個性がキラリと光る2つのパティスリー

2020年、彗星のごとくスイーツ界に現れ、一躍人気パティスリーとなった「Patisserie ease(パティスリー イーズ)」。そのパティシエである大山 恵介さんと、ベストショコラティエの受賞歴もある眞砂翔平さんがタッグを組んでチョコレート&アイスクリームショップ「teal(ティール)」をオープンした。日本橋兜町を一気にスイーツラバーの熱い視線を集める街に変えた2つのパティスリーに訪れてみた。

レトロなビルにオープンしたパティスリー

東京証券取引所の隣にあり、入居しているのはほとんどが証券関係の会社という中で異色の存在

カフェやビストロなど高感度なショップが次々とオープンし、“金融の街”からイメージチェンジしつつある日本橋兜町。

2021年11月にオープンした「teal」があるのは、渋沢栄一の邸宅跡地に建てられた由緒正しき建物「日証館」。石造りのアーチ窓が重厚な雰囲気を醸している。

2人の才気溢れる仕掛け人たち

仕掛けたのは「ease」のオーナーパティシエ、大山さん(写真上)と、元「パスカル・ル・ガック」のチーフパティシエの眞砂さん。

大山さんは、京橋「イデミスギノ」などで経験を積んだ後、渡仏。帰国後、福岡「リストランテASO天神」や、ミシュラン一つ星に輝く千駄ヶ谷「レストランシンシア」などの有名レストランでシェフパティシエを歴任した後、独立して「ease」を開いた。

眞砂さん(写真上)は「クリオロ」でスーシェフを務めた後、「パスカル・ル・ガック」の立ち上げに携わり、シェフパティシエとして活躍。2017年Top of Patissier in Asia ベストショコラティエ受賞など受賞歴多数の実力派パティシエだ。

昔からの知り合いだった2人。オリジナリティーのある素材の掛け合わせに定評がある大山さん、その大山さんがチョコレート技術に関しては一目置く眞砂さん。それぞれ強みが異なるパティシエがタッグを組んで「teal」が誕生した。

シルクのような食感にうっとり! 素材を生かしたジェラート

ケーキやジェラートの入った器が並ぶショーケースの奥にはイートインエリア。現在はジェラートのみ食べられる

チョコレートショップと言えば、まるでジュエリーショップのように重いガラスドアを開けて、うやうやしく入っていくイメージ。「teal」では、大人も子どもも大好きなチョコレートを使ったお菓子を気軽に味わってほしいと、ぶらりと訪れて気兼ねなくお菓子を楽しめる店を目指した。

焼き菓子は4種類、ケーキは4~5種類、ジェラートは4~10種類のフレーバーが常時用意されている

「teal」に並ぶのは、種類毎にチョコレートを使い分けているこだわりのスイーツと、シルクのような舌触りのジェラートやソルベ。いずれの商品もすべて二人のパティシエが納得して作り上げたものばかりだ。

ジェラート750円(ダブル、カップのみ)。「ビーントゥバーチョコレート」(プラス200円)、「まるごとみかん」(プラス200円)。種類はその日によって異なる

粒子が細かく、なめらかな口当たりのジェラートは、舌の上でスッと溶けていきながら、旬の素材それぞれが持つ香りや風味が際立つ。「洋梨&バジル」や「和栗&オレンジ」といったユニークな組み合わせは、「ease」のボーダレスな素材使いをジェラートで再現している。

「ビーントゥバーチョコ」と「まるごとみかん」のダブル(写真上)をチョイスしてみた。「ビーントゥバーチョコ」は、カカオ豆の選別から焙煎や精製に至るまで工程一つ一つにこだわって作ったチョコレートを使ったジェラート。底には砕いたブラウニーが入っている。

個性がしっかりあるタイプのカカオを焙煎浅めで香りを引き出し、カカオの香りや苦味、コクが味わえるジェラートに仕立てた。チョコレート好きならぜひ味わってみたい一品だ。

「まるごとみかん」は和歌山の紅みかんを使用。オレンジの色が濃く、糖度の高いミカンを皮ごとソルベにしている。まるでフレッシュフルーツを食べているかのようなみずみずしい甘さが、どこか懐かしい。ほろ苦いチョコレートのジェラートとの相性もぴったりだ。

普段使いのお菓子をパティシエが再構築

親しみやすい店にしたい。そんな思いを込めて、「teal」では焼き菓子を店の一番目に入る場所に置いている。ドーナッツやブラウニーなど「teal」に並ぶ焼き菓子は、一見、見慣れた表情を持つものばかり。けれど、一口食べると豊かで奥深いおいしさに驚かされる。

「ブラウニー」480円

例えば「ブラウニー」。ピーカンナッツなど複数のナッツをトッピングしたザクザクの生地の下には、焼き菓子とは思えないほどしっとりとした食感の生地が。このねっとりに近い軟らかさはバナナを生地に練り込んでいるため。まるで濃厚なチョコレートケーキのように口の中で溶けていくのがたまらない。

チョコ好き必食! カカオ尽くしのケーキ

「カカオ」980円

チョコレートを使った生ケーキも開店以来の人気。「カカオ」はカカオ豆が入った果実、カカオポッドの形をしたケーキ。

コーティングされたチョコレートの下には、バニラクリームやチョコレートクリーム、ムースなどが層になっている。バニラクリームにはカカオハスクというカカオ豆の皮を煮出して香り付けをするなど、まさにカカオ尽くしのケーキ。重くなりすぎないように、ティムットペッパーというグレープフルーツに似た香りのスパイスをしのばせるなど、香りや味わいのバランスが絶妙。大人のためのチョコレートケーキだ。

「teal」とは鴨の意味。その昔、水運で栄えた日本橋にちなみ、エジプトでは「知恵」と「財産」を意味することから日本橋兜町にふさわしいシンボルとして選んだのだとか。

鴨の羽の色、青緑色を店のテーマカラーとし、店のあちこちにかわいらしい鴨のアイコンが使われている。鴨の親子に誘われるように、もう一軒のパティスリー「ease」へと足を運んでみた。