【じっくり食べたいハンバーガー】第26回「ブラッカウズ」(BLACOWS)

2022年、年明け最初の記事は「干支にちなんだ店でも」と思ったのですが、そこでハッと気づいたことがあります……「そうだ、去年は丑(うし)年だった」と。まぁいろいろありましたので、あまり丑年を実感する余裕もなかったですよね。そこで今年最初は、寅年に「丑の話」をしようと思います。黒毛和牛の店「ブラッカウズ」について、改めてじっくりご紹介しましょう。

正面左はテイクアウトとデリバリーの専門店。「ミート矢澤」のステーキ弁当やブラッカウズのハンバーガーが注文できる

ブラッカウズは精肉卸「ヤザワミート」直営のハンバーガー店です。オープンは2009年。丑年ですね。黒毛和牛100%のハンバーガーが話題を呼び、店の前には連日の行列、一世を風靡しました。その頃の情報のままの人もいるかもしれませんが、その後、2019年にリニューアルして、現在は店の造りが一変しています。通りに面してハンバーガーと弁当のテイクアウト店ができ、その横の通路を入った奥にブラッカウズの店内があります。内装はグッと落ち着き、以前より大人な雰囲気になったというところでしょうか。

シンガポール、イタリアのミラノ、ビバリーヒルズ、ベトナムにも焼肉店を出店し、現在ヤザワミートは国内16店・海外6店を展開

「黒毛和牛の本当のおいしさを知ってほしい」と、2007年1月1日の創業以来、精肉卸のヤザワミートは直営のレストランを相次ぎオープンしてきました。その代表格が五反田のステーキとハンバーグの店「ミート矢澤」。目黒の「焼肉ホルモン 稲田」、ミシュラン一つ星8年連続獲得のしゃぶしゃぶとすき焼き店「今福」もヤザワミートのレストランです。同じ店を何店舗もではなく、黒毛和牛という食材は変えずに「料理」を変えていきました。そうした店のひとつがハンバーガーのブラッカウズ。2019年の改装に伴い、ハンバーガーにも変化が見られます。詳しくご紹介しましょう。

ブラッカウズの黒毛和牛パティ。サイズは150g。注文を受けてから平たく成形してグリルへ

見てください、このルビーレッドの球体を。これが焼く前のパティです。肉はもちろん黒毛和牛。ヤザワミートきっての“目利き”が全国から厳選したものを使用しています。軸となる部位はウデ、スネ、ネック。この3つ。よく動かす部位なので筋肉が発達しており、旨味がギュッと詰まっています。適した調理法はミンチ。煮込み。これらの赤身肉を中心に、サーロイン、イチボ、ランプ、フィレなどのサシの入った切り落とし肉を加え、風味や旨味をプラス。さらに塩コショウ、ナツメグ、牛乳・卵・小麦粉などのつなぎを少量加えたものを、ハンバーグと同じように手の平でパンパンと叩いて、平たくしてからグリルしています。

鉄板で表面を焼き固めて肉汁を閉じ込めた後、溶岩石のグリラーで十字の焦げ目を付けながらグリル。以前はスチームコンベクションオーブンを使っていた

グリルは2段階。250℃の高温に保った鉄板でまず両面を焼いた後、富士山の溶岩石を敷き詰めたハースグリラーの輻射熱を使って、じっくり焼き上げます。途中、火から離して休ませる過程も含めて8~9分は焼いているでしょうか。一番のポイントは芳ばしいコゲ味。しっかり焼き色を付けており、食事中、そのスモーキーな香りが終始「プン」と漂ってきます。これは以前のブラッカウズにはなかった点です。

割ってみると……外はダークなブラウン、中はきれいなローズピンクの焼き上がり。かぶりつくと、口当たりが実にソフトでなめらか。このなめらかさ……角(かど)のない「丸い挽肉の粒」をご想像ください。連載3回目でも紹介した、渋谷「FATBURGER」のパティと比べるとわかりやすいでしょう。ザラッとした挽肉と「つるん」と丸い挽肉のおいしさの違いです。表面のコゲの芳ばしさと中身のミディアムレアのやわらかさ。口溶けよく、喉越しもよくて、これはブラッカウズ独特のパティと言ってよいと思います。

