教えてくれた人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。「東京最高のレストラン2024」が発売中。

高級名店出身の若手の居酒屋と、都心に進出のスリランカ料理店

一流の味を“食堂”でカジュアルに

9月24日、新宿御苑前に「食堂わた」がオープンしました。店主の櫻井航さんは、人気料理人を輩出する「銀座 小十」出身。その後、「赤坂おぎ乃」「西麻布野口」と有名店を経ての独立なのですが、なんとまだ29歳。日本料理の世界では異例の若さです。

そしてそんな櫻井さんが選んだのは、昼は定食、夜は居酒屋というカジュアルな業態。もっと気軽にご飯や日本料理のおいしさを楽しんでほしいという思いからだそうです。土鍋で炊き上げるのは西麻布野口同様、群馬県産の「雪ほたか」。幻のコシヒカリともいわれるお米で、このご飯食べたさに昼は大人気のようです。

「鮭いくら木の子土鍋御飯」 撮影:大木淳夫

夜にうかがいましたが、強いにおいのため日本料理店では出せないニラに卵黄をのせたお浸しや、マスカルポーネを加えたフルーツの白和えなどが、どうにも日本酒を誘います。締めはもちろん見目麗しい「鮭いくら木の子土鍋御飯」を。一膳のつもりがあまりの美味にお代わりをしてしまいました。紹介しておいてこう言うのもなんですが、櫻井さんの志通り、予約困難店ではなく誰もが訪れて笑顔になれるお店になることを願っています。

人気スリランカ料理店が東京進出

同じく9月24日、 四ツ谷にスリランカ料理店「シナモンガーデン RICE&CURRY 四ツ谷店」がオープンしました。南林間の人気店が飲食街として有名なしんみち通りの2階に進出です。実はこの通り、ずいぶん前からエスニックのお店が多いのも特徴なので、ニーズは高そうです。

看板メニューという「スリーカレーのごほうびプレート」はチキンカレー、豆カレーと日替わりの3種で、この日はイカカレー。そして副菜として小エビ、ピクルス、さつまいも、青菜など6種がのります。少しずつ混ぜながら食べるのがおすすめということでしたが、確かにイカのカレーと小エビで魚介縛りにしたり、豆カレーとさつまいもを合わせてみたりと、楽しみながら食べ進められます。もちろん最後は全部混ぜで、食後感は抜群でした。

「スリーカレーのごほうびプレート」 撮影:大木淳夫

六本木であの美食家はカジュアルタイ料理店を、「茅乃舎」はおでん店を

美食家の“あの人”が編み出すタイ料理

10月5日、六本木にオープンしたタイ料理店「BIANCHI(ビアんち)」は、ほど近くにある高級イノヴェーティブレストラン「美会(ビア)」の姉妹店です。つまり店主は美食家として有名な“ビア”ことピーラゲート・チャロンパーニッチさん。愛嬌抜群で数々の有名店の店主と仲良し。それゆえか、お店に飾られた祝花は「The Tabelog Award」Gold受賞店がずらりと並び、壮観でした。

ビアさん曰く「コンセプトは日本の料理人が作るタイ中華」。タイ料理の素晴らしさを活かしながら、味のブレを無くし、素材や油の質を上げてクオリティを高めています。メニューは美味を知り尽くしたビアさんだけに、選ぶのが悩ましいほど魅力的。2次会、3次会でも使ってほしいからと、アラカルトで値段が抑えめなのもうれしいところです。ちなみに昼は「BIANCHI mini me」として、カオマンガイ、ガパオライス、グリーンカレーなどを提供しています。

「ビアんちのガイヤーン」
「ビアんちのガイヤーン」   写真:お店から

なぜ今までなかった? 「茅乃舎」のおでん屋

9月30日、六本木の東京ミッドタウンにはおでん専門店「茅乃舎 だしおでん 東京ミッドタウン店」がオープンしました。「茅乃舎だし」といえば、今に続く高級だしブームの火付け役で、特に2010年にミッドタウンに販売店がオープンしてからその名声が広がりました。こちらはその隣、以前「汁や」だった場所です。

夜にうかがいましたが、おでん種には福岡の会社だけに「ごぼう天」も。大根は、あのだしがたっぷり浸み込んでいて、おでん屋さんを出したのは正解だなあと。締めの「おでんだしのおいなり」や「おでんだしの〆蕎麦」もしみじみおいしい。これからの季節、需要が高まりそうです。お昼はおでんだしの牛丼やカレーライスも提供しています。

しあわせなあっこだよ
「おまかせ5種」   出典:しあわせなあっこだよさん

一人の時間を楽しめるカフェとイタリアンバル

もう一段上のコーヒー

10月13日、千駄ケ谷にオープンしたロースタリー&コーヒーショップ「uni sendagaya」は注目です。「uni」といえば表参道のGYREにあって、階段状に積まれた木のブロックが印象的なカフェですが、こちらはそのラボラトリー的な意味もあり、より深くコーヒーの魅力に浸りたい人向けのお店。

コロンビアの「ラスフローレス」という豆のコーヒー(1,500円)をいただきましたが、目を閉じて飲んでいたら、上質なハーブティーと間違えそうなほど、香り、酸味、甘みが素晴らしく驚きました。うかがうと、バリスタの世界大会レベルのクオリティとのこと。

「カフェラテ」も人気 写真:お店から

入口そばには、オランダ・ギーセン社製の焙煎機が鎮座。運が良ければ、2016年のジャパンハンドドリップチャンピオンの佐藤昂太ディレクターの焙煎を目の前で見られるかもしれません。アップルパイやホットサンドなどもありますが、実はオーナーは一つ星フレンチ「l'elan (レラン)」の信太竜馬シェフなので、こちらも高クオリティ。一人リラックスしたいときには最高のお店かもしれません。

激戦区・渋谷の新店バル

8月20日、渋谷の百軒店にはイタリアンバル「HUIT(ユイット)」がオープンしました。渋谷は20~30代向け居酒屋・バル形態の大激戦地だけに、よほどの特徴が無いと勝ち残りが難しいエリアですが、こちらの社長は近隣にある「権八 渋谷」の売り上げを大幅にアップさせた方とのことで、経験は十分。

料理はお酒を呼ぶ小皿料理が12種ほどと、メインに「宮崎の銘店直伝チキン南蛮」や「本日のジビエ」などが並び、イタリア直輸入の、日本ではここでしか飲めないワインがグラス1,000円以下から楽しめます。カウンター主体でスタッフもフレンドリーなので、一人での食事や2店目使いにも重宝できそうです。

kazumissimi
「宮崎の銘店直伝チキン南蛮」   出典:kazumissimiさん