【じっくり食べたいハンバーガー】第27回「BeBu」(ビブ)

先月は「丑」の話をしたので、今月こそ、今年の干支の「寅」の話をいたしましょう。トラと言えば虎ノ門。虎ノ門ヒルズ 森タワー1階の「ビブ」は、私の中でいま最も“トレンディ”なお店です。それにしても虎ノ門ヒルズも開業からもう8年ですよ! 森タワーが2014年6月の開業。2020年には「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」と地下鉄日比谷線の「虎ノ門ヒルズ駅」が相次ぎできて、再開発が今なお続くエリアです。

愛宕下通りに面したテラス席。上階の広場へ続く遊歩道は、春には桜が咲いてお花見もできるそう

“Beer & Burger”を略して「BeBu」。虎ノ門ヒルズ上層のラグジュアリー ライフスタイルホテル「アンダーズ 東京」直営のカフェ&バーです。虎ノ門ヒルズ開業とともにオープンしたので、今年の6月で8周年。ガラス張りの明るい店内は天井が高く、テラス席もあって、人と会ったり、パソコン仕事などをしたりするのにちょうどいい、居心地満点のスペースです。しかも、料理もサービスもホテルのクオリティ。でも、サービス料はかからないという、まるで天国のような店。

本来ならば、国内外のクラフトビールなども種々飲めるのですが、今はコロナの影響で数を絞って提供中。バーガーは現在9品。ポイントはその価格です。ホテル直営の店なのに町場のバーガー店と変わりない値段でハンバーガーが食べられます。でも、使っている食材はちょっと良いものだったり。そのお得感をまずは味わっていただければと思います。9品あるバーガーメニューより、「クラシック」から行ってみましょう。

その正体はベーコンチーズバーガーです。パティはオージービーフのもも肉130g。“thick flank”という、日本でいうところの「しんたま」の部分を使用。グリルは電気式のハースグリラーで。直火と同じように焼き目が付いて、プンと芳ばしいコゲの香りが立ち上ります。そこへチェダーチーズとスモークベーコン2枚。レタスはサニーレタス。オニオンは入らず。

「クラシック」1,210円。オーストラリア人の総料理長が直々に選んだという甘口のピクルスが大変美味!

ビブの2番目のポイント――それは食べ口の軽さです。バンズが軽くてドライなので、ズッシリ重く来ません。サンドイッチを食べているような感覚の、あっさりとした食味のバンズで挟んでいるのですが、でも、挟む中身はしっかりバーガー味。パティも適度な弾力と噛み応えがあります。重くならずにライトにハンバーガーを楽しめる――これはありそうでなかった方向性ですね。「こういうバーガーが欲しかった」という人はきっといると思います。

「トリュフフライポテト」605円

サイドディッシュは「トリュフフライポテト」がイチ押し。揚げたてのフライドポテトにトリュフソースがかかった一品ですが、これがおいしくないワケなし! トリュフソースは卵黄、白トリュフオイル、刻んだトリュフ、シェリービネガーなどで作ったビブオリジナル。仕上げに削ったパルミジャーノ・レッジャーノとイタリアンパセリを振って、まぁ~イイ味! トリュフ味のポテトが世間に出回るかなり前から、ビブではこのメニューを出していたように思います。

ランチの「バーガーセット」2,050円+「トリュフフライポテト」220円。バーガーはBBQかイタリアンバーガー“サルヴェ”より選択

そんなビブの最強コンビネーションはランチセットです。ランチの「バーガーセット」は、セットドリンクにミックスグリーンサラダ、バーガー1品、ソフトクリームサンデーが付いて税込2,050円。この内容で2,050円は安い! プラス220円でトリュフフライポテト、330円で食後のコーヒー・紅茶も頼めます。

この充実ぶり……これが私の思うハンバーガーの「トレンド」。ポイントは金額“以上”の満足感です。ランチの2,000円は安くはありませんが、でも払えば、お腹も心もきっちり満たしてくれるという。ビブではこの充実のランチセットを2014年以来ずっと出し続けてきました。

