〈自然派ワインに恋して〉

シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。

ナビゲーター

岡本のぞみ

ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。

グリーンと北欧家具の心地よい有機的空間

内観。店内の椅子はフィン・ユールやハンス・J・ウェグナーの作品

多摩川の水と緑が豊かな二子玉川は、暮らすにも、お出かけするにも、おだやかに過ごせる街。2024年6月にオープンしたワインバー「Padde(パドル)」は、そんな二子玉川らしい有機的空間が広がる。店内は広々としており、大きな観葉植物や北欧ヴィンテージのインテリアが居心地をよくしてくれる。

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左から料理人の西村悠佑さん、オーナーの宮崎聡史さん

オーナーの宮崎聡史さんは広告プロモーションの会社を経営。二子玉川で事務所を探していたところ、玉川髙島屋裏の繁華街に思っていたよりも広い現在の物件に遭遇。元々、自然派ワインが好きだったこともあり、思い切ってワインバーを開店することにした。

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ボトルワインはセラーに入って選ぶことが可能

「二子玉川にはこの5年、玉川髙島屋の周辺に自然派ワインで角打ちできるワインショップが2軒でき、自然派ワインを楽しむ文化ができつつあります。そんな自然派ワイン好きの人がふらりと立ち寄れるワインバーを作りたかったんです」と宮崎さん。こうして二子玉川らしい心地よい空間のある自然派ワインバーが完成した。

カルパッチョ✕自然派シャブリ

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カルパッチョ(1,800円)

パドルでは、おつまみだけでなく前菜や肉料理、パスタもアラカルトで用意され、ワインに合うようにアレンジされている。「カルパッチョ」は旬の白身魚を使用。この日は大分のイサキを並べ、ハーブをふんだんに添えて、花束のようなかわいい見た目に。ドレッシングはレモンをベースにりんごを加えて、フルーティーに仕上げられている。

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モロー・ノーデ シャブリ2022(グラス1,600円、ボトル14,500円)

白身魚のカルパッチョにおすすめなのは、フランスのシャブリ。「こちらのシャブリは樽がかかっておらず、素直なすっきり感が味わえます。白身魚に白ワインという王道の組み合わせを楽しんでください」と宮崎さん。柑橘系のドレッシングやハーブとも相性がよく、軽快に食事の始まりが楽しめるマリアージュだった。

ステークフリット✕フルボディ赤ワイン

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ステークフリット(2,800円)

肉料理はビストロの定番である「ステークフリット」が用意されている。赤身の牛肉をバターでソテーして、ピンク色がきれいに出るように火入れ。甘みのある赤ワインソースに生コショウがアクセントになっている。フレンチフライにもローズマリーの香りが漂ってくる、風味豊かなステークフリットだ。

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ドメーヌ・ド・ラ・グランクール フルーリー シャンパーニュ ヴィエイユ・ヴィーニュ2018(グラス1,400円、ボトル12,000円)

ステークフリットにおすすめなのは、フランス・ボージョレ地方のガメイを使った赤ワイン。「たっぷりした果実味としっかりしたタンニンがあるクラシックな感覚の赤ワインです。赤身のジューシーな肉料理にはぴったりとはまります。」と宮崎さん。クリュ・ボージョレのパワフルさがありながら、ガメイらしいチャーミングな香りがあって、楽しみながら食事が進む組み合わせだった。

チーズケーキ✕フルーティ白ワイン

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パドルを訪れて、必ず食べたいのが自家製のチーズケーキ。こちらは“ワインに合うチーズケーキ”をコンセプトに開店までの3カ月レシピを変えて試行錯誤した逸品だ。完成したチーズケーキは、小麦粉を使わず、複数のチーズとスパイスを独自の分量で作成。ホワイトチョコレートなどの隠し味を入れたチーズテリーヌのような焼き上がりとなっている。

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チーズケーキ(1,000円)

食べてみると、チーズケーキなのにフルーツケーキのような複雑な風味を感じる絶品の味わい。濃厚な風味はあるが重たさはなくふわふわした口どけやチーズケーキのクリーミーさを楽しめる、贅沢なとろ旨食感がくせになるおいしさだった。

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レ・バルバトラクス バルバスカット 2022(グラス1,600円、ボトル12,500円)

チーズケーキに合わせたいのは、フランス・ジュラ地方の白ワイン。「チーズケーキが濃厚なので、さっぱりとしたフルーティーな白ワインがおすすめです」と宮崎さん。ワインにはフローラルな香りと木の実のようなニュアンスや旨みがあり、それでいてフレッシュさもあるため、チーズケーキのフルーツフルでクリーミーな味わいを爽やかに引き立てていた。

宮崎さんの「私が恋した自然派ワイン」

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オリヴィエ・コエン デフェルラント・オランジェ2023(グラス1,200円、ボトル9,500円)

宮崎さんが恋したワインは、南仏・ラングドック地方のオレンジワイン。

「3年前くらいに出会ったオレンジワインです。オレンジワインは渋みがあって濃いイメージがありましたが、こちらのオレンジワインは酸味が利いていてさっぱりと楽しめるのがおいしいなと思い、オレンジワインのイメージが変わりました。ひっかかりがなく飲みやすい好バランスのワインで、ラベルもかわいいのでおすすめです」

フランスのナチュラルワインを中心にラインアップ

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パドルではフランスの自然派ワインを中心にラインアップされている。「エリアとしてはアルザスやロワールのワインが多いですね」と宮崎さん。自身の好みが反映されたワインをお客様にもすすめたいという思いがあり、華やかな香りがあるワインやほろ苦さや酸味の利いたワインなど、きれいめな中に個性を発揮したタイプのワインが多い。グラスは常時7〜8種類(1,000〜1,600円)、ボトルは120種類(6,500〜15,000円)用意されている。

食事も楽しみながらゆったりと過ごして

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パドルへはビルの内階段を上って入口へ
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外観

パドルは仕事帰りにチーズケーキとワインで一杯というのが定番の使い方ながら、料理が充実しているので、早い時間から楽しむのもおすすめ。心地よい空間は夜の時間に癒やしをもたらしてくれるだろう。

※価格は税込

取材・文:岡本のぞみ(verb)
撮影:山田大輔