【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2022年4月を振り返る

今年のゴールデンウィークはコロナ禍において初めて緊急事態宣言もまん防も発出されていないということで、外出や旅行を考えている方も多いようです。いわゆるwithコロナの時代。当然感染対策は心がけながらも今までのように動かないではなく、どう動くかを考えるフェイズに入ってきたということでしょう。今月のカレーとスパイスも、この機会に行ってみてほしいお店ばかりです。

おしゃれなカフェに見えて攻めたインド料理とスパイス料理を味わえるお店。お好み焼き居酒屋でありながらスパイス使いが個性的でビリヤニまであるお店。韓国タウンでありネパールタウンである新大久保エリアのナイスビューな新店舗。ドラマチックな移転を果たした昼カレー夜お酒のマニアなら誰もが知る名店。仙台で出合ったハードルは低いながら本格的なバングラデシュ料理店。

以上5店舗。最近は見た目が美しいスパイスカレーばかりを食べ歩いている方も増えているように感じます。スパイスカレーも良いですが、現地料理の魅力を知ってこそスパイスカレーの楽しさもより深く感じられるもの。ガチガチの現地料理店は入りにくいという方にも、今回ご紹介したお店は入りやすい雰囲気だと思いますので是非チャレンジしてみてください。新たな扉を開くことができますから!

【第1週のカレーとスパイス】見た目はおしゃれなカフェ、味は本格派。カレーマニアも唸るスパイス料理店「Vaji&Spice」

代々木八幡駅・代々木公園駅から歩いて数分の場所に「Vaji Spice」というお店があります。

コンクリートの無機質な雰囲気の中に自然の緑が共存している洗練された空間。テラス席もあり、非常におしゃれなカフェのような雰囲気なのですが、こちらのフードのメインはインド料理を基調としたカレーなのです。

看板メニューの「Vaji Thali」は選べるカレーにダル(豆スープ)、ポリヤル(南インド料理で野菜をスパイスやココナッツと炒めたもの)、紫玉ねぎのアチャール(インドのスパイス漬物)、半熟卵のアチャール、パパド(インドの豆せんべい)、バスマティライスと酒米のブレンドライスがつく豪華なターリ。

「Vaji Thali」

カレーの数と種類で価格が変わるのですが、今回は「2種」1,490円でチキンカリーとネパール山椒キーマ(+200円)をチョイスしました。

まずチキン。スパイスで色づいた美しい油。見ただけでおいしいとわかります。インド料理はこの油の浮き方が大事ですから。食べてみると予想より辛め。と言っても辛すぎるというわけではなく程よい辛さなのですが、カフェのようなお店であり客層もおしゃれな女性や家族連れが多かったので辛さも控えめなのだろうと想像していたんです。しかしそこに遠慮はなく、この辛さだからこそおいしさが際立つというバランス感。さらにはインド料理とはまた違ううま味と深みを感じたのですが、これは塩麹によるもの。カフェだからこその自由さもあり、これは凄いぞと唸りました。

写真左から、山椒キーマとチキンカリー

続いて山椒キーマ。紫色のエディブルフラワーもほどこされ、見た目にはやはり女性向けの美しさがあるのですが、食べてみるとこれもビシッと痺れがきて心地よいスパイス感。ネパールの山椒ティンブールが遠慮なく利いた豚挽肉のキーマ。これまた凄いです。

しっかりと良い意味での角があるカレーに対してダルは軽やかで柔らか。半熟卵も辛さを包み込むのに一役買っています。このバランス感が絶妙なのです。さらなる刺激を求める人には辛味調味料も2種。赤、青の唐辛子をメインとしながらそれぞれ違った辛みがあり、食べ比べるのもまた楽しいです。

トータルではこれだけしっかりとスパイスが立っていると、慣れていない人には受け入れられないのではないかとも思ったのですが、こういうおしゃれなお店でこのような強いスパイス使いで作ったおいしい料理を出してくれているというのは、スパイス料理に興味がなかった人にその魅力を伝えるきっかけともなるなと思いました。

カレーで終了するつもりだったのですが、これだけカレーがおいしいならドリンクもデザートも期待できると考え「チャイ」400円(セット価格)と「ココナッツキャロットケーキ」650円も注文すると、店員さんが「フルコースですね!」と。「はい。カレーがとてもおいしかったので他のものもおいしいに違いないと思いまして頼みました」と伝えると「そうなんです! 全部おいしいんですよ! 私も元々客として通っていたんですが好きすぎて働き出しちゃったんです」と素敵な笑顔で。

わかります。それだけの魅力がありますよね。いや、ドリンクとスイーツの魅力はまだ味わってないか。

「チャイ」と「ココナッツキャロットケーキ」

と思っていると出てきたチャイとケーキ。

まずチャイを一口飲んでまた驚きました。非常にきめ細かな泡立ちなのです。そしてこちらもまた遠慮ないスパイス感。ともすると好き嫌いが分かれそうな程にしっかりとスパイスが立っていて、それがとてもおいしいのです。

キャロットケーキも人参とココナッツの食感と風味が良く、フロスティングも爽やかな酸味が印象的で、甘さが強すぎないチャイとの相性も良いです。いやはや参りました。

さらにメニューを見てみると、週替わりでカレー以外の様々な料理を出しているのも気になりましたし、おつまみ系も充実している様子。朝昼夜と、それぞれで表情を変えてくるお店ということです。

