たい焼きマニアに聞く!たい焼きの奥深き世界とオススメ店

誕生から100年を越える歴史がありながらも、いつまでも安価な駄菓子であり続ける奥ゆかしいお菓子「たい焼き」。今まで3,700匹ものたい焼きを食べ尽くしてきた偏愛フーディスト、イワイサトシさんにその魅力と美味しいたい焼きが食べられるお店を聞いてきました。

Q. 魅力はなんでしょう?

たい焼きは明治42年創業の浪花家が発祥であり、現在まで多くのたい焼き店が都内で営業をされていて、その数は他の五大都市圏の倍以上です。ついては私はたい焼きを「東京の名産品」であり「東京の食べる民芸品」であると考えております。

出典:なおふぅさん

更に鯛は縁起物の代名詞で、あんこの原材料である小豆は赤色が穢れや魔を祓うとされ、神事の供物に用いられています。この縁起物のふたつが融合したことで、たい焼きは「招福」と「破邪」の特性を持った「食べるお守り」という側面も持ち合せた唯一無二の存在なのです。そして、どんな老舗でも一匹200円を超えるたい焼きは少なく、だからこそ私でも毎日食べることができます。

出典:セッチMANさん

またお店毎の工夫によってあんこの「甘い」だけでなく、ピザなどの洋風からお好み焼きといった和風はもちろん、具材としてエビチリやカレーにまで至る「しょっぱい」アレンジを難なく受け入れる懐の深さで私を飽きさせることがありません。

出典:sanokuniさん

最近ではウィークポイントだった夏場も冷たい「夏たい焼き」や「アイスクリーム入りたい焼き」などで克服してみせる逞しさも発揮して進化を止めない姿勢も素晴らしい。もちろん愛らしい姿はインスタ映えもします。私も買い求める毎に細々と画像をアップしています。

Q. 美味しい食べ方は?

出典:うえそぎさん

かねてより私自身「たい焼きには食べ頃が5回ある」を提唱しております。

  1. “焼きたて”。皮もあんこもアツアツの時をガブリと喰らい付く。火傷は必至ですがその代償を払う価値があるといえます。
  2. “焼き上がり約5分後”。粗熱が取れて皮のパリパリ感が極に達したたい焼きになっているので、皮のポテンシャルを歯応えで感じてもらいたいです。
  3. “焼き上がり約30分後”。皮はシットリし始めモチっとした食感を発揮し、あんこの熱も収まって両者とも本来の甘味と旨みが満喫できる瞬間でしょう。
  4.  “常温時”。ここに来て和菓子“たい焼き”との対峙が始まります。各素材本来が持つ味や香りを余すことなく楽しめるひと時です。
  5. “焼き直し時”。個人的にはオーブントースターで両面5分焼いた後、電子レンジで30秒の追加熱をする。すると皮はパリパリであんこは中心に冷めた部分を残します。店では実現できない食べ心地を味わってください。

Q. 食べるときのこだわりは?

出典:anne38さん

「食べる時」ではないですが週末は昼食に、そして平日は夜食に毎日食べています。毎週末たい焼きを7匹購入して、もし初めて訪れるたい焼き店の場合は開店時に伺い、その日一回目に焼いたたい焼きを購入します(焼きたてを手に入れるのは開店直後が確実です)。そして購入後すぐに2匹食べますが、1匹目は皮を重点的に食べて粉の風味を味わい、2匹目はあんこに注目して全体の柔らかさや小豆の硬さや皮の歯応えを確認しつつ食べ進めます。

出典:アグネスきょんさん

一方、持ち帰ったたい焼きは翌週末までの間に毎日1匹ずつ夕餉の主食になります。その際は日が経つにつれ変化する皮の硬さやあんこの水気などを堪能します。特にあんこは水分が抜けると密度が高まり、購入時とは違った味わいになるのでその変化を愉しむのです。

 

 

ちなみにたい焼きといえば頻繁に「頭から食べる or 尻尾から食べる」という論争がなされますが、私はケースバイケースでその辺にこだわりはなく、手に取った時の状況に則して食べます。

Q. たい焼き好きあるある話は?

  1. 道を歩いている時、遠くに赤い幟を見つけると、未知のたい焼き店ではないかと期待してついつい近くまで見にいってしまう。
  2. 小麦粉とあんこの焼ける香りに敏感になる。独特な香りなので結構離れた街中や食品の香りで溢れるデパ地下でもすぐわかるようになる。
  3. 夏になるとたい焼きの販売を休止する店や、長期休業(つまりは夏休み)に入る店が多いが、そんな時に限って急にその店のたい焼きが食べたくなる。
  4. 待つことが苦にならなくなる。
  5. 訪れたお店が臨時休業でも舌打ちしなくなる。たい焼き屋を営むのはたいへんなことなのでたまには急にお休みをしたくなるのは仕方ないのです。

たい焼きマニア・イワイ サトシさん推薦!お気に入りのお店3選

鯛焼きのよしかわ(東伏見・吉祥寺)

青いバンでやって来る一丁焼きの人気店です。極限まで薄く焼き上げられた皮と、甘さを抑えた液状化寸前のあんこが手に持った瞬間から自重で変形し始めて瞬く間に柔らかくなるので、ここは買ったその場で焼きたてにかぶりつきたい。

たい焼きCAFÉ 楓(中野富士見町)

たい焼きのあんこといえば大概の店がつぶ餡なのですが、こちらのお店にはつぶ餡とともにこし餡のたい焼きが売られている都内でも数少ないお店です。そのたい焼きと一緒にドリンクを買ってオープンテラスで頂くこともできます。

島京梵天(伊豆大島)

伊豆大島南端にある波浮港の近くにあるたい焼きカフェ&古民家ゲストハウスでは、島の恵みを使った王道つぶ餡たい焼きの他に、食事系の酵素玄米トマトリゾット入りたい焼きが売られています。あわせて食べて欲しい逸品です。

◆プロフィール

イワイ サトシ:これまでに東京のたい焼き約3,700匹、豆大福約2,500個を食べ続け、“その筋”では「餡子食う大魔王」と呼ばれる。その知見をもとに『東京のたい焼き ほぼ百匹手帖(立東舎)』、『私がしあわせな東京豆大福五〇の覚書き』(TOKYO NEWS BOOKS)を執筆。二冊共にグルメ本としては異例のロングセラーとなり、現在もテレビ、ラジオ、新聞でも「たい焼き」「豆大福」の魅力を伝えている。たい焼きを始め、あんこを使うお菓子の開発アドバイザーも手掛ける。本業はグラフィック・デザイナー。

 

文:アキレウス