

店名に掲げる「リゾステリア」は、リゾットとオステリアをかけ合わせた造語だ。シェフの濱本圭亮さんがこの店をオープンするにあたり、リゾットをメインに据えたことから考えたという。

前菜はマンマの味。カリカリ、もっちり、ほっくりのフリッコ

Risosteria TRENTATRE フリッコ
揚げ焼きをしているのでカリッとした食感が楽しめる。上からさらにチーズをかけて風味を倍増させている。

同店では、コースはリクエストに応じて5,500円から組み立てるが、アラカルトでの注文が基本。春夏、秋冬にグランドメニューが変わり、季節のメニューは「本日のおすすめ」で紹介されている。

前菜は「自家製フォカッチャと全粒粉のパン」や「大山鶏のパテドカンパーニュ」など全12種類あり、そのなかでも人気なのが「ポテトとチーズのお焼き フリッコ」(550円)や、「黒毛和牛のトリッパの煮込み 緑と赤のソース」(1,320円)など。

フリッコとは、イタリアの北部、フリウリ地方の郷土料理で、つぶしたじゃがいもにチーズを入れた料理だ。じゃがいもを裏ごししてトロトロにしたグラタン風のものもあるが、同店のフリッコはシェフがイタリア留学中に知り合った友人のマンマのレシピ。生のじゃがいもを形が残る程度の粗さですり下ろしてチーズと混ぜ、カリカリに揚げ焼きしたお焼き風になっている。

生のじゃがいもから焼き上げているので、もっちり感がありながらもホクホク。おつまみ感覚で、ワインと一緒に楽しんでも良いだろう。

トマトじゃない。新鮮なハチノスだからできる真っ白なトリッパ

Risosteria TRENTATRE トリッパ
真っ白なトリッパの煮込み。インゲン豆の甘さもちょうど良い。

トリッパと言えばトマト味が定番だ。トマトのうまみとハチノスの濃厚で甘い脂が良く合うからだが、モツであるハチノスの臭み処理も兼ねている。

だが同店では、と畜場と直接契約して新鮮なモツを扱う業者から仕入れているため、非常に新鮮なハチノスが手に入るという。そのため、ハチノスは玉ねぎやセロリなどの香味野菜とハーブ、塩で煮込む下処理だけ。通常は何度か煮こぼしをするが、それもしないで野菜とハチノス自身が持つうまみだけで仕上げている。つまり、提供されるトリッパの煮込みは真っ白なのだ。

トマトなどの余分な味がしないから、純粋にハチノスそのものの味わいがじんわりと口に広がる。脂の甘みが舌に残り、ほのかな塩味が旨みを高め、後を引くおいしさだ。

塩味のみでも十分だが、添えられている緑と赤のソースで味変してもいい。フレッシュパセリのサルサヴェルデのソースと、唐辛子とトマトを使った辛味のあるハリッサのソースの2種があり、違った味が楽しめる。

絶妙な歯ごたえでクセになるリゾットたち

Risosteria TRENTATRE リゾット
赤ワインの旨みがしっかり絡まった米と、ほっくりしたウズラ豆の食感が良い。

濱本シェフ曰く「日本のイタリア料理店にはパスタは数種類あるのに、リゾットは扱っていないか、あっても1種類ほど。でも、本場イタリアではポピュラーな家庭料理で、たくさんの種類があり、そのどれもがとてもおいしい」。また、滞在していた町ヴェルチェッリは米どころだったこともリゾット推しを決めた要因だ。

グランドメニューに書かれたリゾットは9種類。これに本日のおすすめ1~2種類が加わる。リゾットのオーブン焼きといった珍しいメニューもあり、これほどにリゾットが選べる店もそうはないだろう。

おすすめは「生サラミとパルミジャーノチーズ、赤ワインのリゾット」(1,760円)。ヴェルチェッリの郷土料理で、ソフトサラミと赤ワインのリゾット「パニッサ」を自家製の生サラミで提供している。タンニンの渋みが深い味わいを引き出し、ワインの香り高い一品だ。

アルデンテの秘訣は「マンテカーレ」

Risosteria TRENTATRE リゾット
鍋の中で米を素早く、力強く混ぜ合わせる「マンテカーレ」が、リゾットをおいしくする。

おいしいリゾットの指標の一つにアルデンテがある。アルデンテは歯ごたえが残る状態を指しているので、パスタだけではなくリゾットにも用いられる。
シェフのつくるリゾットは完璧なアルデンテだが、これに加えて味の要となるのが「マンテカーレ」という手法だ。素早く力強く混ぜ合わせることで油と水分が乳化し、米一粒一粒にソースが絡んだリゾットが出来上がる。

もう一つ、濱本シェフがこだわるのが素材。滞在していたイタリアのマンマがつくるリゾットは、とてもシンプルで豪快なのにちゃんとおいしい。その理由が素材の良さだと知り、この店をオープンするにあたり、イタリアのカルナローリ種というリゾット米を取り入れた。オステリアでこのレベルの素材を取り入れ、いずれも1,000円台半ばで提供しているのは、シェフの強いこだわりだ。