ランチセットは11時半から17時まで。さらに「アフターヌーンセット」として、お隣のペストリーショップで作った季節のミニエクレア3ピース+コーヒーor紅茶のセットが1,430円で14時から17時まで楽しめる

サラダもこの彩り。ドレッシングは白バルサミコとオリーブオイルを和えたもの。季節替わりのサンデーもナッツの香りがフッと鼻に抜けて、セットのデザートとして非の打ちどころがありません。ハンバーガーは、ライブレッドで挟んだ「イタリアンバーガー“サルヴェ”」か「BBQ」の2択です。今回頼んだ「BBQ」はシンプルでわかりやすいおいしさ。軽いバンズとしっかり噛み締めるパティの組み合わせにBBQソースがパンチを利かせて、軽いんだけど、でも、バーガーとして迫力がある、そんな「いいとこどり」なおいしさが楽しめます。

3月末まで販売のシーズナルバーガー「グーラッシュバーガー」1,500円。レタスはグリーンカール

さらにおすすめはシーズナルバーガー。隔月替わりのバーガーです。写真は2月・3月のシーズナル「グーラッシュバーガー」。グーラッシュとはハンガリーが起源の伝統料理。角切りの牛肉を使うところを、バーガー用に挽肉に置き換えて、パプリカパウダーとトマトで3時間ほどかけて煮込み、さらにサワークリームを加えて酸味を利かせています。これがまたライトでやわらか~なおいしさ。パプリカの香りも華やか。一見、ボリューミーでヘヴィなバーガーに思えますが、こんなバーガー“でさえ”、いい意味の「軽さ」があります。

「ハーブ&トリュフバーガー」1,485円。レタスはビッブレタス(サラダ菜の一種) 。ビブではバーガーにより全部で3種類のレタスを使い分けている

「ハーブ&トリュフバーガー」……これは変わっています。ふわっふわのオムレツの上にパリッパリのポテトチップスがのる珍品。ポテチは自家製。オムレツは口の中で溶けてなくなるふんわり加減。中にパルメザンチーズ、タイム、ローズマリー、トリュフオイルが入り、バンズの裏のトリュフマヨネーズと“ダブル”のトリュフで香りプンプン! ビーフパティはそれらをしっかり支える役どころ。レモンやライムなど柑橘系の飲み物と合わせると、キュッと締まって相性抜群!

「ベジタリアンポキボウル」1,045円

最後に隠れたおすすめメニューを。ポキボウルというと日本の「漬け丼」のようなハワイの料理ですが、これを植物性の食材だけで作った「ベジタリアンポキボウル」というメニューがあります。これが“ノーマーク”なおいしさ。 お米の代わりに野菜のだしで炊いたクスクスとキヌア。上にグリルした茄子、ズッキーニ、赤黄パプリカ。さらに枝豆、チェリートマト、イタリアンパセリ、ピーカンナッツほか、合わせて9種類の野菜・豆類・穀類が一度に摂取できます。ツン!と来る酸っぱい香りはヘーゼルナッツドレッシング。でも、味はマイルド。ボウル1杯食べると十分ボリュームがあって、けっこうな満足感・満腹感です。

重くならずに食べられる本格バーガー。しかも、町のバーガー屋と変わらぬ値段でホテルのクオリティ。ビブとはそんなお店です。時代の先取り感がありますね。いや、ようやく時代が追い着いて来た店とでも言いましょうか。ぜひ時間をたっぷりとって、充実のバーガーランチを優雅にお楽しみください。先月も同じことを書きましたが……やっぱり「食べログ ハンバーガー 百名店」は伊達じゃない!

※価格はすべて税込

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※本記事は取材日(2022年2月22日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・撮影:松原好秀

文:松原好秀、食べログマガジン編集部