産地を熟知する仲卸ならではの品揃え
同店が得意とするもうひとつの高級魚、甘鯛は昆布〆でいただく。昆布の旨みがしっとりと鯛にしみこみ、これまた立ち食いとは思えない味わいが楽しめる。
鯛に限ったことではないが、寿司ネタに使われる魚は必ずしも〆たてが一番おいしいわけではない。仕事を施して寝かす、熟成させるといった工程を経ることで旨味が何倍にも広がるものは多い。
現在は、活魚への人気の高さや、自分の店でしっかりと仕込みをするために活魚を仕入れる寿司店も多いが、島津さん曰く「しっかりした産地のしっかりした出荷者さんが〆た魚は本当においしい。豊洲に入ってきた時点で寿司ネタにできると感じるものもある」とのこと。ところが活魚のほうが人気も価格も高いため、産地〆は安価になりがちだ。そこで三六五の出番となる。本来なら550円の価格帯に入るネタが、440円や380円で提供できてしまうのだ。これもまた、産地を熟知する仲卸ならではのネタであり、コスパの良さである。
豊洲での取扱量は激レア「赤ウニ」。品揃え次第では食べ比べも
この日の最後は、贅沢にウニで締めくくることに。お品書きには770~990円の3段階でそれぞれムラサキウニ、赤ウニ、蝦夷バフンウニがならび、こういった品揃えの時は全部を頼んで味比べをする客も多いそうだ。
いただいたのは、ウニの中でもレアな赤ウニ。山口県産。
ウニというと北海道産が人気だが、実は昔から西日本のほうで良いものがとれると言われていたそうだ。その後、人気も質も北海道が頭角を現してきたが、今でも山口県産のウニの質は高い。その中でも赤ウニは取扱数も少なく、そもそも出荷数もほとんどないとのことで、仲卸である島津商店と産地との繋がりによって仕入れているものが店で提供されているのだ。
ウニの旨みと甘みがぎゅぎゅっと凝縮された、とろける食感が格別の一品だった。
その価格には理由がある。豊洲の今を反映する店
このように同店が扱うネタは、一般人にとって有名どころではないけれど、実はプロたちの間では質の高いことで有名な産地のものなどが多い。その分、お値打ち価格で提供ができるのだ。
同じように、旬から少し外れるが「なぜか今、コレがおいしい」という魚介類が、この自然界には時折登場する。取材時期でいうと、千葉県館山産のヒラメがまさにそれで、寒ビラメの旬は終わっているが、今もおいしい盛りとのことで380円で提供されていた。
中心価格帯となる380円の寿司ネタは6種類前後。440円の寿司ネタで6~7種類ほど。大体1人10貫ちょっと食べたとしても5,000円前後で質の高い寿司が楽しめる。立ち食いに価格だけを求めるなら激安とは言えないが、質と価格のバランスのコスパはすこぶる良い。
しかし、同店の魅力はそれだけではない。最初はコスパの良さで訪れた客も、プロが選んだ今の豊洲の仕入れを反映するような品ぞろえや、予想外の産地の予想以上のおいしさ、なじみの薄い魚介類との出会い。そういったライブ感に惹かれ、何度も足を運んでしまうのだ。
【本日のお会計】
・エボダイ 280円
・小肌 280円
・平貝いそべ巻き 330円
・ホッキ 330円
・煮蛤 440円
・本まぐろ赤身 440円
・甘鯛昆布〆 550円
・のどぐろ炙り 660円
・赤ウニ 880円
合計 4,190円
※価格はすべて日替わり、税込