これはまた行かねば。

一見おしゃれで初心者向けに見えて実は攻めまくった味であり、独自の工夫もあって個性あるおいしさの料理の数々。日頃、店構えからして本格的なカレー店といったタイプのお店には入りづらいと感じている方にこそ是非とも行ってほしいお店です。カレー、そしてスパイスに対する印象がきっと変わることでしょう。

※価格改定の可能性があるとのことなので、それぞれの価格に関してはお店にお問い合わせください

【第2週のカレーとスパイス】お好み焼き屋なのに本格スパイス料理が食べられる、唯一無二の新店がスゴイ! 「キクヤ」

カレー関係のお店が増えてきたことに伴い、カレー激戦区と呼ばれる街も増えてきました。三軒茶屋エリアも10年程前まではカレーの名店を数えても片手で足りるくらいでしたが、近年はすぐに両手が埋まってしまうくらいに良いお店が増えています。そんな中で今年1月にオープンした「キクヤ」というお店も、カレー専門店ではないのですが非常に面白いお店であり、スパイス料理ファンにとっては注目の新店舗です。

こちらのお店、メインはどうやらお好み焼きの居酒屋。それでいて、様々な料理にスパイスを使用していて、その使い方が実に面白いのです。

「スパイス茶割(黒)」

まずは「スパイス茶割(黒)」650円で乾杯。カシア(香りの強いシナモン)が利いたほのかに甘みも感じるお茶割り。ヘルシーです。これと一緒に出てきたお通しが興味深いものでした。

お通しのパニプリ

パニプリというインドのスナックなのですが、通常は球形でサクサクの生地の中に酸味のあるソースが入るもの。しかしこちらのお通しは、だしが注がれます。食べてみると中にはタコ。たこ焼き、あるいは明石焼きのような味に変化するのです。

「季節の前菜五種盛」

「季節の前菜五種盛」1,500円は、メース(ナツメグの種子のまわりの網目状の赤い皮の部分)の香りをまとった芹のおひたし、マスタードシード風味の新大根の浅漬け、フルーツ人参とブラッドオレンジのココナッツの酢の物はキャロットラペのアレンジ、アチャールのような牡蠣のオイル漬、そしてコリアンダー香る金柑とチーズのムースという、それぞれがスパイスを印象的かつ効果的に使用したもの。この時点でこちらのお店がただ者ではないことがわかるでしょう。

「スパイスおでん盛」

続いて「スパイスおでん盛」1,200円を食べてみると、これはおでんつゆがサンバル(南インドの野菜カレー的な料理)のような仕立てになっています。サンバルとだしのうま味の掛け算で他にないおでんとなっていました。

まだまだあります。なんとこちら、「ビリヤニ」1,500円があるんです。お好み焼き居酒屋なのに!

「ビリヤニ」

しかもビリヤニも本格的。マトンビリヤニにライタ(インドのヨーグルトサラダ)にココナッツカレーも付いてきます。パラッと軽やかに炊かれたバスマティライスにマトンの重厚感。ライタやカレーをかけて食べるとなかなかの量にもかかわらず、スプーンが止まらず一気に食べてしまうようなおいしさです。

ここまででお腹もだいぶ満たされていたのですが、お好み焼きがメインなのにそれを食べていないことに気づいたのと、これだけ色々おいしいならお好み焼きも普通ではないはずだと、ねぎ焼きを頼もうとしたら「スパイス系がお好きでしたら、いか玉の方がおすすめです」と。ならば「いか玉」1,200円にしないわけにはいきません。そしてこれがまた凄かった!

まず見た目からして黒いんです。これにチーズを削ってかけてくれます。さらに黒いソースが付いてきました。これは何か聞いてみると、何とマヨネーズだというじゃないですか。混乱しながら食べてみれば、お好み焼きにはソースの味が付いており、これに黒いマヨネーズをつけて食べるとマスタードシードの程よい苦味を感じました。これがとても合うのです。こんなお好み焼き初めてですよ。

「いか玉」

どの料理にもスパイスを使用しているというわけではないそうですが、メニューを見る限り過半数はなにがしかのスパイスを使用した創作料理に見えました。他の料理も気になるものばかり。個人的にはビールは飲まないのですが、クラフトビールにもこだわっているということでビール好きでスパイス好きな方にはたまらないでしょう。もちろんどちらか一つ好きでも十分に楽しめますし、どちらも興味がないという方でもおいしいものや面白い料理が好きなら問題なしです。

種明かしをすれば、お好み焼きのお店で修行したというマスターと、カレー好きなら誰もが知る超名店で働いていた方がタッグを組み、様々な料理を生み出しているという形。だからこその面白さなのです。

既にカレー界隈の方々、同店がまん防期間に行っていたモーニング営業やランチ営業(現在はモーニング営業はしておりません)に足を運んでいる人がちらほら見受けられますが、こちらのお店の真骨頂は夜にあります。一度行ったことがあるという方も是非また夜に行ってその飛び抜けた個性を再確認してほしいです。

激戦区三軒茶屋においても他に類を見ないお店であり、東京を探しても、いや、全国、世界を探してもこのスタイルは他に無いでしょう。まだ開店して3ヶ月あまりでこのレベルの高さと個性の際立ちよう。通いたいお店がまた増えてしまいました。