〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

豊洲の仲卸による立ち食い寿司が末広町にオープン

三六五 店舗外観
店名の「三六五(さんろくご)」は住所から。仮の店舗名で知り合いのデザイナーにロゴを依頼したところ、そのまま店名となった。

近年、人気の立ち食い寿司。立ち食いとは思えないハイレベルなネタを提供する店が増えている。そんな人気のジャンルに、築地時代から続き、現在は豊洲で魚を扱う仲卸「島津商店」が参入した。それが、末広町にオープンした「三六五(さんろくご)」だ。

三六五 店舗内観
店内はカウンター12席のみ。1席ずつの幅が広いのでゆとりがある中で食べることができる。

なんといっても母体は仲卸。銀座をはじめとした寿司屋にも魚を卸している魚のプロだ。良いモノしか提供しないのは当然として、どこまでコスパ良く、またわくわくしてもらえる寿司を提供できるかが、オーナー島津修さんの挑戦なのだ。

本日のネタと価格は、その日だけ。日替わり、ライブ感が満載

三六五 本まぐろ赤身
まぐろは「島津商店」の隣の店舗、島津さんの同級生というまぐろ仲卸の社長が、同店の酢飯にぴったりの「イイ感じ」なものを厳選してくれる。

同店のお品書きは完全な日替わり。その日の仕入れによって毎日、ネタは変わる。注文方法はお好み制で、それこそ1貫だけつまんで帰ったり、同じネタを5貫だけ食べたりすることもできる。これぞ王道の立ち食い寿司だ。

価格帯は一番安価な1貫280円からスタートし、330円、380円、440円あたりを中心にお得なネタが揃う。そこに550円、660円などの上2桁ゾロ目の価格帯が990円まで続く。仕入れによって価格帯も随時変わるため、取材日に440円だった本まぐろ赤身が300円台で提供されることもあれば、本まぐろ中トロ相当に脂ののったネタが440円で登場することもある。その日にしか出会えない、ライブ感溢れるネタと価格帯なのだ。

1貫280円から990円までのハイコスパな日替わりネタ

左からエボダイ、小肌(各280円)。「魚のおいしさを伝えたい」と、一般客には馴染みの薄いエボダイなども扱う。※価格は日替わり

注文方法はカウンターにあるネタが記載された紙に個数を記入し、一度にまとめて注文する方式。もちろん追加注文も可能だが、基本は最初に注文した内容を見た職人さんが、良い順番でひとつずつ握って出してくれる。

この日は280円のエボダイと小肌からスタートした。ちなみにエボダイは330円で提供される日もあるという。小肌の酢を利かせたスッキリした味わいや、エボダイのやさしい甘みに、次の寿司への期待も高まる。

生ホッキや煮蛤など、確かな仕事が光る貝類

三六五 平貝いそべ巻き、ホッキ、煮蛤
左から平貝いそべ巻き、ホッキ(各330円)、煮蛤(440円)。仕込みは「銀座の寿司店と同レベル」がモットー。※価格は日替わり

同店ならではのネタのひとつに貝類がある。貝類は鮮度と仕込みが命のネタ。鮮度はもちろんだが、特にホッキなどは丁寧に処理することで臭みを感じさせずに、生で食することができる。

一方で、ハマグリは丁寧に柔らかく煮込んだ煮蛤として登場。ツメ無しで、そのままでいただくことで、ふわりとした甘みが口の中に広がる一品となっている。

平貝は軽くあぶって海苔を巻いた、平貝いそべ巻き。鼻に抜ける香ばしさが食欲をそそる。このほか季節であれば、とり貝なども生で楽しめるという。

コスパの良さの理由は「仲卸あるある」。だからこそのお得感

三六五 のどぐろ炙り
予想以上に大きく質の良いのどぐろが手に入ったことで、同店のネタとして登場。

本業である島津商店が得意とするのが、のどぐろや金目鯛、甘鯛といった高級魚。皮と身の間の最もおいしい部分を余すところなく味わってほしいと、のどぐろは炙りで提供された。これがこの日は660円なのだから、コストパフォーマンスの良さには舌を巻いてしまう。

ちなみに、この日のコスパの良さの理由は、仕入先からせり場で売れ残ったのどぐろを安価だが大量に仕入れることになったものの、得意先に納品してもまだ余ってしまったからだという。通常であれば、翌日に持ち越しても売り先を探すのだが「せっかくなら鮮度の良いうちに自分の店で出そう」となったのだ。なんと、ありがたいことだろう。客がそんなご相伴にあずかることあるのは「仲卸直営」だからこそだ。