「ハンバーガー」1,700円。サイドのフレンチフライはジャガイモとサツマイモのミックス。月替わりのバーガーも販売中

全部で10品のバーガーメニューがありますが、黒毛和牛の店なので、最初はぜひプレーンな「ハンバーガー」から食べることをおすすめします。生野菜は入りません。下にタルタルソース、上にBBQソース。それのみのバーガーです。バンズは「メゾンカイザー」作の特注品で、スッと口に入るやわらかさ。10種類の野菜の旨味を溶け込ませて作った自家製BBQソースがピリッとスパイシーな辛味を利かせています。

ブラッカウズはかつてこの野菜なしのスタイルで話題になりました。一方、トッピングメニューに「ベジタブルセット」という、トマト・レタス・オニオンソテーの3点セットがありまして、これを足すと、すべてのパーツが活性化されるというか、BBQソースの香りが立ち、タルタルソースも俄然活きて、味に広がりが出ます。野菜が入ると収まりがよくなりますね。ということで野菜「あり」もおすすめです。

「ブラッカウズバーガー」2,300円。オニオンは以前は生のスライスだったが、リニューアル後はソテーに変更。そのじっくり炒めた旨味も黒毛和牛のレアな味わいに一役

その野菜ありのバーガーにベーコンとチーズを足したのが「ブラッカウズバーガー」。リニューアル後に登場した新メニューです。ベーコンは千葉県産「なでしこポーク」を使用。ぷりんと弾力があって、パティのソフトな食感とよく合っています。白いチーズはホワイトチェダー。味のベースはBBQソースに入るトマトの深み。それらを貫いて感じられる黒毛和牛のコゲの風味が芳ばしくて、終始美味。

「テリヤキバーガー」2,100円+こだわり卵の目玉焼き100円。テリヤキソースにコゲの苦味が好相性。付け合わせはプラス300円でズッキーニのフリットに変更可

バーガー全10品の中で、ちょっと味の方向が違うのがこの「テリヤキバーガー」です。テリヤキソースはりんごに玉ねぎほか数種の野菜と2種類の醤油を合わせた自家製。スパイシーでピリッと刺激の強いBBQソースに対して、テリヤキソースは当たりが優しく、深みがあって、丸みを帯びた黒毛和牛独特の味わいがよく感じられます。トッピングの「こだわり卵の目玉焼き」はしっかり硬めの焼き加減。肉を感じたければ、意外とテリヤキがおすすめです。

「ナチョス 和牛チリミート」(Lサイズ)1,350円

スープやサラダなど、その他のメニューも和牛を使ったものがたくさん。中でも人気なのが「ナチョス 和牛チリミート」です。これが思いがけずも“攻める”味。チリミートはパティより粗めに挽いたものと細挽きにしたものとの2種類の挽肉で構成。しっかりした肉の粒感にピリ辛な味付けが施されています。酸味のあるトマトサルサにパリッと揚がったトルティーヤチップス。ハラペーニョに黒オリーブ。チーズはグリュイエール。冷めてもなお肉の味わいが鮮明で、モノの違いを感じさせる一品です。

リニューアル前より旨味も風味も一層アップした今年14年目のブラッカウズ。「昔よく行ったな」という人は、ぜひ久しぶりに訪ねてみてください。これだけハンバーガー店が増えた中、いま食べると、また新鮮なものが感じられると思います。他の店のバーガーとはまた違う、黒毛和牛の食味・旨味を存分に活かしたハンバーガー店。さすが「食べログ ハンバーガー 百名店」は伊達じゃない!

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2022年1月20日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・撮影:松原好秀

文:松原好秀、食べログマガジン編集部